↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
極挨覇道 挨拶侍  作者: 石鹸ソイソース
第1章 社内の人にこんにちは

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/28

幕間 ダンゴムシの内側

7月15日日曜日

 今日から日記を付けることにした。

 昔の映画で見た夏休みの宿題ってやつのマネだけど学校に出せばポイントくれるし良い事だ。

 どうせだから紙のノートも買った。なんだがかドキドキして週末から始めようと思ってたけど今日から書く。

 書いた日数が多いほどポイント貰えるし。

 でも書きすぎてノートのページが無くなるのも困るからとりあえずはここまで。


7月16日月曜日

 自由研究ってのもやってみることにした。

 クワガタの観察をしようと思ったけど、去年も採れなかったから別のにすることにした。

 なんでも良いけど虫をテーマにしようと思う。

 観察の内容をこの日記に書けば観察レポートにもなるし一石二鳥で最高だ。

 紙の節約にもなるし天才かもしれない。

 とにかく、観察対象を早く見つける必要があるので明日は自然公園に行こうと思う。

 今日はめんどくさいから行かない。


7月17日火曜日

 自然公園には虫がいっぱいいたけど、クワガタは見つからなかった。

 デカいバッタもいたけど餌を準備するのが面倒だからやめとく。

 蝶もカナブンも飼いにくそうでやめた。

 いろいろ調べてみたら枯れ葉だけで生きられるらしいからダンゴムシにすることにした。

 小さいのとか模様があるのとかいろいろいたけど、大きいのほど見つけた時は嬉しかった。

 一番デカいのを探すっていう研究でもいいかもしれない。

 数匹捕まえたけど、明日も探そうと思う。


7月18日水曜日

 木の下を探していたけど、髪が長いおじさんが来て石の下を探せって言ってきた。

 そしたらホントに沢山いた。ヤスデとかワラジムシもいたけどダンゴムシが一番多かった。

 おじさんは、虫じゃなくてラーメン屋を探していると言っていた。

 そんなの公園にあるはずないというと、おじさんは「まだ見ぬうまいラーメンは思いもよらない所にあるもんだ」とか言ってて頭がおかしいと思った。

 ラーメンがそんなに美味しいのか聞いてみたら、ごちそうしてくれた。

 びっくりするくらいとてもおいしかった。


7月19日木曜日

 昨日お母さんが帰ってきて、ラーメンが美味しかった話をしたら怒られた。

 ポイントを勝手に使ったと勘違いされたけど、説明したら何も言わなくなった。

 だから僕が「またラーメン食べたい」と言ったらまた怒られた。

 ラーメンがそんなにも高級なものだとは知らなかった。

 昨日もっと食べれば良かった。

 ダンゴムシは石の下を探すようになってから大きいのがいくつも見つかった。

 でも、特別大きいのはいなかった。


7月20日金曜日

 今日も自然公園でダンゴムシを探していたけど、靴の広告が気になった。

 最新の運動靴で速く走れるらしい。

 お母さんにねだったら、ポイントの無駄だと怒られた。

 お母さんこそ使いもしないバッグをずっとレンタルしっぱなしで無駄遣いしているのにズルい。

 そう言ったら余計に怒って、耳がキンキンする。


7月21日土曜日

