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異世界の管理人  作者: 東風
第3章
53/54

53 さっさとやってしまおうよぉ~ Ⅱ

 「じゃあ、それで。

  決行は、地底王国が浮上してきたその日に!」


 僕はシオンと話し合った後、桃香たちへの連絡を終えて一息ついた。

 今晩は、もう少し準備しておくことがある。


 それにしても、僕が前来たときに作った魔道具が大ヒット商品になっていたとは・・・・・・。

 桃香からは「あれってハンディファンじゃん」って笑われたけど。

 こっちの学校でしか学べないからと魔道具の授業を選択したら、何か魔道具を作るって課題が出たんだよ。

 その時に、何を作るか迷って、なぜか元の世界でハンディファンを持ってた桃香の姿を思い出したんだよね。

 それで、こっちにはないだろうって思って、魔道具で作ってみた。

 一応こっちのは、冷風と温風と切り替えられるようにしてみた。

 ああ、机上に置いても手で持ってもいいようにもしたね。

 ただ、需要があるとは思ってなかったよ。

 こっちには魔法があって、人によっては自分で周囲の温度の調整ぐらいできると思っていたからね。

 僕は、こっちにはないから面白いかなって作ってみただけなんだけど。ホント軽い気持ちで。

 だから、売り上げの一部を預かってるって言われてもねえ。こっちにお金があっても使う予定はないし、次いつ来るかもわからないし(次はないかもしれない)。

 「こっちで有効に使ってください。」って言ったら、桃香が向こうで「予想通りで、うける~」って笑ってたよ。


 ああ、今回の話し合いは、僕がいるテントとトラスト辺境伯邸の書斎(多分?)を繋いでやったんだ。

 僕の方は、蓮がテント全体を結界で隠していたはず。

 向こうも関係者以外立入禁止で結界も張っていたはずだよ。もちろん防音でね。

 で、テレビ会議のようにして行ったんだ。

 大型スクリーンにお互いが映ってて、ちゃんと会話もできる。

 これ、大吉ができるようにしてくれたんだけど、スゴイよねえ。

 また桃香が「うちの子、できる子」って顔してドヤってたけど・・・。

 お陰で話し合いは上手くいったよ。


 そこで報告し合った内容。

 トラスト辺境伯側からは、イーストウッド国の動きについてだね。

 王都にいるテッドとは連絡を密に取っているんだろう。多分。

 イーストウッド国の前線は、トラスト辺境伯のように領内に樹海がある場所になるだろう。

 僕たちが最初にこの世界に来たときのように、瘴気が増えたり瘴気溜りが各地で次々に発生したりはしてないみたいだけど、樹海から出てくる魔獣の数は増えているらしい。

 だから、各地の辺境伯が頑張っているみたいだ。必要に応じて近隣の領地や王都から支援も行われている。

 これは、王都でテッドが指示を出してるみたいだね。

 そして、もし王都に、討ちもらした魔獣が向かっても、王都に残っている騎士団と聖女の力でなんとかなるだろう。

 ノースランド国も今のところ大丈夫みたいだね。

 あそこはもともと聖なる力を持つ人が多い国だし。


 さて、次は僕の方からの報告。

 サザンウィンド国の王は代替わりしていたよ。

 まあ、エンは代理だったから。

 それでも国がある程度落ち着くまではやってたらしいよ。

 その後は、エンに協力していた狼族から王が出ているみたいだ。

