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プロローグ

 ただ魔王を子分してやったぜ! どうだこの野郎!! と言ってやりたかっただけなんだが、なんだかとんでもない展開になってしまった。

 王城から依頼をされて、バッカスは行方不明になり、手がかりのひとつである洞窟に行ったら、闇の力を手に入れた鬼人族が待ち受けていたり……なんだかんだあったけど、バッカスは取り戻すことができた。そして、王都へ帰ってきてから早くも三日が経ち、ようやくバッカスが目覚めたと報告があった。


「なので、俺は見舞いには行かないことにした」

「ど、どうしてですか?」


 可愛い子分(魔王)が俺に問いかけてくるので、俺はそうだなぁっと腕組みをして答える。


「俺は、あいつにドヤ顔で自慢してやりたかっただけだ。それが終わったらあんな奴とは二度と会わないって決めててんだよ。どうせ俺は、追放された身だからな」

「でしたら、その自慢をしに行くついでにお見舞いに行ったほうが」

「俺は想像した。絶対俺があいつのところに顔を出したら、開口一番にこう言うに違いない」


 いったいどんなことを言うのだろう? と真剣な瞳で見詰めるクルルベルに俺は若干の声真似を入れて叫んだ。


「よう! 別に、お前の助けなんていらなかったぜ? とな」

「な、なるほど」

「そして、こう続けるはずだ。俺は捕まったんじゃない。捕まってやったんだよ。そんで、あいつらのアジトに到着した瞬間、封印を中から打ち破って、敵を全て撃退しようという作戦だったんだ!! とかさ」

「さすがに、そんなことは……」


 いや、あいつだったら絶対に言う。追放した自分よりも弱い奴に助けられたなんて、奴が簡単に認めるはずがない。絶対、笑いながら言うに違いない。


「それにな。あいつは、強い奴だ。馬鹿だが、勇者である自覚はちゃんと持ってるからな。多分、自分を騙して悪事を働こうとしていた奴に、リベンジしてやろうって燃えてるだろうさ、今頃は」

「……ふふ」

「なんだ?」


 突然、意味深な笑みを浮かべるクルルベルに、俺は首を傾げる。


「兄貴って、なんだかんだ言って、バッカスさんのことを信頼してるんですね」

「信頼ねぇ……俺は、ただ知ってるだけだよ。あいつと一番付き合い長いのは、俺だからな」

「え? そうだったんですか?」


 そうだ。あのメンバーの中では、俺が一番付き合いが長い。その後に、エルカやリーミアが入ってきて、賑やかになって……最終的には、俺は追放されるってな。

 思い出しただけでも、げっそりする。

 当時から、バッカスは自由気まま、俺の言うことなんてほとんど聞かない。


「自分で言うと自慢になるけど、俺はこの王都でもっとも有名な冒険者なんだ。そこで、戦い方をあまり知らない勇者の護衛兼、指導係として選ばれたんだよ」

「す、すごいです! さすが兄貴!」


 あぁ、その純粋で無垢なきらきら眼。

 もっと褒めて欲しくなる。


「ふふん。褒められると、嬉しいものだな。もっと褒めてくれ!」

「世界一!!」

「はっはっはっは!! 子分に褒められてテンションが上がったところで、俺の家に行くぞ!!」

「は、はい! 緊張します……兄貴のお母様。どんな方なんでしょうか? 後で、エルカさんとリーミアさんも来るんですよね?」

「そうだ。ちなみに、俺は家にここ数週間帰ってない」

「ええ!? じゃあ、お母様は」

「ずっと放置だ」


 なので、家に帰ったらすごいことになりそうだ。そもそも俺が冒険者になってからは、家を出て宿暮らしをしていたからな。いつまでも、母に甘えていて成長できないって思っていたからな。

 いや……甘えていたのは、あっちかもな、くっくっく。


「そ、それじゃあ早く行ってあげないと!」

「その通りだ。さあ! いくぜぇ!!」

「はい!!」


 今から、クルルベル達の驚いた顔を想像するだけで、自然とにやてしまう。だが、ここはぐっと堪えないとな。

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