 ダンゴムシといっしょに靴の広告も探していたら、成長促進薬入りの栄養カートリッジの広告があった。

 僕も使っているやつだけど、体が大きく育つ。

 それで閃いた。これを使えば大きいダンゴムシを作れるかもしれない。

 でも僕が作っている静脈注入型の栄養カートリッジをダンゴムシは食べなかった。

 胃ろう型のカートリッジなら食べるかもしれないと思って、お母さんに内緒で僕の定期注文を少し変えておいた。

 明日届くけど、物さえ隠せばお母さんにバレることは無いと思う。


7月22日日曜日

 胃ろう型の栄養カートリッジが届いたから早速ダンゴムシにあげてみるとちゃんと食べた。

 当たり前だけど、急に大きくなるわけは無かった。

 実験なのだから比較するために小さいやつを2グループ準備して、片方だけにあげることにした。

 だから大きいのを探すのはやめて、同じくらいの大きさで揃えることにした。

 実験用を探していたら、半分青いダンゴムシを見つけた。

 はじめて見るタイプで嬉しかったから、これも持ち帰って実験とは別に飼うことにした。


7月23日月曜日

 栄養カートリッジを良く食べるので、そんなにおいしいのかと思って僕も舐めてみたけどクソマズかった。

 酸っぱくした土みたいな味がして気持ち悪い。

 よくこんな物を食べられるなと思ったけど、枯れ葉よりは美味しいのかもしれない。

 青いダンゴムシはよく見るとお母さんのバッグによく似た色をしている。

 穴も開いていてどうせ使わないのだからさっさと返してしまえばいいのに。

 そうしたらポイントも余裕が出て、僕の靴もレンタルできる。


7月24日火曜日

 カートリッジをあげていたダンゴムシが脱皮をした。

 もしかしたら、もう効果が出てきたのかもしれない。

 ただこのペースだと時間がかかるので、既に大きい個体にもカートリッジをあげてみることにした。

 夏が終わるまでに手のひらくらい大きくなるとうれしい。


7月25日水曜日

 青いダンゴムシの色が変わった。半分くらいだったのに頭の近くまで青くなった。

 こっちにもカートリッジをあげてみようと思う。

 もうこれ以上ダンゴムシはいらないので自然公園へ毎日いかなくてもいいと思う。

 枯れ葉が無くなったらでいい。


7月26日木曜日

 カートリッジをあげていたダンゴムシがまた脱皮した。これでこのグループは全部脱皮したことになる。

 枯れ葉の方は誰も脱皮していない。

 明らかに成長速度が違うのが分かった。

 青いダンゴムシは頭まで青くなった。部屋の中で見ると紫に近い。


7月27日金曜日

 もう比較する必要はないので、枯れ葉グループのダンゴムシを逃がすことにした。

 自然公園へ行ったら、かっちゃんがいた。

 新しい運動靴を履いていて羨ましかった。

 かっちゃんは、「たいして他の靴と変わらない」って言ってたけど、そんなの履いてみないと分からない。

 お母さんにまた頼んでみたけどダメとしか言わない。


7月28日土曜日

 また脱皮した。でもあんまり大きくなっている感じがしない。

 調べてみたら、成長促進の成分は虫にあまり効かないらしい。

 でもデカいダンゴムシを作りたいのでAIコンシェルジュにいろいろ聞いてみた。


7月29日日曜日

 昨日調べたことをまとめると、ダンゴムシを巨大化させるには、専用の成長ホルモンを混ぜた特別な餌をあげるとか活性酸素を使うとかいろいろあったけど、ゲノム編集で大きく育つのが作れるらしい。