 エンは浮島に戻ったみたいだけど、魔獣の討伐なんかの時には竜人族が力を貸すこともあるみたいだから、ここも大丈夫だろう。

 まあ、当然、浮島も大丈夫だろう。

 センターアルミスト山周辺はインフィニトが守ってるしね。


 で、今、僕たちがいるウェストデザート国だ。

 実は、ここが浮上してきた地底王国に一番近くなる。

 だって、シオンの情報によると、今僕たちがいる樹海の近くにある海の沖合(おきあい)に地底王国が浮上してくる予定だからね。

 1日に何回も小さな揺れを感じてる。

 トラスト辺境伯邸でも、最近小さいものではあるが、地震が続いているって聞いたね。

 シオンの話では、何日かかけて浮上するってことだったから。

 さすがに一気には無理だろう。

 でも、浮上してくる最後は、大きく揺れるかもね。

 僕たちが、地底王国に突入するのは、全体の浮上が終わる前だ。

 終わったら、すぐにでも地上に攻撃を始めそうだからね。始める前に、どうにかしないとね。


 そうそう。この国で、ジョンとマルクたちにも会ったんだ。

 マルクは、大使としてウェストデザート国に来ているんだけど、今僕たちがいる樹海の近くに別邸を持ってたんだ。

 休みの日なんかに来て、狩りをしたり、この地の辺境伯に協力して魔獣の討伐をしたりしてるみたいだ。

 時々は体を動かさないと(なま)るからって。

 狩りには奥さんのジャスミンも一緒に行くみたいだ。


 その別邸で、マルクたちと会うようにしてたら、そこにジョン夫妻とマーカス夫妻もいたんだよね。

 うん?そこに行ったのは、僕と蓮だけだよ。

 シオンはアスル殿とこっそり地底王国に戻って、彼の方の準備をしていたみたいだよ。

 僕の方は、前回この世界に来てから3~4年経ったぐらいなのに、マーカスたちには20年くらい経ってる(前回は、マルクとジョンには会ってないけど)。

 皆ビックリしてたね。テッドやタイガからも聞かされていたはずなのに。

 でも、何で別の辺境伯の所にジョンがいるんだろう?って思ったよ。自分の領地を守ってるんじゃないの?

 だから、聞いたよ。

 そしたら、ジョンの所も今は息子が辺境伯になってるんだって。領地は息子たちに任せて、自分は一番大変そうなここの手伝いに来たって。ここの領主とは昔から親しかったみたいだしね。


 さて、マーカスたちはイーストウッド国の王都からノースランド国、ウェストデザート国へと巡ってきているから、それぞれの場所での話を聞かせてもらったよ。

 彼らはこの後、サザンウィンド国に寄ってイーストウッド国に戻るみたいだ。

 マルクとジョンは、この地でここの辺境伯と一緒に戦うつもりでいるみたいだから、彼らに頼むことにしたんだよ。

 何をって?

 うん。樹海より辺境伯の領地側(海側じゃなくて陸地側だね)に待機して、そこを守ってほしいって。

 僕たちが、浮上してきた地底王国に乗り込んで戦うからね。

 できるだけはこっちで対応するけど、地底王国から出たモノや樹海を越えたモノをお願いしたくってね。

 話し合いは上手くいったよ。


 あとは、・・・そうだった。

 こっちの世界に紛れ込んだ人がいたねえ。

 確認できたよ。

 アスル殿は、「鳥好きのウィル」って言ってたけどね。

 蓮から雪さん経由で冬馬叔父さんに聞いてもらったよ。

 こっちに来るときにいた場所とアスル殿が(あき)れるくらいの「鳥好き」ってことから、何かの研究者じゃないかな~?って思ったんだよ。

 結果は大正解!

