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異世界の管理人  作者: 東風
第3章
52/54

52 さっさとやってしまおうよぉ~ Ⅰ


 「いっただきま~すっ」


 パンッと手を合わせて朝ご飯だ。

 んーむっ、前回よりもメニューが豊富になっているような・・・・・・。

 美味しいものが増えるのは大歓迎だよっ。


 「桃ちゃん、美味しいかしら?」


 「(ゴックン)美味しいですよ。

  前回こっちに来たときよりも種類も増えてるし。」


 「そう、良かったわ~。

  向こうとは、食材も調味料も違うでしょう。

  桃ちゃんは、美味しいものが大好きだから、口に合うか心配だったのよ~。」


 「うーん、ハヤトの影響なのか、シルヴェスト公爵家の料理は、元の世界に近いのがあったような・・・。

  それに、初代王が転生者のせいか、王家のにも近いものがあったような・・・。家族だけの食事の時だけって料理に。

  でも、彼らは自分で料理をあまりしなかったのか、あっちだったら誰でも知ってる、誰でも作れるようなものだけだったような・・・?」


 「ほほっ、そうじゃな。

  隼人は自分で料理はしたことがないはずじゃ。

  あの時代の男は、台所に入ることは、ほぼなかったからのう。

  まあ、山での訓練で飢えないために、ある物で何かは作れるだろうが、味の良し悪しは二の次だからの。」


 「だろうね~。

  だからなのかな?食文化は、あんまり発展してないような~。

  もっと美味しいものが増えるといいのに。」


 「そうよね~。そこも、がんばるわ~。」


 「んー?そこもがんばる?」


 「ふふっ、後で領内を案内するわね。

  多分、前よりも変わっているはずよ。」


 「へー。(20年経ってたら、普通は発展するよね?)

  楽しみー。 ・・・ (うん?あれって)

  ねえ、あれ!ハンディファンに見えるんだけど。」


 「あら、気付いた?

  あれね、前回来たときに柊ちゃんが作ったらしくって、あの後、王都で大流行したらしいわよ。」


 「ええーーっ。じゃあ、あれがあの時、兄様が作った魔道具なの~?」


 「ふふっ、そうみたいね。」



 まさか、今ここで、あの時兄様が作っていた魔道具の正体を知ることになるなんて・・・・・・。

 あの時は、なぜかっ、教えてくれなかったんだよねー。

 ハンディファンだったとは、・・・何か微妙。


 朝食後、サクラちゃんたちと領内の見学に出かけた。

 ふっふっふ、私の色は、プラチナの髪と水色の瞳に見えるようにしている。聖女の色は目立つもんねー。


 「ふーん。前よりインフラが整備されてるんだー。」


 「ふふっ、わかった?」


 「うん。前は領の中心部だけは道もよかったけど、少し外れると和国の昔の農道みたいな感じだったよねー。

  舗装(ほそう)されてなくてガタガタなの。

  水も井戸水や湧き水をくんでたし。

  ハヤトや初代王の知識があったから、衛生には気を付けていたっぽいけど、平民の生活ってあんまり便利になってなかったよね。

  貴族たちは魔法が使えるから、自分の魔法で快適に過ごせるし、使えない者のことってあんまり考えてなかったんだろうね。」


 「多分そうね。」


 「貴族の中にも、魔法が使えない人もいるんでしょ?」


 「いるわね。そんな人は、どんな家に生まれるかで違うわね。

  その人のことを考えて魔法が使えなくても快適に過ごせる環境を整える家もあるし、出来損(できそこ)ないって冷遇(れいぐう)する家もあるわね。」


 「そうだよね。

  でも、誰でも過ごしやすい環境の方がいいよね。

  突然、魔法が使えなくなったらどうするんだろうね。」


 「そうよね。」


 「あれっ?学校もあるの?あれ、学校でしょ。」


 「あら、わかった?

  前は、魔力がない人や貴族ではない人が学べる所がなかったから、作ることにしたのよ。

  ううん。正確には“学校がなかった”よね。

  隼人叔父さんが治めていた、シルヴェスト公爵家の領地では、割と早い時期から平民に文字の読み書きや計算を教えていたみたいね。

  でもあの頃は、まだ国内も領内も大半は内乱からの復興の途中だったでしょ。

  被害が少なくて、早く復興できた所ではできたでしょうけど、食べていくのが先って所では難しかったみたいね。

  その後、遅れていた所でも取り入れられるようになっていってたみたいだけど、ほら、桃ちゃんたちが一番最初にここに来ることになった頃は、国が滅ぶかもって状態だったじゃない。