 どれも機器とか餌代でポイントがかかるけど、ゲノム編集は最初だけで済む。

 でも、僕が自由にできるポイントでは足らなかった。

 靴よりも高い。どうしよう。


7月30日月曜日

 お母さんにダンゴムシのゲノム編集をねだってみたが、やっぱりダメだった。

 僕に配給されているポイントがあれば十分足りるはずなのに、お母さんが使ってしまうのはどうかと思う。

 それも良い事に使うのならまだしも、あんな破れたバッグなんかに使われているのは許せないと思った。

 けど、言わない。言ったらまた長いヒステリーが始まるから。


7月31日火曜日

 松田がRVRの機械を借りたって聞いたので、遊びに行った。

 見たことない所へどこでも行けて、なんでも食べられて何でもできてすごかった。

 僕も家に欲しい。

 でも靴よりも高いのでたぶんダメって言われるに違いない。


8月1日水曜日

 青いダンゴムシが死んだ。昨日まで元気だったけど朝見たらひっくり返っていた。

 レアだったのに残念。

 また探すために自然公園へ行ったが、なかなか見つからなかった。

 途中で飽きてしまったので、ハサミムシで遊んでた。


8月2日木曜日

 ゲノム編集がもっと安くできないか、バイオ会社に行って聞いてみることにした。

 ビルに入ると受付に綺麗なドールがいて、最初は本物の人間かと思ってしまった。

 家にいる三鈷杵型の家事ロボットとは全然違う。

 ああいうドールが家に居たらいいのにって思う。

 けどきっと高いんだと思う。

 ゲノム編集は安くならないらしい。いっぱい頼めば安くなるらしいけど家にたくさん巨大ダンゴムシがいても困る。


8月3日金曜日

 今日も青いダンゴムシは見つからなかった。

 家のダンゴムシは脱皮しているけどたいして大きくなってない。

 ちょっとつまらなくなってきた。


8月5日日曜日

 昨日帰ったら、お母さんに胃ろう型のカートリッジが見つかって怒られた。

 無駄遣いだと言われたので、お母さんのあの破れたバッグは無駄遣いじゃないのと言い返したら余計に怒った。

 あれはお父さんとの思い出のバッグだって、何回も言われた。

 バッグの傷はお父さんがプロポーズしてきたときに、驚いて転んで付いたらしい。

 だからってずっと借りっぱなしにしなくても良いじゃないか。


8月6日月曜日

 ダンゴムシ用のカートリッジが届かなかった。

 お母さんにキャンセルされた。

 あと2本残りがあるけど、このままだと1週間も持たない。

 ダンゴムシの数を減らして、引き延ばすしかない。


8月7日火曜日

 青いダンゴムシは見つからない。

 公園にはかっちゃんがいて、昨日捕まえたというミヤマクワガタを見せてくれた。

 飼うには専用のゼリーが必要で、あまり暑いところはダメだからとすぐに帰ってしまった。

 やっぱりクワガタは強そうでかっこいい。

 ダンゴムシも守りは堅いけど小さいし強そうじゃない。

 やっぱりゲノム編集したい。


8月8日水曜日

 なんとなくバッグのレンタル料金を調べたら高くてびっくりした。

 靴とRVR両方借りるよりも高い。

 1週間我慢すればゲノム編集だって出来てしまう。

 なんであんなオンボロのためにそこまでするのか分からないし、腹が立ってきた。


8月9日木曜日

 バッグを返却した。

 お母さんは帰ってくるとすぐに気が付いて、今まで見たことないくらい怒った。

 始めは僕を叱っていたけれど、泣き叫んで暴れ始めてどうしようもなくなった。

 手当たり次第に物を投げて、家事ロボットが3本のアームで掴んですぐに元の場所に戻す繰り返しだった。

 僕が「だったらまた借りればいいじゃん」というと「あのバッグはもう戻ってこない」といった。

 次頼んだら新品みたいに綺麗なバッグが届くのに。絶対その方がいいに決まってるのに。

 お母さんは落ち着いたと思ったら出て行ってしまった。


8月10日金曜日

 お母さんは帰ってこなかった。

 ダンゴムシを探しに行く気にもならなかったので、家のダンゴムシを床に放して遊んだ。

