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第十七話


「ワーワー!!」


 歓声で目を覚ました。なんだかまだ夢の中にいるような浮遊感を感じた。私は不思議に思い足下を見た。私の足は地面についていなかった。私はどうやら、宙に浮いているようだった。なんだ、まだ夢の中か。私はこの歓声は夢の所業だと理解し、再び目を閉じた。


「ワーワー!」


 しかし、一向に歓声は鳴り止まない。夢にしては、居心地が悪い。私は少し怪訝な面持ちで再び目を開いた。


「奈々子、よくがんばったわね」


 そこには、知らない人がいた。その顔は、どことなく見覚えがある気もしたが、いわゆるデジャブというやつだろう。私の記憶にこのような知人はいなかったはずだ。顔は雪見大福のように膨れているし、アゴには醜い3重アゴがある。目はまぶたの肉で埋没していて、視界は大変不明瞭なのだろうなぁ、と推測できた。このような太った知り合いは、やっぱりいない。これはもはやデジャブではなく、“デブジャ”であろう。太った人をみると、「あれ? この人もしかして前に会ったことあるかしらん? それにしても、なんだか食欲が湧いてきたぞ! よし飯でも食いに行こう!」と思ってしまう現象、それが“デブジャ”だ。この“デブジャ”効果によって、飲食店の売り上げは増加し、さらには日本経済の活性化につながっているという。そのため、今経済学者の中では、ひそかに“デブジャ”研究が進められている……


「奈々子? あんたなにぼーっとしてんの? 今試合中よ、シャキッとしなさい!」


 この声、どこかで聞いた覚えがある。


「ま、まさか……マリコ先輩!?」


 私は心底驚いた。


「何よいまさら。ほら、しっかりと<フィギア>を支えなさい。キープメインはあんたなのよ。私はキープサブだから、直接<フィギア>には触れないんだから、ちゃんとしなさいよ!」


 この、常に怒っているようなしゃべり口調は間違いない、マリコ先輩だ。それにしても、面影がない。マリコ先輩は、ものすごく太っていた。ミシュランのタイヤマンみたいだった。


「えっと……試合中?」


 そして、私はようやく現状を理解できた。マリコ先輩は間に合ったのだ! 私が気を失って、<フィギア>を落とす前に、来てくれたのだ。そして今、私はマリコ先輩に普通よりも少し高い位置で“お姫様抱っこ”をされている状態で宙に浮いている。なんと、山篭りでさらに太ったマリコ先輩は、その豪腕で私ごと<フィギア>を規定の位置でキープしていたのだった。


「え、うそ!? に、20分!?」


 ふと、キープ時間を計測する時計版を見た。そこに表示されている数字は20分を超えていた。マリコ先輩は20分もの間、私ごと重い<フィギア>を持ち上げ続けていたのだ(私はけして重くない)。信じられない! もはや人間の所業ではない。ゴリラでも無理だ。私はマリコ先輩のでたらめな才能に感服した。



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