 叔父さんによると、多分、鳥類学者のウィリアム・バートンだろうって。知り合いだってさ。

 彼を戻すときは、自分の所に連れて来いって言ってたから、帰りは叔父さんの所に寄る予定だ。

 異世界から来た彼は、こっちの世界では多くの魔力を持ってたみたいで、シオンの叔父さんに捕まって魔道具へ魔力を搾取されていたみたいだ。

 かなり酷使されていたみたいで、弱っていたところをシオンの従兄セルカが保護してくれている。父親(シオンの叔父)には、弱って死んでいたって報告しているらしい。

 その後、少し元気になった頃にアスル殿を見て感激してたって。

 アスル殿は「地底王国の知恵」と呼ばれている賢い鳥さんだからね(ただの鳥じゃないと思うけど)。鳥類学者なら興味持つよね。それも物凄(ものすご)く。

 機会を見つけては、アスル殿に色んなことを聞いてたらしいよ。ホント、物凄い勢いで、って。

 はあ~っ、元気なのはよかったけど・・・。

 頑張って、早く叔父さんの所に戻そう・・・。



 あの話し合いから2日後のことだった。

 辺りが薄暗くなってきた頃、大きな揺れを感じたんだ。

 その後、ゆっくりと海上に地底王国が浮かび上がってきたんだ。


 「ほへぇ~、ホントに浮かび上がってきたよう。」


 僕たちは地底王国だとわかっているけど、知らなかったら急に島が現れたようにしか見えないだろう。

 外側から見たら、大半が岩山の島にしか見えない。

 地底王国は、あの岩山の内部にあるそうだ。

 そのうち、あの岩山のどこかから魔獣や地底王国軍が出てきて、地上の国々に攻撃を始めるはずだ。

 その前に、こちらが先に(たた)かなければ。

 僕は、すぐに蓮に乗って地底王国に向かった。

 今朝こちらに来ていた桃香も桐葉に乗って、僕の後に続いている。

 シオンは、昨日から地底王国に潜伏している。

 もしかしたら、もう攻撃し始めているかもしれない。

 急がなければ・・・・・・。



 岩山の割れ目を見つけて中に入ると、内部では既に争いが起こっていた。


「叔父上、もう好き勝手にはさせませんよ。」


 「シオン・・・小癪(こしゃく)な!

  だが、ここでお前が死ねば俺が王になるのを邪魔する者はいなくなる。

  お前は、今日ここで死ぬのだ。

  俺の魔力となるがいい!」


 王弟が手にしているのが、例の魔道具なんだろう。

(呼び方は「王弟」でいいよね。シオンの叔父は、まだ王とは認められてない。シオンの死も確認されてなかったし、生きていると知っている者もいたからね。それに、アスル殿に認められないと王にはなれないらしい。なぜかまでは、教えてもらえなかったけど。)


 「兄様、兄様っ・・・」

 桃香が小声で話しかけてきた。


 「うん?何?」

 僕も小声で答える。


 「あのさぁ、兄様は手助けなんだからさ、あんまり前には出ないで、シオンの魔力が吸われないようにすることと、私に来る攻撃を防ぐことに専念してね。

  ああ、それとぉ、合図するから最後にあのティーポットみたいなヤツ、()(ぷた)つにしてねっ。」


 「了解。(確かに!あの魔道具、ティーポットのような形をしているね。)

  でも、あの魔道具の方は、桃香だけでホントに大丈夫?」


 「大丈夫、大丈夫、桃香に任せなさいっ!

  兄様の力は何かあった時に備えて、ある程度は残しておいてよ。」


 「わかったよ。」


 僕と、人の姿になっている蓮は、シオンの後方につき、シオンの補佐と桃香の守りをしつつ、敵の数を減らすことにした。

 シオンとアスル殿が一緒に現れたことで、地底王国の軍が動かないことになった。王弟には軍を動かす権利がないってわかったからね。

 これで大分楽になったよ。戦う数がかなり減るからね。

 桃香は桐葉に乗ったまま、上空から魔道具に力を注ぎ始めた。


 「フッハハッ・・・これに魔力を注ぐとは愚かな!

  シオンよ、お前の仲間はバカなのか?」


 王弟は、桃香の行動を見て笑っているが、愚かなのはお前だよ。

 桃香は、「力を注いでいるからと攻撃が減って、チョーラッキー」としか思ってないよ。

 桃香は地底王国の人々を見て、力の調整をしていた。

 量じゃなくって質のほうのね。

 桃香は、力の成分(?)を調整できるようになったらしい。

 最初に聞いたときはビックリしたよ。蓮も呆気(あっけ)に取られたような顔をしていたから、多分普通にできることではないのだろう。

 桃香は、愛用の扇子「珊瑚」を手に、その先端から力を出して魔道具に注いでいる。

 あの魔道具、今は(ふた)の部分が開けられているけど、多分あそこから吸い取って、注ぎ口から自分に取り込んでいるんだろう。時々、自分にかけるようにしているからね。

 でも、桐葉は一番最初に、その注ぎ口に結界を張って魔力が出ないようにしてたんだけど、気付いていないのかな?