 お母さんに見つかったら怒られるけど、今はいないから特別。


8月11日土曜日

 青いダンゴムシは見つからない。お母さんも帰ってこない。

 連絡しても繋がらないし、どこ行ったのか全く分からない。

 それでもお母さんの服のレンタルが届くのですごい無駄だと思った。

 だからローテーションの自動発注をキャンセルした。

 戻ってきたらまた頼めばすぐに来るから大丈夫。


8月12日日曜日

 カートリッジが無くなってしまった。

 でもお母さんがいないから、また勝手に注文した。

 いないのが悪いと思う。

 ついでにお母さんの服で浮いたポイントで靴も借りた。

 走ってみたけど、あんまりすごいとは思わなかった。


8月13日月曜日

 ダンゴムシのゲノム編集をした。

 卵を抱えていたダンゴムシを送ると夕方には編集済みの幼虫が戻ってきた。

 注文するのに注意書きとか同意書とかいろいろあって大変だった。

 1週間後に追跡マーカーを埋め込むから、それまで送られてきたケースから出しちゃいけないらしい。

 ケースには餌とか入っているけど、ちゃんと育つのか心配。


8月14日火曜日

 お母さんが死んだ。

 病院から安楽死の通知が届いた。

 精神疾患で本人の要望を受けて施術が行われたらしい。

 遺体はすでにマテリアルセンターで処理が終わっているから見ることは出来ないみたい。

 かわりに哀悼ポイントがいっぱい入った。

 でも突然帰ってきてまた僕を叱りそうな気がして、あんまり悲しい気持ちにはならなかった。


8月15日水曜日

 たった二日でゲノム編集したダンゴムシはかなり大きくなった。

 比較実験用に捕まえた小さいダンゴムシと同じくらい。

 このスピードなら夏の終わりまでに手のひらサイズになるかもしれない。

 黒くなり始めて良く分かったけど、このダンゴムシの目は赤くてかっこいい。


8月16日木曜日

 カートリッジをあげ忘れたせいでもともと飼っていたダンゴムシが全部死んだ。

 ゲノム編集したダンゴムシに夢中になりすぎた。

 それと市民管理センターから連絡が来た。

 世帯が僕一人になったので、単身用住居に引っ越さなくてはいけないらしい。

 ダンゴムシくらいしか荷物が無いので明日移ることにした。


8月17日金曜日

 引っ越し先はすぐ近くだった。

 今までの部屋のちょうど半分くらいの広さだったけど、前と同じ灰色の壁だったのであんまり変わった気がしない。

 隣に住んでいたおばあさんが挨拶しに来た。

 やたら僕を可愛そうだというのでちょっと不愉快だった。


8月18日土曜日

 部屋が殺風景だったので、壁にいろいろ画像を張り付けた。

 データストアには動く壁紙データとか、ARペットとかいろいろあって面白かった。

 試しに家事ロボットに恐竜のARを投影させたら、部屋が急に狭苦しく思えてきたのでやめた。


8月19日日曜日

 隣のおばあさんが毎日訪ねてくる。

 何の用も無いのに。元気かどうかを聞いて帰っていく。

 きっとおばあさんは一人で寂しいのだと思う。

 そう考えたら、僕もお母さんを思い出したので、お母さんの画像を壁に張り付けてみた。


8月20日月曜日

 マーカーを付けるためにダンゴムシを会社に送った。

 夕方には帰ってきた。

 これからは普通に飼っていいらしい。

 餌はカートリッジにすることにした。これならきっと成長が早まると思う。

 壁のお母さんはもう怒らないので、RVRの機械も借りてみることにした。


8月21日火曜日

 ダンゴムシは今までで一番大きいダンゴムシより大きくなった。

 毎日のように脱皮をしているし、カートリッジも良く食べる。

 クワガタくらい大きくなったらかっちゃんにも見せてあげようと思う。

 今日はRVRが届いたので、森にクワガタを採りに行ってみた。

 かっちゃんのよりも立派なクワガタが沢山捕れたけど、RVRを辞めると消えるので、当たり前だけどちょっとがっかりした。


8月22日水曜日

 久しぶりに自然公園で青いダンゴムシを探してみた。

