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異世界の管理人  作者: 東風
第3章
45/46

45 便利なのは・・・?


 「桃香は、まだ戻って来てないのかな?」


 「もうすぐ戻って来るんじゃないかな。さっきあの曲が聞こえていたからさ。」


 「・・・あ~、あの曲ね(苦笑)。」


 ここ最近の桃香のお約束で、箏の練習の最後には必ずある曲を演奏しているのだ。

 ある時代劇の、ギターで演奏されているエンディング曲を箏で(かな)でるのだ。

 桃香の気分によってなのかもしれないが、日によっては奏でるというよりかき鳴らしているって感じの時もあるねえ。

 この曲を奏でることで「私の今日の練習は、これで終わりだからねっ。」ということを周囲に知らしめているらしいのだ。

 何でそうなった!?って思うよね。

 僕もそう思った。

 桐葉に聞いて「あ~・・・ねぇ」とも思ったけど。


 桃香は、お祖母様が箏を生徒さんたちに教えている日に一緒に練習していることが多かったんだ。

 緑さんがお祖母様の補助役として付いてはいるけれど、桃香や紅葉も準備の手伝いをしているから、桃香はついでに部屋の端っこで自分の練習もやってしまおうと思ってたみたいだ。

 ところが、先日、事件(桃香にとっては、だけどね)が起こった。


その日は、たまたま始めて間もない生徒さんが多かったみたいだ。

 だから、練習もたどたどしく質問する人や個別指導が必要な人も多かった。

 それで桃香も教える方に()()された。

 桃香は助教(じょきょう)の資格を持っていたから、一応教えられるんだよね。

 で、桃香が終わる予定だった時間を過ぎても抜けられなかった。


 その結果、居間に戻って来る時間が遅くなって、楽しみにしていた時代劇の途中から見ることになってしまったんだよ。

 僕が見たのは、膝に抱えた大吉の頭に(あご)を乗せながら「うぅ~」と(うな)りながら少し涙目でテレビを見ていた桃香の姿だ。

 その後、続けて録画で再度最初から見て、黙って晩ご飯を食べていたな。

 お祖父様は、桃香を心配そうに見ながら近くをウロウロしていた・・・。

 その時の様子を後で聞いたお祖母様が桃香に悪かったと思ったようで、桃香がお祖母様たちに分かるように合図(あの曲の演奏ね)を出し、終了時間が遅くならないようにしたってわけだ。


 しばらく待つと、桃香が居間に戻って来てテレビの前のソファーに座った。

 時代劇が終わるまでは、あまり話しかけないようにしないとね。

 まあ、話はご飯を食べながらでもご飯後でもいいからね。

 最近のわが家では、僕たちが学校から帰ってきて軽く夕食を取り、その後、それぞれ稽古なんかをして、また軽く夜食を食べて各自部屋に行くようになっている。

 そうすると、夕食か夜食で家族全員と話す時間が確実に取れるんだよ。

 僕と桃香は、まだまだ成長期だから少し何かするとす~ぐお(なか)()くしね。


 「桃香、今年の宿泊研修は今月末にしてたっけ?」


 「うん、そうだよ。兄様もでしょ?」


 「うん、そうだよ。じゃあ、今年も一緒だね。」


 「うん。でも、兄様はしなくてもよかったんじゃなかった?全部終わってるでしょ?」


 「うーん、そうなんだけどね。ちょっと頼まれてね。」


 「ふーん。そうなんだあ。大変だね。」



 僕たちの学校には、必修科目の中に「生活」という科目がある。家庭科の中にあるんだけどね。小学部から高等部まで履修するようになっているんだ。

 内容は日常生活のアレコレだね。

 この科目の変わっているところは、年に最低1回以上は宿泊研修を行わなければならないところだ。

 宿泊するところは学校の寮や学校に協力している領内の各場所ということになる。

 まあ、学校の寮が一番多いけれどね。

 今年、僕と桃香が宿泊するのも学校の寮だよ。


 学校の寮は、一応全生徒が入寮できる部屋数がある。

 大学部用の寮もあるけれど、そっちは全員分はなく、大学部の方にあるから場所も少し離れているよ。

 寮は棟が何棟かあって、男女別の棟になっている。

 でも、僕たちのように自宅から通学している生徒もいるから当然()いている部屋もある。

 そこはもったいないって思う人もいると思う。

 まあ、空いている部屋は活用できる時は、寮以外の方法で活用してもいるけれどね。

 どんな風に?って思うだろ?


