第21話 大馬鹿者の忘形
「「ぉおぉはっよおおお!!!にぃしきやまっ!!ぉおぉはっよおおお!!!」」
録音を繰り返すように続けられる蛮行。
これを蛮行と言わずしてなんというのか。
こんなものは戦略的長距離射撃でもなんでもない。
俺一人に対してまき散らされた逃れようのない挨拶の絨毯攻撃。
挨拶はされたら返さねばならない。なんて、思っていたことが俺にもあったなと遠くを見てしまいそうになる。
こんなの返すと言ってもやりようがないだろう。
「おはよう」と言われるたびに「おはよう」と返すのか?
見ている側からしたら道化にもほどがある。
だったら、先ほどのように礼で返すか?
いちいち立ち止まっていては進めまいて。
つまり正解はどこにも存在しないということだ。
しいて言えば、ここで極挨で返して圧倒的実力差で黙らせるのが最上だが、そんなのできっこないことぐらい俺にだってわかる。
決めた。
無視する。
ガン無視だ。
一度礼はしたのだ。であれば相手を視認したという意思表明は済んでいる。
いちいち相手になんてしていられない。
ただ、無視し続けるのも拒絶と捉えられては体裁が悪い。
挨拶とは友好の意思表示でもある。疎かにしていいことではない。
せめてもの折衷案として選ぶのは、愛想のいい笑顔。
とびきりニッカニカの笑みを貼り付ける。わざとらしいと思われようがかまいやしない。
これしかないんだからしょうがないだろうよ。
でもこれが今できる最善。最も強い。
そう信じてる。
己が選んだ決断に間違いなど無いと、なにがなんでも信じ込む。
どうだ?すごいだろう?
こんなに愛想のいい男なんて見たことないだろう?
特別に見せてやる。よく見ろ。俺を見ろ。
いいぞ。そう思うとなんだか不思議と高揚感が生まれてきた。
義妹風にいえばテン上げってやつだ。
あの大艦のハイテンションに向かうならばこうでなければ、スカした痛い奴になってしまう。
友好を示すにはまず、明るく笑顔で元気よく。
仮面じみた愛想笑いが、本物の顔に置き換わるような感覚がしてくる。
俺は今、心の底から笑っている。
単にそう思い込みたいだけなのか、事実本当にそうなのかなんて分からない。でもそれで良いじゃないか。
今、満足できるのならそれに越したことないだろうに。
足が軽くなった。しかし確かに重さは乗っている。
ズンズンとリズミカルな効果音が乗りそうな歩み。
「「ぉおぉはっよおおお!!!にぃしきやまっ!!ぉおぉはっよおおお!!!」」
まだ言ってやがる。自重を知らない大腕は疲れというものも知らないらしい。
反響する雄叫びは徐々に反響する声との時間差を広げている。
盆栽のような姿は急速に大きく太く育ってゆく。
デカい。重い。
その硬そうな革靴が地面を叩くたびに、ズシン、ズシンと振動が伝わってくる。
まるで災害。
嬉々として迷惑をまき散らし、避けることも叶わず遭遇を待つばかり。
止めることなんて出来やしない。
ただ行く末を見守ることだけ。
腹を立てたってしょうがない。嘆いたって変わらない。
今はこの先がきっとよくなると信じて、あるがままを受け入れて突き進む。
吊ってしまいそうなほど張り詰めた頬の筋肉が、嘘なのかも分からない高揚を現実に具現化させている。
余裕なんてあるわけがない。でも余裕があると思えば、あるように思えてくる。
そして、実像のない余裕が背中を押す。
もう立ち止まることなんて出来やしない。
どこまででも歩いて行けそうだ。
吹き付ける声の暴風が俺の流線形の体をなぞり、揚力を生んでいる。
一人でに、足が浮いては落ちている。
「あっはっはっは」
愉快だ。実に愉快。
何にも面白い事なんてないが、愉快でしょうがない。それがまた愉快なのだ。
「「ぉおぉはっよおおお!!!にぃしきやまっ!!ぉおぉはっよおおお!!!」」
揺れが止まった。
大艦が会議室入口に到着した。
掲げた腕を下ろし、根を張るように立っている。
