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異世界の管理人  作者: 東風
第3章
43/46

43 うん。またね~ ・・・ んっ?


 「シオン、準備ができたら行こう。」


 「うん。お待たせ。」


 今日、僕とシオンは父様の会社見学だ。

 蓮は人の姿で僕の近くにいるし、アスル師はシオンの肩に止まっている。


 月日が経つのは早いもので、シオンがこちらの世界に来て、半年が経とうとしている。

 この間、シオンは師のアスル殿から学ぶだけでなく、こちらの世界からも色々なことを学ぼうとしていた。


 まず、シオンは龍頭領の学校というものに行ってみたいと言い出したんだ。

 アスル師は「ふむ。それもよかろう。」とおっしゃっていたが、師の教えを受ける時間も必要だったので、通信制で学ぶことになった。


 僕と桃香が通っている青北学園は通信制もある。

 小学部の低学年は通学するようになっているが、病気等で通えない場合は通信制で学べるようになっている。この場合は、通常のスクーリングとは違って先生が定期的に家を訪問して対面授業が行われている。

 身体が不自由な人は、学校に通える人は一緒に学んでいるよ。受ける授業は身体の状況や各教科の進度状況によって違うけれどね。

 これも創立当初から変わらないみたいだ。

 同じ領でずっと一緒に生活していくのだから、学校も一緒にしてお互いにできることできないことを学んだがいい、ということらしい。

 まあ、誰にだってできることとできないことがあるよね。

 皆にとって生活しやすい環境って何だろう、って考える機会にもなるんじゃないかな。

 それに誰だって、身体が不自由になることはあり得ることだ。病気や事故、年を取って老いてもね。

 小学部の高学年からは通信制に変わることも可能だ。

 どうしても他人と一緒に学ぶのが苦痛で慣れないという人もいるからね(特に他の領から転校してきた人なんかに多いね)。でも、本人が希望すれば通う形に変更することもできるよ。そこは柔軟に対応してもらえる。


 シオンが通信制を選んだのは、他にも理由がある。

 それは体質かな?

 シオンは地底王国で生まれ育っているから太陽光に全く慣れていないんだ。

 シオンはスゴく色白で、瞳は透き通るような紫色だ。

 だから、アスル師はシオンの肌色を少し濃くし、瞳も黒に近い濃い紫に変えていた。痛まないようにとの配慮だったんだね。

 それもあって年数回のスクーリングでいい通信制にしたんだ。

 時間も自由に使えるから、アスル師からの講義の時間以外はお祖父様たちから体術を学んだり、シオンの所とは別の異世界に桐葉や蓮たちと行って戦う訓練をしたりしていた(桐葉や蓮がいない時、僕たちには大吉や紅葉が付いていてくれるしね)。


 こっちの世界は地底王国とは全く違うから、シオンにとっては興味深かったみたいだ。

 こっちには魔法がないしね。



 「今日は、よろしくお願いします。」


 「おっ、来たね。

  この会社は、どこでも自由に見て回っていいよ。

  柊は何回も来ているから案内は任せてもいいね。

  君たちが見学に来ることは皆知っているからね。」


 「はい。任せてください。」


 蓮と桐葉は、人の姿になって会社で北斗さんの手伝いをすることもあるから、会社の人も知っているしね。

 今日の蓮は、きちんとした格好をした、仕事もできそうな20代の青年って感じだ。僕たちの引率者に見えるね。


 じゃあ、早速見て回るかな。

 ここは、(株)KAMISHIROの本社ビルだから結構広いんだよね。全部見るのは大変だから、シオンの希望を聞いて計画を立て、父様にも伝えている。

 昼食は会社内にある食堂で。混む時間帯は()けるけどね。

 この会社は、一応仕事内容は各部に分かれているし、何階にどの部があるってのも一応は決まっているんだけど、各階違う(おもむき)で作られているから、その日の気分で好きな場所で仕事をしていいんだよね。