 まずは、寮の位置ね。

 学校の寮は、どの地区(南区は当然違うよ)も全て中央区に近い方に建てられているんだ。

 そして、そしてどの地区でも学校の寮と中央区との間に大学病院や総合病院がある。

 だから、学校の寮の空いている部屋は、官公庁や病院で働いている人が泊まったり、病院に入院している患者さんの家族が泊まったりするホテル代わりとして活用されることもある(ホテルより安く泊まれるからね)。


 学校の寮は、入寮者は学校に近い方の棟から入れるようになっているから、空くのは病院や中央区に近い方になるからね。

 まあ、でも、生徒と一般の人はできるだけ一緒にならないようにってことで、棟や階(上の階が生徒で下の階が一般の人ね。そして、行き来できないようにもできるんだよ。)で分けているね。階段やエレベーターも分けるため、それらは棟の左右にそれぞれ作られている。入り口も学校側と中央区側にあるしね。


 少し横道に()れてきたかな?

 じゃあ、戻して・・・っと。

 「生活」科の実習には、ホント色々なモノがある。

 寮の中でなら、規則正しい生活ってことで、自分で起きる(目覚ましの使用はOKだよ)ことから夜更かしをしないこと。自分が使っている布団の片付けや部屋の掃除をすること(部屋にやり方は表示されている)。寮内での過ごし方(挨拶も含め、入浴や食事に関することなど)・・・等々。


 日常生活に関することは一応全部自分でできるように、と試験があるんだ。

 入浴については、部屋(全室1人部屋)にはバス・トイレが付いているから、その使い方だね。

 掃除の採点はねえ、掃除後すぐに僕たちの目の前でお掃除ロボット君がやってくれるんだよねえ。ダメだったり不十分だったりしたところをやり直しながら・・・。勿論良かったところは()めてくれるけどねぇ。

 だから、すぐに合否もわかるよ。


 大浴場なんかの使い方は、寮内とは別に温泉地に行って、温泉の入り方で見られるからね(ここの採点は、温泉旅館の人とかだね。誰が採点しているかは生徒にはわからない。結果は直接学校に伝えられるね)。


 そういえば、昨年はシオンも一緒に寮に宿泊したな。

 温泉地に行って、入り方の試験も受けてた。

 神代家のお風呂で温泉の入り方も知っていたから1回で合格していたよ。お湯の感じが違ってたって、何か楽しかったみたいだ。


 食事については、最初はお(はし)の使い方から食後の片付け、食器洗いや料理を作るまである。

 個人で取り組む内容とチームで取り組む内容があって、進んだ段階によって変わってくるね。


 寮外の実習としては、さっき触れた温泉の入り方(これは、年齢によっては目的地までの行き来の仕方も含まれることがあるよ。当然だけど保護者の送迎はダメ!自力でだよ。)の他に、予算内で買い物(お金と品物が書かれた紙を渡されるんだよ。)をしてくること(時間制限あり)、構内の農地で野菜の収穫の手伝いをしてくること、ってのもある。

 まあ、年齢や進度に合わせて取り組む内容は違ってくるね。

 これは、必修ではなくて希望すれば、なんだけど、家庭菜園についても初歩から教えてくれるよ。

 生徒の中には、仲間たち数人と畑を借りて野菜を育て、収穫後は売って収入を得ている者もいるんだよ。


 ああ、この「生活」の授業もできる生徒はどんどん先に進めるし、逆に試験に合格できなければ再試験を受けることになる。再試験は年3回までだからダメだったら、再履修することになるね。

 それと、合格しても再試験を希望する者もいるよ(これは、できない科目もあるよ)。

 例えば、1回目の評価がBだったとしたら、もう1回チャレンジしてAを取りたいって思う生徒がいるってことだね。

 ただ、合格している場合は2回目の試験からは有料になる。不合格者も再履修となったら試験は有料になるからね。

 いくら学費が(ただ)だとしても、何回も不合格はやっぱりダメでしょ。


 で、僕は一応一通りは単位の修得済みだから、ホントは寮にも宿泊する必要はないんだよね。

 ただ、桃香が宿泊するから心配なのと、ちょっと頼まれたことがあったからねえ。


 桃香の今回の実習内容?

 んー?と確か飯盒炊爨(はんごうすいさん)じゃなかったかなあ・・・?多分ね(「うん。正解だよお」)。

 いつも一緒にいる4人のチームで取り組むみたいだね。

 飯盒でご飯とおかずを作るのは、メニューをちゃんと考えておかないと大変だよね。

 さて、桃香はちゃんとできるかなあ。

 様子はこっそり見に行くけどね。



 「さあ、ちゃちゃっと作って食べるよー。」


 「「「 はーいっ。 」」」


 今回の「生活」科の試験は飯盒炊爨!チームで行う。

 私のチームは、紫乃ちゃん、舞ちゃん、夏樹ちゃんと私の4人だ。

 メニューはカレースープ、ご飯、サラダ、ベーコンエッグだ。

 デザートもある。チョコムースだ。ただし、これは審査の対象には入れてない(デザートは入れても入れなくてもいいのだ)。

 がんばるぞーっ!