ニカニカと輝く歯が、進むたびに光をチラつかせる。
下ろした両腕がまたゆっくりと昇っていった。
地面と平行になったところで満足したように制止した。
その腕は行く手を阻むようでもあり、同時に飛び込んで来いと雄弁に物語っている。
挨拶の暴風雨は止んだ。
大艦はピクリとも動かない。
自らの歩が進むと彼の巨体は着実に大きくなっている。
昔見た何かに似ている。
第2次大戦後の復興の象徴として大阪に残る万国博覧会のモニュメント。
そうだ”太陽の塔”。それだ。
巨木よりも太く硬く。悠然とそびえる有機的な立ち振る舞い。
てっぺんに異物のように質感の違う光沢を持ち、微妙な不自然さが不思議な忌避感を抱かせる。
幻想にも思えるが、傍に落ちる影がその存在を確固たる現実に固定している。
違うのは見下すような目。三日月型に吊り上がった口。そして長く、先端に向かって収縮の曲線を描かない衰退を知らない腕。
左腕を辿ると会議室の透明な扉。
扉の奥にはナム課長が足を組み、今か今かと待ち構えている。
気付けばもう少しで間合いに入ってしまう。
入ってしまう?何をバカなことを言っている。望んでいた事じゃないか。
大艦が沈黙し、外野連中も押し黙った今。聞こえるのは俺の足音だけ。
広い廊下は反響を遅らせて、落ちてゆくような感覚。
頭の中の声がいつもより大きく感じられる。
心のざわめきがハッキリと聞こえる。
怖い。
すごい。
やばい。
もはや言葉を選ぶこともできないほどに大艦へ高い評価を付けてしまっていることが否定できない。
奴は大馬鹿者だ。誰がどう見たって違うことはないと断言出来る。
時間に遅れ、扉を壊し、挨拶を投げ捨てるように連投する。手を振り礼節を重んじず、協調性を忘れて走り出す。挙句扉の前に根を張るなんて、紛れもなく馬鹿がすることだ。
それでも、これらの蛮行に気圧されている自分がいる。
どれもこれも社会人として避けるべきであり、そもそも想像すらしなかった行為。
俺だったら絶対にしない。
大馬鹿者は普通の人間がしないことをわざわざ選んで実行する。
失敗すれば当然馬鹿だと笑われ蔑まれる。
しかし、目の前のリスクをかなぐり捨てた大胆不敵な振る舞いは、時に大きなリターンを生む。
その時、馬鹿は馬鹿では無くなり、多大な尊敬を集め人々はひれ伏す。
奴がどちらに転ぶのか、今の俺には分からない。
どうしてこんなことが出来るのか。
リスクを見落としたのか。周囲からの評価を気にしていないのか。後先を考えられないほど頭が足りないのか。
どれも違う。
自信。ただそれだけが、行動を支えている。
内から湧き出る際限の無い自信がすべてのリスクを踏みつけ、己が意思を肯定し続けている。
何者にも左右されず、何事にも動じない。
個として不変の姿が、俺を奴の世界から爪弾きにしてしまう。
まるで俺など羽虫に過ぎないのだと言わんばかりに。
俺とは違う。
違いというのなら、差があるということ。
差があるというのなら、そこには優劣が存在する。
当然ながら勝敗が決するまで優劣は確認できない。
この大馬鹿者が俺より優れているなんて考えたくはないが、可能性を否定することは今の俺にはできない。
また捨てたはずの思考が舞い戻って来る。
この外聞を蹴破って無茶苦茶する暴漢に負けるなど、これ以上の屈辱があるだろうか。
「あんなやりたい放題やってたのにそれに負ける錦山ってどうよ」なんて酷評を受けたら俺は正気でいられるのだろうか。
いいや、無理だ。耐えられない。
今後の社会人生活にも多大な影響を被るだろう。
なんとしても絶対に避けねばならない。
頭皮がじっとりと油に覆われるような感じがして気持ちが悪い。
「馬鹿なんて放っておけよ」なんて声が聞こえた気がした。
そんな無知蒙昧なことを言っていたのは紛れも無くかつての自分。学生時分の天狗の妄言。
社会に出て初めてわかる事がある。
