合同討伐(コラボ)その2
「ラ、ライト……!? お前じゃ無理だ! 物理攻撃は効かないんだぞ!」
「黙って見ててよ。エリートさん」
僕はレイス・ロードと対峙した。
物理攻撃無効、魔法減衰結界、これ本当にCランクかと思う様なステータス。
今の僕のステータスと【火種】だけでは、絶対に突破できない強敵だ。
だが、僕には最強の「女神様」がいる。
「女神様たち! あいつの結界を破る方法、教えてください!」
僕がカメラに向かって叫ぶと、コンマ一秒で答えが返ってきた。
【叡智と探求の女神:あの霧は『負の魔力』の集合体よ。
貴方の【火種】の魔力を霧の内部に『微粒子レベル』で散布しなさい。
そして一気に点火させて、粉塵爆発の要領で結界を内側から吹き飛ばすのよ】
【美と闘争の女神:結界が剥がれたら、霊体だろうが関係ないわ! 私の贈った剣の『神聖属性』を全開にして、脳天から一刀両断にしなさい!】
――ピコンッ。
【条件達成:視聴者たちによる『戦術的解決策(粉塵爆発)』と『武装の真価(神聖属性解放)』を受信しました】
【例外権能:『視聴者顕現』が起動します】
【コメント内の概念を抽出。対象の魔力操作精度を限界突破させ、白銀の剣の隠しステータスを一時的に解放します】
「……いけるッ!」
僕は深く息を吸い込み、左手をレイス・ロードの黒い霧に向かって突き出した。
「スキル発動! 【火種】!」
指先から生まれた火花を、魔力操作によって目に見えないほどの微粒子に変え、扇状に射出する。
微小な熱エネルギーを持った火種が、レイス・ロードの纏う黒い霧の内部へと浸透していく。
「シ……?」
レイス・ロードが異変に気づき、僕に向かって触手を伸ばしてきた。
だが、もう遅い。
「起爆ッ!!」
パチンッ! と僕が指を鳴らした瞬間。
霧の内部に散布された無数の【火種】が、一斉に連鎖爆発を起こした。
ドゴォォンッ!!
熱と衝撃波が内側から弾け飛び、レイス・ロードを守っていた分厚い瘴気の結界が、文字通り跡形もなく吹き飛ばされた。
結界を失ったレイス・ロードの半透明な体が、空中に無防備に晒される。
「今だッ!!」
僕は地を蹴り、跳躍した。
右手で握りしめた白銀の剣。
例外スキルの干渉により、ただの切れ味だけでなく、美と闘争の女神が込めていた『神聖なる浄化の光』が刀身から溢れ出している。
「ハァァァァァッ!!」
霊体すらも断ち斬る、眩い光の刃。
僕はその剣を、レイス・ロードの脳天から股下まで、一切の躊躇なく一刀両断に振り下ろした。
「ギ、ギャアァァァァァッ……!!」
断末魔の叫びと共に、レイス・ロードの体が真っ二つに裂け、浄化の光に包まれてチリチリと燃え上がっていく。
そして最後は、光の粒子となって完全に消滅した。
【C+ランク魔物:死霊王の思念体の討伐を確認】
【昇格試験クリア条件を満たしました。存在値+1500を獲得します】
「……ふぅ。なんとか、なりましたね」
僕は白銀の剣をクルリと回して鞘に納め、額の汗を拭った。
【叡智と探求の女神:……ぶっつけ本番でよくやったわ。合格点よ】
【美と闘争の女神:やっぱり私の剣とアンタの度胸は最高ね! スカッとしたわ!】
コメント欄で二柱の女神様が称賛してくれる。
僕は小さくガッツポーズをして、背後を振り返った。
そこには、腰を抜かしたまま、信じられないものを見るような目で僕を見上げているギルバートの姿があった。
「ば、馬鹿な……。初期スキルの【火種】でCランクのボスの結界を吹き飛ばし、ソロで一刀両断だと……?
そんな……僕の最強魔法でも、傷一つつけられなかったのに……」
プライドを粉々に砕かれたエリート同期は、ガタガタと震えながら呟いている。
「ギルバート、助かったよ。君がド派手な魔法でヘイト(敵意)を稼いでくれたおかげで、僕は冷静に対処できた」
僕はニコリと笑って、彼に手を差し伸べた。
「囮役、お疲れ様。
おかげでCランクに昇格できそうだよ」
「くっ……!」
僕の言葉に、ギルバートは顔を真っ赤にして、僕の手を払いのけた。
そして、逃げるようにダンジョンの出口へ向かって走り去ってしまった。彼が僕の配信枠で「売名」をするという目論見は、完全に逆効果(大恥を晒すだけ)に終わったようだ。
「……さてと。じゃあ、昇格の報告をしに、またあの面倒な人事局に帰りますか」
カメラに向かって苦笑いする僕の端末には、ついに『中級神(Cランク)昇格通知』のアラートが誇らしく輝いていた。