 仕切りや柱もできるだけ少なくされているから、ホントに部屋の向こうまでよく見えるよ。

 机や椅子は各階の趣にあったモノってのもいい。

 部屋は広いし、ゴチャゴチャ物もないから、動かしやすい机や椅子をちょっと動かせば話し合いもしやすいしね。終わったら、また別々にしてそれぞれの仕事ができる。

 他の部の人とも情報交換しやすいみたいだよ。

 父様や北斗さん、夏海叔父さんたちもここら辺で仕事していることがあるよ。

 たま~に、エイダンもいることがあるんだよね。

 なぜ、ここに?って思ったこともあったけれど、何か周りももう慣れてるみたいだった。


 このビル、1階にはアンテナショップや託児所、クリニックなんかがある。

 2階はペットと働けるようになっている(この階だけね。ここは何部ってのは特にない)。

 3階から上が普通(?)のオフィスだね。

 最上階が食堂なんかがある階。社員割引がある普通の食堂もあるけれど、他にも何店舗か入っているんだ。ここにあるお店の中にも、ある意味アンテナショップ?ってお店が何店舗かある。

 この階には、地元の食材を使った食事を中心に楽しめるお店だけでなく、カフェや喫茶店もあるんだ。メニューの開発に会社が関わっていることもある。

 そういえば、遙君のお父さんのお店が最近新しく入ったみたいだね。そこは、スイーツを中心としたお店みたいで、もう(すで)に人気店になっているようだ。ここに来た時は、毎回食べに行くって桃香が言ってたね。

 このビルの1階と最上階は一般の人も利用できるようになっている。

 最上階から見る景色は、昼も夜もキレイだよ。バーもあるから夜景を見ながら、ってのも人気らしい。

 最上階の1つ下の階には、会長室や社長室、応接室や会議室なんかもある。

 外部から来客もあるからね。

 お祖母様も父様も来客対応の時以外は、あまり会長室や社長室にいることはないんだけどね。


 (株)KAMISHIROは女性が働きやすい会社だと思う。

 お祖母様が、そうであるようにしてきたからね。

 領民たちの生活が安定するようにと、それまでは各個人でバラバラにやっていた農業などの生産業や様々な物を扱う販売業なんかを、需要と供給のバランスを取りつつ利益を上げられるような形にしてきたのは曾お祖父様だった。

 そのためのインフラ整備に必要な資金調達に協力したのは曾お祖母様だけどね。

 その後、働きやすい環境に整え、会社の働きによって領民たちも元気になるように、と改善してきたのはお祖母様たちだ。


 (株)KAMISHIROは最初はただのって言ったら変かもしれないけれど、小さな事務所から始まったんだ。

 各生産者や商人たちから入ってくる話を聞き、必要な手配を行い、物の流通が上手くいくようにしていた。

 そこから必要に応じて、業務を徐々に拡大していったんだ。

 最初は、代々神代家の金庫番をしていた家の隠居した1人と若手1人を連れて行き、お金の管理を任せていたんだ。

 後は、お祖母様と導き手の緑さんが、その都度(つど)仕事内容に適した人を見つけてきていたみたいだ。


 曾お祖母様はお金の流れが見えていたらしいんだけど、お祖母様にはどれ(誰)とどれ(誰)を繋げばどんな風になっていく、っていうのが分かるらしいんだ。

 僕が「えっ、何で?」って聞いたら、お祖母様の答えは「さあ、何でかねえ。(かん)かねえ。」だった。

 まあ、でも、その勘で思いついたことから広がって、今の(株)KAMISHIROになったんだから、ホントスゴいよ。

 桃香はどうなのかって?

 んー、桃香には紅葉がいるから金運はありそうだねえ。

 桃香は変わった(?)貯金箱も持っているんだけど、それは本人から聞いた方が面白いと思うよ。


 事務所から始まった会社は、お祖母様の意向(いこう)で女性を採用することが多かったらしい。

 もし、男性と女性が働きたいと来た場合、求めている能力が同程度であれば、女性の方を採用していた。

 なぜかって?