  あれで、また後退したみたいよ。

  だから、やっとって感じよね。」


 「うん。いいんじゃない。

  文字の読み書きや計算って大事なことだよね。

  知らないと騙されて、損することにもなるしね。

  教育は、仕事に就くためだけじゃなく、自分を守るためにも必要だよね。

  どこまで学ぶかは、自分が生きていくために、どこまで必要かで決めればいい。

  学べるって、本当は贅沢(ぜいたく)なことなんだと思う。

  学べるのが当たり前の環境にいると、勉強させられてるって、不満に思っている者もいるけどね。」


 「ふふっ、そうよね。

  今は、基礎的な内容だけなんだけど、数年後には、もっと高度な内容まで、ここで学べるようにするつもりよ。

  ほら、見て。あの子たちは、今まで学びたくても学べなかったから、楽しくてしょうがないみたいでしょ。」


 「だね。目がキラキラしてる。

  ねえ、給食みたいなものもあるの?」


 「勿論(もちろん)あるわよ。

  朝ご飯と昼ご飯を出しているから、家の人が学校に出してくれるってところもあるのよ。

  学校に行かせれば、その分、家で食費がかからないでしょう。

  経済的に苦しくて、1日3食食べられない所も結構あるのよ。

  もっと領内に働く場所も必要よね。」


 「そうだねえ。今は、どんな産業があるの?」


 「そうねえ。

  まずは、食の確保ってことで農業、それから林業と関連して木工品の製作販売、それと魔獣から取れる魔石や物を売ってるわね。

  ここは樹海があるから、魔獣が他の場所よりも多く出るのよ。」


 「そっかー。

  なら、魔獣の皮を使った皮革(ひかく)製品を作ってもいいし、魔石が多いなら魔道具を作るのもいいんじゃない?

  マジックバックなんか高額で売れそう。

  元の世界にはあったけど、こっちにはない便利グッズなんかもいいよね~。」


 「あら、いいわねえ。

  そうよね。素材は色々あるんだから、考えればできそうな物があるわねえ。

  トラたちとも話してみるわ。」


 「うん、そうしたら~。

  にしても、『トラ』って呼んでるんだね。」


 「ふふっ、私たちの中だけではね。

  ああっ、そうだった。魔道具で思い出したわ。

  柊君の魔道具からの利益をどうするか、聞こうと思ってたんだったわ。」


 「んー?」


 サクラちゃんによると、兄様が作った魔道具、ハンディファンが大ヒット商品になり、利益がかなり出ているらしい。

 何か、前回学校に行くときに名前を借りた、シルヴェスト公爵家の親族が持っている商会から、ハンディファンは売り出してもらったんだって。

 兄様にしてみれば、名前を借りたお礼ってことだったんだろうけど、これが予想以上に売れたんだな。

 親族の方でも、全部の利益をもらうのは多過ぎってことで、売り上げの何割かをシルヴェスト公爵家に渡してたんだって。

 シルヴェスト公爵家では、それを兄様のために預かっていたみたいだ(また、来るかもしれないと思って)。

 そのお金を、どうするかってことみたいだけど、兄様なら「こっちで有効活用して」って言うと思うけど。

 サクラちゃんには、「兄様に聞けば~」って言っといたよ。


 それにしても、兄様、前回来たときに、ハンディファンを作る以外にも色々やってたみたいだ。

 樹海に行けなかった代わりに、シルヴェスト公爵家の王都邸にも手を加えてた。

 生活用水の浄化や屋敷の中を快適温度に保つこと、などなど・・・。

 その方法は、今のシルヴェスト公爵家本邸やトラスト辺境伯邸にも使われているらしい(こっそり王宮の一部にも)。

 それも魔道具にして売り出せばいいんじゃないのー。

 あー、それとあれ、馬型の魔獣も王都までの馬車に使ってもいいと思うな。普通の馬より早くなるでしょ。

 シオンは、トラムを欲しがってたなあ。

 ここら辺も、曾お祖父様ならもう考えてそうだけど(おっと、タイガだったよ)。


 タイガが現トラスト辺境伯なら、マルクは?今、どこで何してんの?って思ったら、彼は今、大使としてウェストデザート国に奥さんのジャスミンを連れて行っているみたいだよ。

