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第二十五話 対中国過激派組織「白虎隊」②



地下駐車場に入った軍用車列は、コンクリートの柱と壊れた壁の陰を縫うように進んだ。

少し進んだところで、2台の車両が柱の陰に停車する。天井の蛍光灯は半分が切れ、薄暗い空間に埃が舞っていた。


背後を追ってきたドローンは、GPS信号を頼りに進入してきたが、柱の影にスタンバイしていたイシカワたちの狙撃により、あっけなく撃墜される。赤いランプが点滅したまま、コンクリートに叩きつけられた。


「やれやれ、これで少しは落ち着くか」

ナカムラは軽く肩をすくめ、荷台の隊員たちに指示を出す。


隊員たちは手早く奪った物資を事前に用意していた別の車両に積み直す。弾薬箱、食料、通信機器――短時間で必要なものを確保する。


その中で、圧倒的な存在感を放ちながら黙々と作業しているのが、元極道のイノウエだった。

長身でがっしりとした体躯を揺らしながら、物資を軽々と持ち上げ、積み込み作業をてきぱきと進めていく。

鋭い眼光と無骨な雰囲気で一見恐ろしい男だが、仲間を気遣う細やかさが滲んでいた。


「アイカちゃん、大丈夫か?荷物、重くないか?」

イノウエは小柄なアイカにそっと声を掛ける。見た目に反して声色は柔らかく、自然と安心感を伴う。


「はい、イノウエさん……大丈夫です…」

アイカは少し震えた声で応じる。元看護師で普段は臆病な性格だが、戦闘経験はある。

目の前のイノウエが怖いのは確かだが――仲間思いで優しいことも分かっている。


「よし、無理するなよ」

イノウエは黙々と作業しながらも、アイカに気遣いの視線を投げた。


「落ち着け。焦る必要はない」

サカイが静かに声をかける。元公安で、頭脳派かつ戦闘力も高い万能な男。いかなる場面でも指示を的確に出し、状況を瞬時に整理する。



「よし、これで全部だな」

イノウエが最後の弾薬箱を車両に積み込み、背中を大きく伸ばす。

アイカは少し安堵したように息をつき、手元の荷物を確認した。


「準備完了。行くぞ」

イシカワが合図すると、車列は地下駐車場の出口へ向けて静かに動き出す。



地下駐車場を出た車列は佐世保市街を抜け、やがて舗装路へと戻ると、事前に確保していた仮拠点が視界に入る。

烏帽子岳付近の小さな倉庫の一角――外見は目立たない廃屋だが、中は物資や車両を収容できる最低限の設備が整えられている。


車両を倉庫内に滑り込ませると、隊員たちは素早く分担して動き出す。

弾薬箱や医療キットを降ろす者、燃料をチェックする者、破損した装備を整える者――それぞれが手慣れた動きで整理を始めた。


「……ふう、ようやく一息つけるな」

重い荷を下ろしたイシカワが、額の汗をぬぐいながら小さく息を吐く。


「まだ気は抜けん。ドローンの増援が来ていないうちに、次の動きを固める」

ナカムラは冷静に言いながらも、その表情はわずかに緩んでいた。


荷物整理を終え、数人が腰を下ろすと、張り詰めていた緊張がようやく解けていく。

戦場の只中で得られる、束の間の安堵だった。


「なあ、腹減らねえか?」

背を壁に預けた隊員が、唸るように言った。


「どうせまた缶詰だろ」

誰かが笑うと、別の隊員が持ち上げた缶を振ってみせた。


「今日のはシチュー味だ。贅沢だろ?」


「ははっ、贅沢って言葉の基準、だいぶ落ちたな」

ナカムラが肩を揺らし、笑い声が広がる。


束の間の静けさに、重苦しい夜が少しだけ和らいだ。


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