 当時は、就職する場合は男性の方が採用されやすかったからだね。

 この龍頭領の学校は、男女共学だったから学ぶ内容については男女に差は無かった。

 でも、なかなか「女性に学問は必要ない」と考える人や世の中の雰囲気はなくならなかったんだ。

 だから、「女性を採用しても結婚や育児で、どうせすぐに辞めるから無駄だ」と考えて、女性の採用を避ける所が多かったんだよ。

 お祖母様は、せっかく学んで力もやる気もあるのに、それを活かせる場所がないことで、女性の学ぶ意思まで退化することを心配したんだ。

 それならウチの会社で女性を多く採用して、男性になんら仕事で劣ることはないと世に示そうとしたみたいだ。

 当然、どうすれば女性が働きやすい環境になるのかを考え、改善できるところがあればできるところからすぐに変えてきた。


 その結果、今では(株)KAMISHIROは就職先としては大人気だよ。女性だけでなく、男性にも。

 勤務時間は他の会社と変わらないと思う。

 9時から17時だよ。夏期は8時から16時にしてもOKだよ。(途中、昼休憩1時間。コーヒータイムなどの小休憩は適宜(てきぎ)各自で取る。)

 他に、融通(ゆうづう)()くっていうか、昼休憩を2時間にして勤務時間を18時までにしたり、夏期以外にも勤務時間8時から16時までにしたりすることも仕事に支障がなければできるようになっている。

 ただ、時間外労働は禁止なんだよね。

 各個人やチームで計画を立てて、ちゃんと勤務時間内に終わらせるようになっている。できないと計画の甘さ等が問われるからね。余裕がありすぎてもダメだけどね。


 この会社、チームリーダーや管理職、異動先(部署や支社)なんか希望制なんだよね。

 入社して最初の部署は大体本人の希望の所になる(人数の偏りがヒドすぎない限りは、だけど)。

 でも、色んな部署の人と接していて、あの仕事もやってみたいなと思えば異動希望を出して変わることもできる。さすがに1年未満では無理だけどね。

 曾お祖父様の代から、会社の方針として「適材適所」と「適正価格」は変わっていない。


 「適材適所」って言うのは簡単だけど、難しいよね。

 本人の希望と合っているならいいけれど、合ってないこともあるからね。人は意外と自分のことを知らない。

 だから、色んな部署の人と会って話して、あの部署の仕事も面白そうだなとか自分に合ってるかもとか考える機会があるのはいいよね。

 自分と合ってなくても、自分の適性を知る機会だったとか自分の幅を広げるのには役だったかなとか思えればいいと思うし。


 「適正価格」は売る商品もそうだし、お給料もだね。

 物は、良い物が安いのは(うれ)しいけれど、生産者に無理をさせて続かなくなれば、結局良い物が消えることになる。誰かやどこかが無理をする形はいずれ破綻(はたん)する。

 お給料もね、高い方がいいだろうけれど、やってることと合ってるか、だと思うね。

 この会社は、希望すれば管理職になれて(一応試験はあるからね)お給料も上がるんだけど、意外と直接色んな商品を開発したいって人も多いんだよね。まあ、ヒット商品の開発なんかをすると特別賞与が出るから、ヒットメーカーと言われる人は管理職より総額が高くなる人もいるからね。

 まあ、人それぞれだね。


 後は、男女ともに育児休業を取り入れたのも他社より早かったね。

 何しろ曾お祖父様自身が曾お祖母様と一緒に子育てする、という人だったからね。

 娘3人だったから襁褓(おしめ)は替えなかった(親でも異性はイヤだろうと遠慮したって)みたいだけど、夜泣きした娘をあやすのは大体曾お祖父様だったみたいだ。

 父様たちや僕は、曾お祖父様やお祖父様が襁褓を替えてくれたらしい。

 お祖父様は年の離れた弟の襁褓を替えた経験があったらしい。父親が早くに亡くなり、母親が女手(おんなで)ひとつで育ててくれたから、子どもながらに自分ができることはやって手伝わないと、と思ってたって聞いたことがあるよ。

 僕は桃香が生まれて嬉しかったし、下の子が生まれて寂しい思いもしたことがなかった。両親のどちらかかお祖父様たちがいてくれたからね。

 薔子さんからも聞いたことがある。妹たちが生まれた後はしばらく、いつも以上にお父様が傍にいてくれたから嬉しかったって。


 ああ、少しズレたかな?

 このビルの1階には、託児所があるよね。

 それも女性が仕事しやすいようにだよ。

 この託児所は社員用に作られたものだからね。このビルで働く人や買い物や食事に来た人も利用できるようになっている(買い物や食事の場合は何時間以内という制限はあるよ)。

 育児休業中も利用できる。

 たまには親もしっかり休んでエネルギーチャージしないとね。

 働く時間も色々選べるようになっているし、食堂も持ち帰りできるしね(頼んでおけば夕飯用もOK)。

 利用できるモノは上手く使って、子育ても楽しまないと!