 別に宿泊は必要なくない?って思うけどさ、何か最低年1回は自分で身の回りのことを全て自分でやるようにするんだってさ(学校の方針?)。

 ついでに退化していないかも見られるんだって。

 まあ、既に合格した内容が不合格になるということはないが、指摘されたり注意はされたりはするねえ。


 さて、飯盒炊爨の場所だ。

 寮の管理棟の裏にキャンプ場の炊事場みたいなのがあって、そこでやるのだ。

 道具は管理棟から借りてくることになる。

 材料は、メニューと一緒に必要な物を書いて提出しておけば準備してもらえるのだ(予算内でだよ)。

 申請して許可が下りれば、家からの持ち込みも可だ。

 ただし、便利グッズは不可となることが多い。

 「自分でやる」ことが基本だからだ。


 準備ができたら、早速始めよう。

 料理の下ごしらえは皆でやった。

 ご飯の準備は私と夏樹ちゃん。カレースープは紫乃ちゃんと舞ちゃん。

 私は米とぎだけして、火の準備だ。

 薪や小枝や葉っぱを準備して、火をおこす。

 フッフッフッ、マッチ等は使わないでやるよん。木の板と木で作った棒を使って火をおこすのだ。

 見よ!この早さ!煙が出てきたよ~ん。(よかった~。鴉天狗たちと練習した甲斐(かい)があったよー。)


 「桃ちゃん、すご~い。」「「うん。うん。」」


 (かまど)2カ所に火を移し、小枝や葉っぱから薪へと火を大きくしていく。


 「もうそろそろ、火にかけてもいいよ~。」

 「「「 はーい。 」」」


 ご飯用の飯盒2つとカレースープ用の飯盒2つを火にかける。

 沸騰するまで待つ間に、サラダを作っていく。

 洗ったレタスをちぎり、ミニトマトのヘタを取る。

 そして、仕切りのあるプレートにサラダを盛りつける。 プレートには、ベーコンエッグとご飯ものせる予定。

 後はスープをカップに入れて、夏樹ちゃんが持ってきてくれたチョコムース(パパさん作)を添えて完成だ。

 炊き上がったご飯は、しばらく()らしておく。

 カレースープは具が煮えたから、今、紫乃ちゃんと舞ちゃんが味つけと調整をしている。

 じゃあ、私と夏樹ちゃんで飯盒の内ぶたでベーコンエッグを作るぞー。


 「「 スープ、できたよー。 」」

 「「 こっちも、できたー。」」


 「じゃあ、食べよっかー。」

 「そうしよう。」「「うん。」」


 「「「「 いっただきまーすっ。 」」」」

 「美味しーい」「うわ、うまっ。」「幸せ~」「うん。」


 私たちは、作った場所のすぐ近くにあるテーブルで早速食べ始めた。

 私たちは皆、できには満足していたよ。

 (プラス)1食分は先生に渡したから、今頃管理棟の中で審査中かも(一応チョコムースも付けた)。



 僕は男子棟の方から桃香たちの様子をこっそり見ていた。勿論、ずーっと見ているわけにはいかないから時々だよ。

 でも、火からおこしていたのにはビックリしたよ。

 「さすが、桃香」とは思ったけど、先生は別にそこまでは求めていないと思うよ。


 まあ、家には色んな便利グッズがあるから、昔に比べると今は確かに家事も楽になってはいるだろう。

 冷蔵庫、電子レンジ、食洗機、フードプロセッサー、お掃除ロボット、洗濯機・・・等々。

 時短になり、その分時間も有効活用できる。


 でも、便利グッズを使えない状況もあるんだから、色んなやり方を知っておくことは大事なことで、無駄なことではないだろう。

 いざという時、どんなことで生死を分けることになるかもわかんないしね。


 僕が魔法のある異世界で思ったこと。

 魔法は確かに便利だけれど、それがあることによって、それに頼ることによって変わらない、進化しないのであるならば、それは不便なのかもしれないってこと。

 魔力の無い人もいるのに、その人たちにとっては生きづらい世界に僕には見えたんだよ。



 まあ、この便利になった僕がいる世界も、皆が幸せかっていうと・・・・・・?って思うこともあるけどねえ。    

あと何話か続きます。

ここに来て、書いては消し、書いては消しを繰り返し、進みが遅くなってます。

あと少し、がんばります。

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