避けるべき時もあれば、引き際というのもある。
そして、どうしても向き合わねばならない時もまたあるのだ。
何があったかは知らない。大艦がここまで醜聞をものともしない捨て身の攻勢に出るなんて予想できようはずもない。
大艦は、なぜそこまでする。
そんなにもイーストウェークベースへ思い入れがあるのだろうか。
旅行程度であれば貯め込んだポイントを使えばいいものを。
ナチュラルから何かを買うにしても十分満足できるほどあるだろう。
俺のように立ち入り禁止区画へのアクセスが目的なのだろうか
どうにもイーストウェークが目的とは思えない。
口元とは対照的に、全く笑っていない目が俺を食い殺そうとしてる。
なぜだろうか、その目にあるのは俺ただ一人。
それ以外に何もない。仕事への執着も、立身出世への渇望もない。
ただただ俺を潰すことだけを考えていて、あとの仕事も外聞も評価も何もかもを意識から排除している。
一連の行動で、俺に負ければ大艦は確実に社会人として積み上げてきた地位を失う。
そんなことは彼も分かっているはず。
これからも仕事を得ようとする人間のすることじゃあない。
確信がある。
これは心中。
俺を巻き込んで沈むつもりだ。
何がこいつをそうまでさせる?
俺が何をした?身に覚えがなさすぎる。
嫌われていたわけでもない。……はずだ。
考えたって他人の心情ほど理解できないものはない。
だが、変化したのは事実で、こうなる何かがあったということ。
俺の知らない重要な何か。
課長は知っているのだろうか。
大艦を目の前に悠然と腕組みするナム・ポンリョン課長は、俺を見ることもなくずっと大艦に厳しい目線を送っているが、何を考えているのか皆目見当もつかない。
俺の知らないとてつもない何かが、大鑑の向こうに待ち受けている予感がする。
防人と言わんばかりに、そこへ俺を侵入させまいと大艦はしていいるような気概がある。
それは想像もできないほどに恐ろしいものだろうか。
それとも大艦が人生を賭けてまで得ようとするほど甘美なものだろうか。
考えたってしょうがない。
どうせ答えはあと1分もかからずに分かるのだから。
あと6歩。
気が遠くなるほどデカい壁だが、結局やることは変わらない。
壁の外にシイラが舞い戻る。
大口を開ければすっぽりと一口で食われてしまいそうだ。
鱗が爛々と輝き、自己をどこまでも主張する。
「俺を見ろ」とそう言っている。
しかしその目に展望はない。
いくら立派だろうと、いくら己を誇示しようと、望みを持たない空虚な瞳ではどこまで行こうと何も見ることはかなわない。
そしていずれ何も成せずに朽ち果てるのみ。
俺は何を見ているだろうか。
海の向こうの人工島だろうか。
見るべき場所すら分からない、妹との再会だろうか。
いずれもまだはるか遠く、焦点を合わせることは叶わない。
目的が遠くて見えないならば、それは何も見ていないに等しい。
目標を捉えろ。
見えるものを見ろ。
大艦は俺を見ている。
二つの目で、突き刺すように。
俺もそうしようじゃないか。
今この瞬間だけはすべてを忘れて、大鑑だけを見ようじゃないか。
あと一歩。
お前が心中を望むなら、俺が先に殺してやる。
悪いがおっさんと心中なんて御免こうむる。
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この戦い。何が何でも錦山に行かせるわけにはいかない。
錦山がイーストウェークに来たがっているのは知っている。消えた妹を探すためにわざわざ入社してきたというお涙頂戴話も聞いたことがある。
だからといって今回だけは絶対にダメだ。タイミングがあまりにも悪すぎる。
いずみ組との商談でキナ臭さは感じていたが、あの時はあれが最善だったと思ってしまった。
しかし、昨日俺は知ったのだ。
端的に言って、このプロジェクトはポシャる可能性が恐ろしく高い。
