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これでやっと

「な、なんだそれは?」

「一言で言えば、神が与えし鎧だ」

「神、だと? き、貴様ごとき下等な人間風情が、神にでもなったつもりか!?」

「別にそんなつもりはないんだけどなぁ」


 俺が纏ったのは、頭の天辺から足のつま先まで、体の全てを覆う白銀の鎧。そして、両肩には細長い筒が装着されている。

 これは、チュルメが創りし鎧が一つ。まだまだ色んな種類があるが、今回はエルカの《エクスプロージョン波》に触発されて、この鎧にしてみた。


「あ、あれ? あの時の鎧と違う」

「確かに。魔王城に突撃してきた時は、黒い鎧であんな筒などありませんでしたね」

「色んな鎧を持ってるんだよ! 俺には、鍛冶の神がついてるからな!!」


 ものすごく抱き心地がよく、話していて元気になる小さな神様がな。そんなよき神様が創ったこの鎧で、神になろうとしている愚かな鬼人を、退治してやろうじゃないか。

 

「さあ、時間なんてかけない!! 一気に決めるぜ!!」

「はっはっはっは!! それはこっちの台詞だ! 受けるがいい、私の全力ぜ」

「《エクスプロージョン・ブラスター》!!!」

「またかああああああっ!?」


 そりゃあそうだ。学習しろよ、鬼人族さん。まだ台詞の途中で、俺は容赦のない砲撃を放つ。肩に装着されていた二つの筒が、背面から相手に向けるように動き、エネルギーチャージを一瞬のうちに終わらせたのだ。

 まあ、背面にあるうちからチャージしてたからなんだけどな。

 これには、相手も全然気づかなかったようだ。俺の仲間は、見えていたようだから、これから怒る事を想像していて、苦笑していただろう。


「ふいぃ……やっぱり気持ちいいなぁ、この攻撃」

「ところでさ。ソードマスターが、魔法……魔砲? を放つってどうなのかしら」


 ごもっともなことを言い出す後輩に、俺は筒を背面に戻してから先輩らしく言い放つ!


「後輩よ! いいアドバイスをしてやろう!!」

「なんでしょーかー」

「この世界では、常識に囚われるな!!! 常識なぞ、その辺に投げ捨てておけ!!」

「さ、さすが兄貴! 深い言葉ですね!」

「魔王様。さすがに、ある程度の常識は持っておいたほうがよろしいかと思うのですが」


 うむ、その通りではあるなシルムよ。とはいえ、この世界において、たかが常識。常識に囚われていては、この世界で生きるなど難しいだろう。つまり、ある程度の常識を持ちつつも、常識に囚われない思考を持ち合わせろってことだ。

 言うだけは簡単だが、それを実行するのは難しいだろうけど。


「……あれ? ゼルドは?」


 なんだかんだと話していたが、バッカスの行方を知っているゼルドの姿がなかった。もしかして、やりすぎて消し炭になったか? いや、そんなはずはない。鬼人族の防御力を考えれば、あの砲撃も耐えれるはずだが。


「……吹き飛ばしちゃったみたいだ。やっちゃったぜ!」

「もう! キリバってば、やりすぎだよー」

「いやー、すまんすまん」

「なんで、こんなに軽いノリなんでしょうか? 勇者さんの行方がわからなくなったのに」

「それほど、勇者に対しての扱いがひどいってことでしょう。ある意味、会いたくなりましたよ。その勇者とやらに」


 笑っているが、これからどうしよう……俺達は依頼をされてあいつを探している。せっかくの手がかりがなくなってしまった。これじゃあ、また一からやり直し、ん?


「あっ! 見てください! あそこに何か落ちてます!」


 と、リーミアがゼルドが居た場所へと駆けていく。そして、戻ってきたリーミアが手に持っていたものは、地図だった。


「これは、この辺りの地図」

「赤いしるしがありますよ、兄貴」


 落ちていた地図には何かの目印かのように赤い丸が描かれていた。これは、おそらくゼルドが持っていたものだろう。だとしたら、このしるしがある場所は、こいつが行く予定だった場所?