 やっぱり見つからないけど。代わりにコクワガタを見つけた。

 RVRの仮想のクワガタより、小さいけど現実のクワガタのが良いと思う。


8月23日木曜日

 ダンゴムシは日に日に大きくなる。

 餌も増えて2日で1本食べてしまう。

 もうあと何日かでコクワガタよりも大きくなるかもしれない。

 比較しやすいようにARのコクワガタをダンゴムシのケースに入れておくことにした。

 超えたら、次はもっと大きいノコギリクワガタとかにするつもり。


8月24日金曜日

 おばあさんが毎日来る。

 それでいつも「一人残されて可哀想に」なんていう。

 僕は楽しくやっているのに決めつけられるのは嫌いだ。

 だから明日からは居留守を使おうと思う。

 それと玄関から見えるようにお母さんのARを置いて、一人っぽく見えないようにした。


8月25日土曜日

 ダンゴムシがコクワガタと同じくらいになったので、かっちゃんに見せることにした。

 かっちゃんは「デカくてキモい」と言って喜ばなかった。

 たしかに、足がいっぱいあって裏返すと気持ち悪いけど、この目が赤いところとかかっこいいのに。

 後でミヤマクワガタと勝負させようと言ったら断られた。


8月26日日曜日

 ついに青いダンゴムシが見つかった。

 原っぱの栗の木の下にいたのを捕まえた。

 帰ってから誰かに自慢したくなったので、おばあさんに見せた。

 すると「虫はきらいなの」と言うだけだった。

 期待していた反応が貰えなかったので、しょうがなくARのお母さんに見せた。

 当然反応が無くて面白くない。

 だから、ARに動きを追加した。ダンゴムシを見て「綺麗ね」と言う。


8月27日月曜日

 コクワガタを超えてから成長のスピードが更に上がった気がする。

 カートリッジは1日で1本食べてしまう。

 今日は2回も脱皮した。明日にはノコギリクワガタくらいになるかもしれない。

 ARのお母さんに見せると「大きいわね」と言った。


8月28日火曜日

 今日も2回脱皮した。かっちゃんのクワガタよりも大きい。

 青いダンゴムシと並べてみると違う生き物みたいに見える。

 お母さんにどっちの方が良いか聞いてみると「青いのが好き」と言った。


8月29日水曜日

 お母さんが動くようになってから、ずっと僕を目で追っている。

 同じ場所でくるくる周るので、移動範囲を設定して歩けるようにした。

 たまに家事ロボットがお母さんを貫通するが、ホントにお母さんがいるみたいだった。

 お母さんは青いダンゴムシの近くに良く座るようになった。


8月30日木曜日

 明日で8月が終わりだけど、ダンゴムシはまだ手のひらより小さい。

 カートリッジをそのままケースに入れておくようにしてから、ダンゴムシはずっとカートリッジを啜るようになった。

 あんまり動かないし、脱皮の時はもっと動かない。


8月31日金曜日

 ダンゴムシは10センチくらいになった。青いダンゴムシを隣に置くと幼虫みたいに見える。

 この大きいダンゴムシもちょっと前まで幼虫だったのに。

 お母さんはこのダンゴムシへはあまり近寄らない。

 本当のお母さんだったら、なんて言うのか気になったので記憶抽出して行動アルゴリズムに組み込んだ。

 するとお母さんは大きいダンゴムシを見て「気持ちが悪い」と言った。


9月1日土曜日

 青いダンゴムシが死んだ。

 大きいダンゴムシのケースに入れっぱなしにしていたら潰されてしまった。

 死骸を捨てたら、お母さんが泣き出した。

 意味が分からなかったけど、お母さんはいつもそうだ。


9月2日日曜日

 一日に2本もカートリッジを食べるようになった。もう少しで僕の手と同じくらいになる。

 カートリッジを注文しようとしたら、お母さんが「無駄遣い」だと言った。

 面倒なので、前みたいに日中は外に行ってもらう設定にした。


9月3日月曜日

 今日から学校へ行くはずだった。でも面倒なので明日からにすることにした。