上手くいかないだけならまだいい。どうせポイントが得られないだけで、どうということは無い。
問題は、十中八九死ぬということだ。
脊椎インプラントキャリブレーションの待ち時間でいつものようにダークウェブでドール虐待アーカイブを探しているときに目にしてしまった。
潜るにはスタンドアロンデバイスや特別な回線を作ったりと莫大な設備投資が必要だが、ダークウェブには普通には知り得ない情報が溢れていた。
その一つに、「ベジタメイトユニオンを怒らせたナチュラルがイーストウェークベースに潜伏」というのがあった。
俺は迷わず、ダークウェブ内の仮想通貨を支払って詳細を購入した。
商談で新佐が語っていた憶測じみたニュースはほとんど正しかった。
違うとすれば、ナチュラルは貨物船強襲時点で1隻潰されていたことだ。
だがそんなことはどっちでもよかった。
重要なのは生き残ったナチュラルがいるということ。そしてそいつがイーストウェークベースに逃げているということ。
ベジタメイトユニオンはナチュラルの死体を14体回収したという。
俺だってこの仕事をしていれば襲撃についてはある程度分かる。
あそこのナチュラルは必ず16人で襲撃に出てくる。4隻に別れて1隻4人が習わしのはず。
つまり二人生き残りがいる。
奴らは船が奪った貨物ごと吹き飛んだにもかかわらず、貨物船に隠れていた搭乗員から奪い取った黒い宝石のようなものを持ち帰った。
それが何かは分からないが、きっと新佐が言っていたベジタメイトユニオンが密輸したかった何かだと考えるべきだろう。
そして生き残った二人は追撃を逃れるためナチュラルが住むハビタットと呼ばれる住処から我々部外者の管轄であるイーストウェークベースに逃げたというのだ。
もちろんこの情報の信憑性は低い。
情報源があまりに不明確。
ハビタットのナチュラルかPC製菓が矛先を自分たちに向けないための虚偽の可能性だってある。
しかし、陽動のための情報であることは否定できないが、すべて虚偽と断じるには具体性がありすぎた。
そして情報が出るのがあまりに早い。
PC製菓もベジタメイトユニオンも我々の納東亜重工もこの手の情報は隠匿しているはずだ。
噂として広がるのにも時間がかかる。
そう考えるとこの情報は、襲撃事件に関わっている人間がリークしていると考えるのが妥当だった。
この情報が事実である場合。そうでなくともベジタメイトユニオンが目にした場合。イーストウェークベースは間違いなくぶっ飛ぶ。
更に最悪を考えると、戦略AIスサノオがこれを機に開戦を目指している事も考えられる。
現在、イーストウェークベースに定住者は居ない。プラントとインフラ設備ばかりで、観光はドールライドが主流。生身の人間なんていても数人。
それが、拡張工事となればどうだ?何十人という人間が現地に入る。
いくら蘇生保険があろうと、人が他のメガコーポによって殺されたという衝撃は一瞬で広がる。
第3次世界企業大戦の記憶を持つ者から反戦運動が始まり、過激化した運動は結果的にベジタメイトユニオンの排斥運動につながる。
そうして犠牲と民意から大手を振って戦争を始めることを考えているかもしれない。
いや、かもしれないではない。大いにあり得る。
つまりは、コンペ主任になれば死ぬことになるのは疑いようがない。
ナム課長はきっと知っていた。
なんならベジタメイトユニオンの貨物船が襲われることさえ事前に予測していたかもしれない。
それでいて俺か錦山を死地に送り込もうとしている。どうせ生き返るからいいやとでも思っているのだろう。
いや、どうだろう。
錦山が家族の手がかりを探しに行くというのなら、すべてが灰塵に帰す前に行くべきかもしれない。しかし、イーストウェークでは蘇生保険の記憶バックアップがそんなに頻繁に取れるものでは無い。
もしあっちで手がかりを見つけても、バックアップを取る前に吹き飛んだらどうなる?