 トラスト辺境伯家はマルクが正式に継いで、シルヴェスト公爵家から分かれている。

 シルヴェスト公爵家としては、公爵家の領地だけでも結構広いから早く分けたかったみたいだ。

 で、次男のマルクにってことになったんだろうね。

 マルクも長男のテッド同様、領地経営も領地の騎士団の指揮もできてたからねえ。

 でも、もともとやりたかったのが外交だったみたいで、さっさと息子タイガに辺境伯を継がせて、自分は大使として国外に出たみたい~(あら~)。

 ウェストデザート国で兄様とも会うんじゃないかな~。


 テッドも元気かな~?って聞いたら、テッドはシルヴェスト公爵兼宰相らしい。あら~、マーカスさんと一緒ね~。

 引退したマーカスさんとベルタさんは、今、アルミスト大陸を旅行中らしい。ノースランド国からウェストデザート国、サザンウィンド国と巡る予定みたい。浮島はさすがに無理だろうね。

(ただ、これ、実際は浮上してくる地底王国についての対策を共有するための特使みたいだね。)

 そろそろウェストデザート国なら、こっちも兄様と会うんだろうね。

 テッドの跡取りは、王立学院の入学前みたいだから引退はまだまだ先だねえ(ガンバレ)。

 サクラちゃんの弟は10歳なんだって。

 「サクラちゃんが跡取りでもよかったんじゃない?」って聞いたら、跡取り娘で婿取りは2回経験したから、今度はお嫁に行ってみたかったんだってさ(中身はあんまり変わらないと思ったけど、黙っていたよ。私は空気読める子)。



 「サクラちゃんは、いつ前世のことを思い出したの?」


 「ああ、それね。7歳の時に思い出したのよ。

  ある夜、夢の中で見て、目が覚めてからも覚えていたのよ。

  それで、ずっと近くにいたキクが、お菊だったこともわかったの。

  キクに聞いたら、7歳になったら思い出すようになってたみたいね。

  トラもそうだったって言ってたわ。」


 「へーー。前はどうだったのー?」


 「前はその前と同じ神代の巫女と冒険者だったでしょ。

  だから、何かの神事のときや冒険者の補佐をしているときに、『あれっ?これ、前もやったことあるわ。初めてなのにおかしいわね。』って思うことが何回かあってね。

  お菊に話したら、教えてくれたのよ。」


 「ふーん。そうだったんだー。

  ねえ、サクラちゃんたちの前世が、カミシロの者だったって、テッドは知ってんの?」


 「知ってるわよ。デーンが話したみたいね。」


 「へー。それでよく、絶対跡取りにって言わなかったねー。」


 「言ってたみたいよ。

  でも、デーンやキクが止めて、説得したみたいね。」


 「ふーん。そうなんだあ。よかったねー。」


 「ホント、助かったわー。

  そういえば、桃ちゃんのお金は今でも増えることがあるの?」


 「んー?あるみたいよー。今は、時々、紅葉がチェックしてくれてるけど。」

(あっ、そうだ!紅葉は今こっちで、キクから何か教えてもらってるんだっけー?木彫りの狐を通して、こっちでのことを連絡してたら、今朝来てたんだよね~。緑姉(みどりねえ)に頼まれたこともあるからってメモ持ってさ。)


 「増えてたら、今はどうしてるの?」


 「前と変わんないかな~。」


 「何か自分が欲しいものを買ったりはしないの?」


 「んー・・・特に今、欲しいものはないかなあ。

  必要な物はあるし。

  それに、私は物がゴチャゴチャあるのはイヤなんだよねぇ。

  使わない物を買ってもゴミになるだけでしょ?

  もったいないよ。

  それなら、必要なところに使ってもらった方が有効に活用できるでしょ?」


 お金は大事だとは思うけど・・・・・・。

 もともとは物々交換(ぶつぶつこうかん)してたのが、物が大きかったり重かったりしたら不便(ふべん)ってのもあって代用するモノとして出てきたのが「お金」だよねー。

 お金の価値って、国や時代によっても変わるよねー。

 昨日まで価値があったモノが、今日はただの紙くずってこともあるし。

 実体のない幻のようなモノとも言えるんじゃないの?

 私は、それに振り回されすぎるのはイヤなんだよ。

 お金の価値は認めているけど、私はもっと大事なのは現物(げんぶつ)って思ってるからね。

 本物の食べ物や生き物や田畑や山なんか・・・。


 そういえば、今日は、タイガとアンバーたちは、辺境伯の騎士団を連れて樹海へ行ってるそうだ。

 ここ最近、以前より魔獣が増えているってことで、討伐に行っているらしい。早めに対処しているんだろう。後のことを考えれば、数は減らした方がいいよね。

 今晩辺り、兄様から連絡もあるだろうから、私も準備しとくかな~。

 できることからやっとかないとね~。


 さっさと終わらせて帰るのだ!

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