 そして、今日の桃香の力は時間差で威力を発するようになっているそうだよ。

 んっ?だよね。

 桃香によると、普段の力のままだと魔道具の中の瘴気を浄化してしまうから、その分中身の量が減ってしまい、あれを壊すには減った分桃香の力が多く必要になるんだって。

 だから、最初はただの力だけにして魔道具にひびが入って外に漏れ出す時に神気が出るようにしてるって。

 何か、僕には理解できないんだけどね・・・。


 「ついでに今回はオプションも付けてみました~。

  シオン側の人から吸い取った魔力は、本人にもどしま~すっ。」


 「 ・・・・・・? 」


 桃香が何を言っているのか、一瞬わからなかったよ。

 まあ、魔力には個人差があるって聞いたことはあったけどね。

 シオンの味方をしていることがバレた人が、王弟によって魔力を搾取されているって話をしたからかな。

 セルカのお陰で死んではいないけど、大分弱っている人が何人もいるみたいだからね。

 そういえば、ウィルもだったね。


 ただ、あの魔道具、改善されて(今の僕たちには改悪だけど)相当量の魔力を蓄えられるようになってるはず。

 桃香は本当に大丈夫だろうか。


 「うーん。もうそろそろのはずっ。ふんっ。」ピシッ

 「やったねっ。

  シオン、兄様っ、今だよっ成敗(せいばい)っ!」

(ううっ・・・もう限界だようっ。頭痛いし、眠いしっ)


 「おっ?おうっ」「わかったよ」


 シオンは、魔力が供給されず弱ってきていた王弟を一刀両断(いっとうりょうだん)に切り捨て・・・はせず、()()えた上で捕縛(ほばく)した。

 きちんとした形で罪を問い、罰するつもりのようだ。

 僕は、魔道具を真っ二つにしたけどね。

 魔道具からは、それまで蓄えられていた魔力が辺りに飛び散った。

 その中の一部は、桃香が言っていたように持ち主に戻って行ってるようだ。

 残りは、桐葉と蓮によって外に流されていく。

 風を使って地上の世界を流れ、浄化したり()やしたりするのだろう。

 桃香は・・・・・・桐葉の上で寝てる?うん、あれは寝てるね。


 「柊、桐葉が桃香を連れて先に戻るってさ。」


 「うん、わかった。僕たちも戻ろうか。」


 僕はシオンに挨拶して戻ろうと彼の方に近付いていった。

 そこでは、アスル殿が王弟に向かって何か言っていたんだ。


 「お(ぬし)はシオンを殺せば王になれると思っていたようだが、王であった兄を殺した時点で王になる資格はなくなっておる。」


 「なっ、そんなバカな・・・」


 「嘘だと思うなら、このカードに(さわ)ってみるがよい。

  触れるなら、な。」


 いつの間にかアスル殿は、黒いカードを(くちばし)(くわ)えていた。そして、そのカードを王弟の手の上に置こうとした・・・。


 バチッ 「痛っ」


 カードが(はじ)かれたように手から落ちるのを拾って、アスル殿は今度はシオンに渡した。

 シオンは弾かれることなく、カードを手に持っている。


 「このカードは、王の間の鍵だ。

  これに触れない者は、王の間に入れない。王にはなれないということだ。

  それでも無理に王の間に入ろうと、入口を壊せば・・・その時は地底王国が消えてなくなるだろうよ。」



 僕は彼らの話が終わるまで待って、シオンに話しかけた。

 そしたら、シオンと傍にいたアスル殿から、何度も感謝の言葉をもらうことになった。

 その後、僕と蓮は地底王国からウェストデザート国に戻った。

 ただ、出る前に、シオンがこっそりと「後で樹海に行くよ」と言ったんだ。

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