「ふむ、このしるしのところに何かがあるってことかしら」

「もしかして、ここにバッカスさんが連れて行かれたってことでしょうか?」

「そうかもしれないな。あいつもいなくなっちゃって、手がかりがなくなったことだし。こいつに今は頼るしかないみたいだな」

「そうと決まれば、こんな洞窟早く抜けるぞ。いつまでも魔王様にまずい空気を吸わせるわけにはいかない!」


 こいつはぶれないなぁ。ともあれ、一旦洞窟を出て、このことを王城へ知らせなくちゃな。



・・・・



 その後、森を出るついでに印のところへ行ったら、結界があったので、それを俺がぶち壊したところ、クリスタルのようなものが隠されていた。エルカが言うには、何かを封印している魔法石らしい。つまり、そのクリスタルにバッカスが封じられている可能性が高い。だが、なんであんな場所に? もしかしたら、違う可能性もあるので、王城へはバッカスが何者かに狙われていることだけを伝えた。

 ちなみに、連絡は通信魔法を使っている。

 通信魔法はかなり難しい魔法なので、使える者が少なく、使う場所とかも大気にあるマナの状態も知らないと中々相手に通じない。そんな通信魔法をリーミアが使えるのだ。


「はい……はい……わかりました。では、キリバさん達にもそう伝えておきます。はい、それではまた何かありましたら、ご連絡します」


 通信を終えたリーミアは、ふうっと一呼吸して、俺達に王城からの言葉を伝えてくれた。王城から命は、そのクリスタルの封印を解いた後にまた連絡をしてくれとのことだ。


「さて、とりあえずはこれの封印を解くか」

「まるで、囚われのヒロインみたいだね、バッカス」


 あいつがヒロインってなんだかやだなぁ。とはいえ、あいつはこの世界にとっての影響力は本物なんだ。どうにかして、連れ戻さないと世界が心配する。

 ……心配するかな? まあ、あいつが馬鹿だってことは、世界中には知られてないから、心配はされてるはず。


「エルカ、それにリーミア頼めるか?」

「うん、任せておいて。じゃあ、始めようかリーミア」

「はい」

「あ、あの!」

「ん? どうしたの、クルルベル」


 さっそく封印を解こうとクリスタルを地面に置いたところで、クルルベルが声を上げる。


「ちょっと待って欲しいんです。なんだか、そのクリスタルから嫌な力を感じるんです。その、気のせいかもしれませんが。魔界で感じた事のある力を」


 ふむ……確かに、クリスタルの中で、渦巻いてる力は中々の邪気だ。よく確認してなかったからわからなかったけど。そう考えると、この中にバッカスが封印されているとは思えないな。

 もしかしたら、あの闇の宝玉とか言う奴と同じ力なのかもな。


「だったら、こうするか」

「どうするつもりですか?」


 この中にあるのが、闇の力なら、その逆で打ち消せばいいだけの話。俺は、クリスタルに手をかざし、光のエネルギーを注ぎ込む。

 すると、次第にクリスタルの中で渦巻いていた邪悪な力が消えていく。


「おー」

「キリバさん、その力は……」

「後で話すよ。それよりも見ろ、クリスタルの中が見えてきたぞ」


 クリスタルの中には、小さな人が眠っていた。その小さな人に、俺達は当然見覚えがあった。クルルベルとシルム以外は、一斉にため息を漏らしつつも苦笑する。


「どうやら、これで、依頼は達成したみたいだな」

「そうだね。じゃあ、さっそく封印を解くよ。リーミア!」

「はい!」


 魔力を一斉に注ぎ込み、呪文を唱えると、クリスタルにひびが入り、砕け散る。そして、光が溢れ出し、小さな人が巨大化した。

 そんで、中からできたのは俺達が探していた勇者バッカスだった。封印が解けても、目覚めることは無い。どうにもぐっすりと眠っているようだ。


「おーい、馬鹿勇者ー……起きないわね」

「随分と邪気を取り込んでいたからな。取り払ったとはいえ、しばらくは目覚めないはずだ」

「もしかして、邪気を取り込ませて、闇の勇者! にさせようとしてたのかな?」

「そうかもしれませんね。勇者であるバッカスさんに、街などを襲わせるつもりだったんでしょうか?」


 可能性としては大いにあるだろうな。こいつの力は本物だ。敵う奴はほとんどいないだろう。それに加えて、闇の力で更にパワーアップ。残忍さを加えて、非道な限りを尽くす……まったく、厄介なことを考える奴が居たものだ。

 

「お」

「バッカスさん?」


 まさか、目覚めるのか? と、皆が見詰める中、バッカスが発した言葉は。


「おっぱい……が、あぁ……」

「……よし、帰るか」

「はーい」

「ねえ? こいつ、蹴ってもいい?」

「一発だけならいいんじゃね?」

「さすがに、それは可哀想な気が……」


 こいつめ……人の苦労も知らずに。目覚めたら、どうしてくれようか。

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