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【リメイク連載中】目が覚めたら世界が異世界っぽくなっていた件  作者: 白い彗星
異世界召喚かとテンションが上がった時期が俺にもありました
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妙なプライドのおかげで自覚した体の衰え



 マルちゃん……マルクスに連れられコート内に入る達志とリミ。だがコート内に入れてくれたとはいえ、そんなすぐにポイポイ打たせてくれるわけではないだろう。


 証拠に、達志は手ぶらだ。



「それで、元々テニス部所属だったようだが?」


「あぁ。言っちゃなんだが、それなりにうまい方だったぜ」


「ふん……十年前は、だろ」



 いきなり刺々しい言葉に、達志の頬もひきつってしまう。とはいえ、間違ってはいないだろう。


 あの頃はどうあれ、確かに今となってはスポーツどころか少し走っただけで息切れを起こす始末。いきなりテニスなんかできるはずもない。元テニス部の達志にはよくわかっている。


 ……わかっている、はずなのに。



「ま、まあ? 確かに俺は弱くなったかもしれないけど……だからマルちゃん以下ってのはないんじゃないか?」


「……ほう?」



 顔が引きつる。なぜこんな強がりをしてしまうのか?だって男の子だもの。リミが見てるんだもの。かっこつけたいんだもの。


 これが強がりなのは、達志本人だけではなくマルクスだって見抜いているはずだ。……だがマルクスは小さく呟くだけで、それっきり黙り込んでしまう。


 そして、その場から移動すると……別の部員からラケットを借り、それを達志に渡す。



「……なにこれ」


「決まってるだろう? 試合だよ……そこまで自信があるなら、証明してみてくれよ」



 とんでもないことを言い始めた。まさかの展開に冷や汗が流れる。こいつ正気か?という思いでいっぱいだ。強がった上で挑発した達志も達志だが。


 ここで試合を受ければ、間違いなく達志はボロカスにやられるだろう。マルクスの実力は不明だが、部の副部長なんて立場だ。


 体力面という点から素人相手でも負けそうなのに、勝負になりそうもない。そんなことマルクスもわかっているだろう。


 まさかこいつ、達志に恥をかかせるつもりか?ここにはリミがいる。リミの前で達志のかっこ悪いところを晒してしまおうという腹積もりだろうか。そうに違いない。



「お前……性格悪いな。ガキかよ」


「なんのことだか。それにその台詞、そっくりそのまま返してやるよ」



 むぅう……と達志は苦い顔だ。そもそも達志が変な意地で強がったのが始まりだ。そこを責められるとぐうの音もでない。


 とはいえマルクスもマルクスだ。言ってしまえば、二人ともガキなのだ。



「いいぜ、受けて立ってやる。覚悟しな」



 内心、冷や汗が止まらない。だがそれを表に出さないようにあえて不敵な笑みを浮かべてやる。声が震えてないだろうか、びびってるのバレてないだろうか。


 ラケットを受け取り、握った感触を確かめる。懐かしい、感じがする。現実では十年の時が経っているが、達志の感覚ではテニス部に所属していたのはほんの数日前だというのに。



「ほう、サウスポーか」


「あぁ、そうだ」



 互いにコート上の定位置に立ち、構える。左手にラケットを構える達志を見て、サウスポーの……左打ちであることを確認する。


 だが、この部には他にもサウスポーならいる。珍しくもなんともない。


 いつの間にか、達志とマルクスの試合を見ようと見学者が集まってきている。練習を中断して見学する者、休憩がてら見学する者、様々だ。



「……誰も止めねえのかよ」



 見学者が多くなるばかりで、誰も止めに入ってくれないことに達志苦笑い。ここで誰かが止めに入ってくれれば、なし崩し的にやめることができるのに。


 元テニス部とはいえ、体験入部で副部長と勝負とかどんな無茶ぶりだ。その上体力は以前とは比べ物にならないほど低下している。


 ……まあ、挑発したのは自分からだが。


 そもそも、体力面が以前のままだったとしても、勝てるかどうか。確かにテニスはうまい方ではあったが……それでも、一部員に過ぎなかったのだから。



「おーいマル副部長、ちゃんと手加減してやれよー! いや、マルちゃん副部長の方がいいか!?」


「誰がマルちゃんだ! ってなんで広まってるんだ!」



 ……クラスや部長以外からでもいじられる男、マルクス。



「ごめーん! かわいかったからつい!」


「あんたのせいか部長!」



 向こうは余裕にさえ見える。それはそうだろう、マルクスにとって今の達志など相手にもなるまい。そんなこと、達志自身が一番よくわかっている。



「ホント、なんであんな挑発しちまったんだか……」



 自分で自分に呆れてしまう。このバカ野郎。そもそもかっこつけたかった云々の前に、ここで負けた方が格好がつかないじゃないか。バカかよ。



「サーブ権は貴様にくれてやる」



 せめてもの計らいか、サーブ権は達志からスタートだ。今回は一応体験入部なため、一セットのみだ。先に一セット取った方の勝ち。


 サーブは、交互に打つ方式だ。達志が打ったら、次はマルクス、次は達志……と。


 全部達志でもいいとお慈悲をもらったが、まだ変なプライドとそう言ったマルクスの顔がムカついたのでやめた。



「よっし……行くぜ!」



 こうなったら覚悟を決めろ。ありがちじゃないか、こういう勝負事……決闘で、なんだかんだ主人公が勝ってしまうのは。


 全力でぶつかれば、なんとかなる!



「せい!」



 ボールを高く上げ、景気のあるかけ声と共に、落ちてくるそれを勢いよく打つ。それにより、パンッと打たれたボールは勢いよく相手コートへと襲いかかり……



 ……パスッ……



「………………」



 ……襲いかかる、はずだった。



「…………」



 確かに、ボールは打った。打てないなんてことはなかった。勘は鈍ってない、はずだ。当たったのだ。うん、当たった。当たったのは間違いない。


 ……ボールは、数メートル先に転がっていた。もちろん、相手コートには届いてもいない。当たったが、ボールはそこにある。これはつまりそういうことだ。



「フォルト!」



 いつの間にか審判についていた一人の男子部員が、高らかに声を上げる。あぁ、ヤバい。恥ずかしい。



「ここまでかよ……」



 まさか、打ったボールが相手コートに届かないほどに腕の筋力が衰えているとは。当たらないよりマシなのかどうか、悩ましいところだがとりあえずこれだけは言える。


 ……これは予想以上にヤバい。

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