 ああ、子育てが一段落してから管理職を目指すのもありだよ。特に年齢制限もないしね。


 サポート要員も充実しているから、育児休業だけでなく病気やケガで急な入院となっても大丈夫だ。

 各自が自分のどんな仕事をどこまでやっているか記録に残しておけば引き継ぎもしやすいからね。

 サポート要員には、定年退職者や結婚や出産で辞めた人なんかがなってくれているよ。

 (株)KAMISHIROの定年は一応60才になっている。

 それ以降は、各自の健康状態や本人の希望で働くのを継続する人もいる。

 ただ、現役世代とは仕事の量や内容は変わるみたいだ。

 何で60才かって?

 それはね、小さい子どもって成長に個人差があるよね。それと同じでお年寄りも老化に個人差があるからなんだって。80や90才になっても頭も足腰もしっかりしている人もいるかと思えば、70才前後で弱ってしまう人もいるよね。

 だから、60才を共通の定年にして、後は本人の判断でってことらしいよ。


 「子育ての時間は人生のほんの一部だ。意外と短いもんだ。」とは、お祖父様の(げん)

 父様は大体18時前には家に帰って来ているね。

 たまに遅い時もあるけど(どうしても外せない会合やパーティーなんかだね)。

 母様は大体家で仕事をしていて、時々外に出るって感じだね。

 でも、改めて考えてみると僕たちへの2人の関わり方ってほぼ一緒だね。どっちが多いとか少ないとかないねえ。

 逆に、父様は、どうしても断れない出張が集中してしまった時期なんかは、ギリギリまで桃香を抱っこして出かけるのを渋っていたこともあった。(頬ずりまでしていたから、桃香に「ながい。うじゃい。」と言われて落ち込んで出かけていったこともあった。「あの会社、今後の付き合い考えようかな。」ってボソッと言ってたこともある。北斗さんに注意されてたけど。)


 僕は案内しながら、思いつくまま色んな話をしていたんだけど、シオンは見学しながら黙って聞いていた。


 そして、今は食堂でお昼ご飯を食べながら目の前に広がる景色を眺めていた。

 シオンは町を走るトラムを熱心に見ていた。

 ここ龍頭領では、トラムが領民の生活の移動を支えている。動力は地熱だね。

 トラムは、中央区では周囲を円形に走っている。

 そして、その駅のいくつかから他の4区に放射線状に線が延びていってるんだ。

 南区には線が1本だけ。それも1番短い。最後の駅からは、ケーブルカーとロープウェイで山の上まで行けるようになっている。

 北区や東区、西区には線が何本かある。

 ああ、西区には車両基地もあるね。

 後は、車と徒歩で移動ってことになるかな。


 「僕の国にもあんなの欲しいな・・・。」


 「この領には地下鉄はないんだけれど、地下でも走っている所はあるから、シオンの国でも作れるんじゃないかな。」


 トラムを見ていて言ったシオンの言葉に答えると、シオンは驚いたように僕を見た。


 「地下を走っているトラムがあるの?」


 「ううん、トラムじゃなくて地下鉄だね。」


 「地下鉄?」


 「うん。地下を走る鉄道のことだよ。」


 「そうなんだ。」


 シオンは再び走っているトラムの方を見た。

 乗り物が好きなのか、シオンはスクーリングで学校に行った時に見た、自動運転の小型の車にも興味を持ったみたいだった。

 青北学園の構内では、大学や大学院、研究所なんかで作られているモノがあちらこちらで試されていたり、それらに対する人々の反応を収集したりしている。

 シオンが見た小型自動車もそうだ。

 色んな年代の人の反応を見たいのか、ただの遊び心なのか、普通の形の小型自動車からてんとう虫や犬や猫の形を()したものまである。

 人が近付くと止まるので、誰も乗っていなければドアが開いて乗れるようになっている。

 乗って目的地を()げると、そこまで連れて行ってくれるんだ。乗っている間に乗り心地を聞かれるけどね。性別や大体の年齢も聞かれたね。

 ただ、個人情報は聞かれないようになっている(担当教員等のチェックが入ってる)。

 構内に何台もあるから自由に乗っていいんだけど、学生証なんかを提示しないと乗れない。外部の人は構内への立ち入り許可証がないとダメだね。

 シオンは乗ってみなかったのかな?


