魔法部の活動
「ふぅ、いやぁ……やっぱりこの状態が一番楽ですね! 自然体が一番!」
「今サキュバスの能力全否定したな」
サキュバスの変身能力やら夢の中で怪しげなことをしてるんじゃないかとか、その一幕を終えて。
大人バージョンのえろえろボディから元のロリボディに戻ったルーアは、ふっと一息ついてお茶を飲んでいる。ちなみにこのお茶、達志に出してくれたもののはずなのだが、そこは突っ込むことはなかった。
ちなみに現在は、ロリルーアのサイズに合ったワンピースを着ている。先程も大人バージョン用のワンピースを着ていたし、ワンピース好きなのだろうか。
だが今着ているのは黒一色であり、残念ながらセンスの欠片もない。
「んっ……ぷはぁ。いやぁ、誰かが家に来るなんて久しぶりですから、ついつい気合いはしゃいじゃないましたよ」
ごくごくごくごく……とそんなにコップに入っていだろうかと思える勢いでお茶を飲み干したルーアは、満足そうな表情だ。
それはそうかもしれない……一人で暮らしているのなら、寂しくないはずがない。ルーアの年頃なら特に。
隠すつもりはなくても、今回みたいに誰かを家に呼び込むことも、普通に考えればないだろうし。
「しかし……一人暮らしなんて、大変なんじゃないか? 親もその……だから、お金とか、さ」
高校生の一人暮らし……それだけならよくありそうだが、ルーアの場合は特殊だ。両親がいない彼女が一人暮らしを続けるというのは、大変、どころの騒ぎではない。
両親がいないとストレートに言うのは、やはり気が引けた。だがルーアは気にした様子はなく、なぜか少し誇らしげだ。
「えぇまあ。でも、こうして一人暮らしを続けられている……どうですか、すごいでしょう」
えっへん、とない胸を張るルーアの様子に、達志は暫しの間呆然とする。両親がいないことを気にした達志の気を楽にしようとしたのか、それともただ私すげえを自慢したかったのか。
おそらく両方だろうな、と思う。それに達志の心配に対しても……
「お金なら心配いりませんよ。アルバイトしてるので」
大変ではあるが、とりあえずお金の心配はないとの返答。とはいえ、果たしてアルバイトで賄えるほどなのだろうかと疑問だが……もしや、と達志の頭に嫌な想像が浮かんでくる。
「アルバイト、って……まさかお前、夜のバイトとかしてるんじゃないだろうな?」
一人暮らしの資金をアルバイトのみで賄うなんて、そんなこと普通じゃありえない。しかもルーアは学生、学費だってあるだろう。
ということは、法外な金額を貰うようなバイト……夜のバイトでもしてるんじゃないかという結論に至るのは仕方ないだろう。加えてルーアはサキュバスだ。
普段のロリボディもウケる人にはウケるだろうが、先程の大人バージョンであれば相応の待遇があるだろう。
だからルーアのアルバイトというのは、夜の店でいかがわしいことを……
「違いますよ!? タツが想像してるようなことはこれっぽっちもしてないですからね!」
当のルーアは必死に否定しているが、それが本当か怪しいものだ。普通のアルバイトで一人暮らしの金額&学費を稼げるわけがない。そもそも……
「お前……部活……魔法部、だっけ。まさかそれと両立してんのか?」
ただでさえ学生、アルバイトの時間は限られる。だが確かルーアは、部活に入っていたはずだ。これでは、少ないバイト時間はさらに少なくなってしまうのではないか。
部活なんてせいぜいが二、三時間だろうが、それでも学生にとって、特にルーアにとっては貴重すぎる時間だ。いったいどうやって両立して……
「いえ、というよりは、部活動としてアルバイトをしているというか」
「!?」
そんな達志の疑問は、ルーアの一言により吹き飛ばされた。よく意味がわからないが……今、部活動でアルバイトをしている、といったのだろうか。それはいったい?
困惑する達志に、ルーアはハッとした顔をする。どうやら気がついたようだ。
「そうでした、タツは部活内容を知らないんでしたね」
「とにかく魔法をバンバン使ってあれこれして成長させようという素晴らしい部活なんじゃないの?」
そう、部活の内容だ。確かそれは、以前ルーアがこう話していたはずだ。だがルーアは、首を横に振る。
「えぇ、確かにそう言いました。ただ……本来の活動内容は違います」
「本来?」
首を横に振ったとはいえ、違うわけではない。実際に話したものは、本来の部活内容ではない……どうやらそういうことらしい。
そのせいで意味がますますわからなくなるが、ここでルーアが咳ばらいを一つ。その場から立ち上がり物置をガサゴソと探ると、何やら紙の束を持って来る、
「まずは、これを見てください」
そう言って机の上に置かれたのは、新聞紙だ。ページをめくり、その中の一ページで手を止める。そしてそのページの中にある、とある記事。
それを指差されて、困惑しながらも達志はその記事に目を通していく。
「何々……昨日、民家に魔物が出現した。しかし○○高校魔法部の手によって魔物は駆除され、事なきを得た……うん? ○○高校って、ウチのことだよな?」
記事の内容を読み、その中に見過ごせない項目があったので思わず二度見してしまう。そこに書かれてあった高校の名前は、確かに達志が通っている高校の名前だ。さらに、そこには魔法部と書いてある。
これはつまり……この記事に書かれているのは、ルーア達ということになる。同名高校の同名部活という可能性もあるが、それならばルーアはこんなにどや顔になるのはおかしい。
つまり、これはルーア達魔法部のことで間違いはないということだ。
「そう、これが我が魔法部の部活動! ただ魔法を撃ちまくって成長させるというのは仮の姿……その実態は『魔法を使ったボランティア活動』とでもいいましょうか!」
拳を握りしめ、天に掲げるルーアは妙なポーズをとっている。本人は決まった……という顔をしているが、あえて何も言うまい。
それは置いといて、ルーア達の活動は……新聞に掲載されるほど、世間浸透しているということに驚きだ。それにルーアの言葉通りなら、彼女らは魔物退治だけではなく、いろいろなことをやっているのだろう。
しかしその部活内容なら『ボランティア部』でいいんじゃないかとも思ったが……部外者である達志が今それを指摘しても意味のないことなのでやめた。
……ただ一つ。この部活内容を聞いてもわからわからないことがある。それは……
「なるほどな、魔法部の活動はわかった。けど、これとアルバイト……どう関係するんだ?」
部活動としてアルバイトをしている……この台詞と、今明かされた魔法部の部活内容が繋がらない。結局のところその部分が明かされておらず、さらなる説明を達志は求む。
そんな達志を、まるで物分かりが悪い子供を見るような視線をルーアは向けて……
「ですから、言葉通りですよ。魔法部の活動……ボランティア行為の対価として、報酬を貰っているんです」
こう、答えた。
「……ボランティア精神は!?」
その答えに衝撃を受けた達志の叫びが、部屋に響き渡った。