もし、手がかりの一部だけを記憶に残して蘇生したらどうなる?
それはイーストウェークが無くなるよりも悲しい事ではないだろうか?
生殺しでゆっくりともがく姿を俺は見たくない。奴はドールではない。
だったら、一思いに潰してやるのが優しさではないだろうか。
それに。
イーストウェークに錦山の家族は居ない。イーストウェークを預かる課長補佐として断言できる。
個人的にはすでに死んでいると思っているが、もし生きていたとしてもそこには決して居ない。
もし生きているならほかのルートからでも探す方法はあるはずだ。
何なら俺が探して、都度俺の個人衛星の通信で送ってやってもいい。
俺が社会人をやめるというのなら、最後に善行ぐらいしてもいいじゃないか。
終わりよければすべて良しなんて言うだろ。
若者のために一肌脱いでやろうじゃないかと思って今日この時を迎えた。
最後だからと練った作戦はあまりに醜悪で、俺自身も恐怖した。
出だしのインパクトも道中のペースの巻き込み方も、すべて過去の立ち合いで見てきたものを参考にし、極大化して練り込んだ。
今日の立ち合いは間違いなく、今までの集大成といえるものになる。
それなのに、なぜか今までの自分を否定するようで足の震えがどうにも止まらなかった。
陣中見舞いの面々にバレないかとひやひやしていた。
それでもやるしかなかった。
勝てることならなんでもしよう。
だって、錦山を救えるのは俺だけなのだから。
傲慢だと罵られようと、入場を遅らせた。
待つ時間がここまでチクチクと痛いものだと知らなかった。
荒々しさを醸し出すために扉を蹴り開けた。
扉がここまで弱いなんて考えたことも無かった。
過去一番の大声を出した。
帰ってこない挨拶の喪失感が学生時代のトラウマを刺激した。
ナム課長を参考にタイミングをズラすために走った。
ステップは踏めないから、ついでに手を振ってみた。
何をしても錦山は動じなかった。
あまつさえ顔を落とし俺への笑いをこらえているようでもあった。
悠然と美しく、あの若人は向かってくる。
目線は俺だけではない、外を眺め、会議室の連中を一瞥する。
余裕が見えた。
俺を街路樹とでも言うように、こちらを注視しない。
終始、どんな表情をしていいのか分からなかった。
ちゃんと俺は笑えているだろうか。
これが俺の集大成だと思うと、情けなく思えてくる。
40を過ぎたが、俺もまだまだ至らないのだ。
それでも、先輩には先輩の矜持がある。
広げた両腕が今にも震えそうだが、なんとしても堪え切る。
すぐ隣からナム課長の視線が刺さるが、今はちょっと待ってもらおう。
あと少し。あと少しで錦山が間合いに入る。
外を見ていたと思ったら、唐突に殺意が俺を刺した。
錦山の重い瞼から下弦の瞳が覗いている。
インプラントではない、生の眼球。
フレームしかない眼鏡は、その目をまざまざと俺に見せつける。
これほどまでに見たどんな人間よりも力を宿している。
わずかに走る白目の赤い稲妻が前へ前へと押し寄せる。
黒い瞳の外縁が重厚な青みをもって奥に佇む。
何者も寄せ付けず、何事にも動じない意思がそこには感じられる。
イーストウェークに行くのだと、ありありと目が吠える。
新歓で初めて会った時を思い出す。
あの時の目もこうだっただろうか。
俺はビビったのかもしれない。だから座席に案内もせず後ろの皆に視線を逸らしたのかもしれない。
それではだめなのだ。
あれから俺も成長した。
色々なものを見て聞いて吸収した。
譲るものか。
動じるものか。
俺を倒せるというのならやってみろ。
俺はお前にやられてはやらない。
だって俺は、お前を救うヒーローなんだぜ?
次回、決着。