 お母さんは当然怒ったけど、いうこと聞かないでいると一度いなくなって、夕方また戻ってきて僕を叱った。


9月4日火曜日

 お母さんに怒られたので学校へ行った。

 帰ってくるとカートリッジが2本とも空になってた。

 よく見てみると、お腹の真ん中くらいが青くなっていた。

 青いダンゴムシになるのかも。


9月5日水曜日

 かっちゃんに「ダンゴムシをまだ飼っているの」と聞かれたので「もっと大きくなったよ」と教えてあげた。

 かっちゃんのミヤマクワガタはもう死んだらしい。

 お母さんが帰ってきて、その話をすると「生き物を飼うのは大変なのよ」とまた僕を叱った。


9月6日木曜日

 家を出る時におばあさんにあった。

 ちょっと気まずかったけど、「一人で偉いわね」と褒めてくれた。

「一人じゃないんですよ」とお母さんを見せてあげたら不思議そうな顔をしていた。

 確かに単身者向け住居に二人いるのは少しおかしいかもしれない。


9月7日金曜日

 ダンゴムシの青い部分が増えてきた。もう半分くらい。

 食べる量も増えていて、元気そうだから病気とかではないと思う。

 お母さんはダンゴムシが青くなり始めてから、しきりにダンゴムシを覗き込むようになった。


9月8日土曜日

 一日中ダンゴムシを見ていたら、今日は脱皮をしていないことに気が付いた。

 もう大人になったから回数が減ったのかもしれない。

 それでもダンゴムシは生きている限り大きくなるから、きっとまだ大きくなるはず。

 ずっと寝そべっていたせいか、お母さんに「少しは運動しなさい」と怒られた。


9月9日日曜日

 脊椎インプラントの定期メンテナンスがあったので病院へ行った。

 すると急に入院をすすめられた。

 統合失調症の兆しがあると診断されたが、別に困っていないのでそのまま帰った。

 ダンゴムシは1日に3本も食べるようになった。

 そしてもうすぐ、全身が青くなる。


9月10日月曜日

 ダンゴムシは頭まで青くなった。でも目だけは赤い。

 少し動き回るようになって、前より元気そうだった。

 お母さんはダンゴムシをよく見ている。餌を切らすと僕を怒る。


9月11日火曜日

 そういえば今週はおばあさんが訪ねてこない。

 どこかに引っ越したのかもしれない。


9月12日水曜日

 逢瀬集会があるのでダンゴムシをみんなに見せようと思った。

 持っていこうとするとお母さんがものすごく怒った。

「持って行かないで」と僕を止めた。

 仕方がないのでダンゴムシを置いて行った。


9月13日木曜日

 ダンゴムシがケースを歩き回って、よくひっくり返るようになった。

 足をわしゃわしゃしてブリッジするみたいに戻るけど、また何回もひっくり返る。

 元気いっぱいで調子がよさそうだ。


9月14日金曜日

 全く使わないからRVRを返却した。

 もっと早く返却すればよかった。ポイントがもったいなかった。

 いつのまにか餌代がかなり高くつくようになって、節約しなきゃいけないかもしれない。


9月15日土曜日

 靴も安いものに変えた。

 走ることなんて少ないし、走りが速くてもたいして意味が無いと思った。

 ダンゴムシは今日も元気で脱皮もした。

 動く時間が増えたせいで、餌が一日に2本に減った。


9月16日日曜日

 おばあさんが訪ねてきた。

 久しぶりだったので出てみると、何度も「大丈夫なの?」と心配してきた。

 僕はあんまり言ってくるものだから怒鳴って追い返してしまった。

 お母さんに「失礼な態度をとるんじゃない」と怒られたけど、そのあと二人でダンゴムシを眺めた。

 考えてみると、前に欲しかった靴もRVRも手に入れて、今は巨大で青いダンゴムシもいる。

 今年の夏は、僕の欲しいものが全部あった良い夏だったと思う。

 お母さんは相変わらず恐いけど、僕は十分幸せなのだと思う。


青いダンゴムシ見たことありますか?

実在していて綺麗なのでぜひ検索してみてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。