 昼食後、何ヶ所かを見て本日の見学は終了した。

 聞こうか迷っているようにも見えたから、シオンに「聞きたいことがあったら家に帰って聞こうか?」って言ったら、「うん。そうする。」だって。


 だから、家に帰って僕の部屋で少し話をしたんだ。


 「それで、聞きたいことって?」


 「うん。トラムは何でできていて、どうやって動かしているんだ?」


 「ああ、やっぱりトラムのことなんだね。

  そうだね、鉄鉱石があれば作れるんじゃないかな。

  動かすのは、ここでは地熱を利用しているよ。

  でも、詳しくは知らないから、素材から出来上がって走らせるまでの説明は無理かな。

  そこは専門家に聞かないと分からないね。」


 「うん。分かったよ。ありがとう。

  それと、何か今日は、女性の働きやすさって何回も言ってたようだけど、それってこの世界では大事なこと?」


 「うん。そうだね。

  こっちの世界では、男性優位の時代が長かったから、女性にとっても生きやすい社会にしようってなってきたんだよ。

  シオンの国はどうなの?」


 「うーん・・・?

  僕の国は男性女性というより魔力量が多いか少ないか、だね。

  魔力が多い者が力を持っているね。

  男性か女性かはあまり関係ない。

  そして、魔力は親から子に伝えられると考えられている。実際、権力を持つ家に魔力が多い子が生まれているからね。

  だから、魔力が少ない者にとっては居心地が悪い?って言うんだっけ、なんじゃないかな。

  長く生き残れないしね。」


 「そうなんだね。

  世界が違うとやっぱり考え方も違ってくるよね。

  ああ、そうだ。

  鉄鉱石は向こうの世界にも同じ物か似た物があるかもしれないよ。動力は・・・、ああ、魔石を使えばいいかもね。

  調べてみてもいいんじゃない?」


 「うん。やってみるよ。」


 アスル師は、今日は何も言うことなく、ただジッと色んな物を見て、説明を聞き、時々頷いているだけだった。


 その後、シオンは師と学校で学ぶことを続けながら、時々父様にお願いして、仕事に同行させてもらったり、領内の施設も見学させてもらったりしていた。


 そうやって、2年くらいこっちの世界にいたんだ。

 そして、別れの日は突然やって来た。

 向こうの様子を見に行っていたアスル殿が戻ってすぐのことだったんだ。


 「僕の国の状態がよくないみたいだ。急がないとマズい!

  すぐに戻ることにするよ。」


 「危険だけど戻らないって選択肢は・・・ないよね。

  うん。前から分かってたことだ。

  シオン、ガンバレ!!

  こっちから応援してるよ。」

 「うん。桃香も。」


 「うん。ありがとう。

  ハルキたちにも、ありがとうって伝えてください。」


 「「 わかったよ。 」」


 「それじゃあ、行くよ。またね。」

 「お(ぬし)たちには世話になった。感謝する。」


 「「 うん。またね。 ・・・ ん?」」


 シオンたちは少しの疑問を残しつつ、黄昏時(たそがれどき)の神楽山から自分の国へと帰って行った(うん。あの異界と繋がることのある所からだよ。アスル殿が繋いだんだよ)。



 ああ、シオンが我が家に来た後ぐらいに、他にも大きな変化があったね。

 あれは、シオンが来てから、1ヶ月か2ヶ月が経った頃だったかな?

 ある日突然、お菊さんが神仙界戻ると言い出したんだ。


 「桃香に伝えることも伝えたし、紅葉も一人前になった。緑もおる。もう後は任せてもよい頃だのう。

  (わらわ)がここに来て大分(だいぶ)なごうもなった。

  ここらで一度あちらの世界に戻ろうと思っとる。

  そろそろ、顔を見に行きたい者もおる(ゆえ)のお。」


 そう言って神代家から去って行ったんだ。

 お祖母様や桃香は何となく知っていたように感じた。

 それでも桃香は数日、少し元気がなかったね。

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