あくまでボランティア的な人助け
ルーアにとってのサキュバスらしさ……それがえっちな夢を見せることというのはもちろん個人の考えそれぞれであり、正解も不正解もないのだろう。
実際に想像する、達志の思うサキュバスともそう違わないように思える。思えるのだが……
「まさかその、夢を見せる相手にクラスメートがカウントされてたとは」
その相手の中にクラスメートが含まれているのは予想外だった。いったいどんな夢を見せているのか知らないし知りたくもないが。
「だ、ダメですかね!?」
「それを俺に聞いちゃうの? ……いや別に、ダメとは言わんが……って言っていいのかも複雑だけど。クラスメート相手とは、これまた大胆なことを」
顔を赤くしている辺り、本人にも恥ずかしいという自覚はあるのだろうか。それとも単に、夢を見せている相手を当てられたことが恥ずかしいだけなのだろうか。
それがダメかどうかは達志に判断できるところではないが、聞かれても困る。
「え、えっちって言っても、そんなにいかがわしいものじゃないですよ! 夢を見せるその人が好きな人を夢の中で具現化してそこから、好きな人と夢の中でいい思いをさせてやろうという」
「充分いかがわしく聞こえるんだけど! ってか教えてくれなくていいから!」
「そう、私は夢の中で、好きな人といい思いをさせてるだけなのです! まさに、いい夢見ろよ、と! 人助けですよ人助け! ザ、ボランティア!」
「だから言わなくていいっつってんだろ! 何で妙にボランティアの発音いいんだよ! あとそのどや顔やめろ!」
今までのルーアの人物像が、根本から崩れていくような気がする。何も知らなさそうな純朴ロリだと思っていたのにその実、
もしかしたら同年代の中で一番いろいろ進んでいるのかもしれない。
別にそれが悪いこととは言わないが。
「というか、今の口振りだと、サキュバスって相手の好きな人もわかるんだ?」
「はい、夢の中さえ覗ければ! どれだけ隠してても、心の奥底までは隠し切れませんからね!」
これは怖いことを聞いてしまった。ルーアの前には、好きな人の隠し事も無意味らしい。ルーア、というよりサキュバス恐るべし。
「……うぬ?」
……と、ここでルーアは重大なことに気づいてしまう。自分で喋っていて、その言葉の中で気づいてしまったことがある。
この力を使えば……目の前にいる達志の好きな相手もわかるんじゃないだろうか。同じクラスメートであるリミは、直接聞いてはいないがおそらく達志のことを好いている、んじゃないだろうか。
それに、他にも気になる相手はいる。数日の付き合いであるが、達志を取り巻く女性環境には目を見張るものがある。
なので……人助け精神として、何かしら手がかりを握っていてもいいんじゃないだろうか。そう、これはクラスメートのため。断じて自分の興味的欲求を満たすためではない。
「ふ、ふふ……ぐふふふ……」
「笑い方キモいんだけど」
急に笑い出したルーアに、こいつ何か企んでいるな……と達志は直感する。それが何かはわからないが、どうせろくなことではないのだろう。
それを指摘されて、ごまかすようにルーアは軽く咳ばらい。
「ま、まああれですよ! 好きな人と、その人が望んでいることを夢の中で叶えさせてあげる……これって、とても素敵なことだと思いませんか?」
「いいこと言ってるみたいだけど、さっきえっちな夢とか言ってた口でそんなこと言っても説得力ねえよ。目ぇキラキラさせてもダメだからな」
ごまかしの台詞がぺらぺら口から出ているようだが、そんなもので達志はごまかされはしない。むしろ、まるで何かをごまかすような仕草に疑いが深くなるばかりだ。
「お前、妙なこと考えてない?」
「……ソ、ソンナコトナイデスヨ?」
……わかりやすすぎる。とはいえ、ここで問いただすようなことはしなくてもいいだろう。どうせ大したことではないんだろうし。
それはそれとして、今のルーアを見ていて他にも気になることはある。ルーアは、達志にロリだのロリだのからかわれているが、もしそれが嫌なのであれば……
「ところでルーアってロリなの気にしてんじゃん? そんなにロリ体型を気にしてるなら、ずっとその姿でいればいいのに」
そう、ずっとこの姿を保てばいいのではないだろうか。さすがにこの大人バージョンは刺激が強すぎるが、高校生の平均体型にくらいなら楽に変身できるだろう。
だが……
「……この姿……というか変体状態を維持するのは、体力を必要とするんですよ。意外ときついんですよ、今の姿」
若干プルプルと震えるルーアは、達志の提案は無理だと答える。
サキュバスの変身は体力が必要で、長時間は無理……それは同時に、いつも見ているロリルーアはサキュバスの能力を使っていない、正真正銘本来の姿ということになる。
それを聞いて、今まで接していたのはかりそめの姿ではなかったことに、どこかほっとした様子の達志であった。




