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神様はつらいよ 〜視聴ゼロの底辺神、配信で信仰(スパチャ)を稼いで成り上がる〜  作者: 仁科異邦


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復興へのロードマップ 〜防衛拠点(フェーズ2)を作ろう〜 2


 北の廃坑の奥深く。

 薄暗い坑道の中で、赤黒い瘴気を纏った巨大な鋼鉄の塊が、重低音を響かせて動き出した。

「ギィィィィィン……!!」


 瘴鋼の巨兵カースド・マキナ・ゴーレムは、廃坑に残された鉄骨やトロッコの残骸が、呪われた鉱石をコアにして寄り集まった異形のゴーレムだ。


 四メートルを超える巨体が、右腕に形成された巨大な鉄塊を振り上げ、僕に向かって叩き落としてくる。

「っと……!」


 僕は後方へ大きく跳躍し、その一撃を躱した。

 ドゴォォォォンッ!!

 鉄塊が直撃した岩盤がクレーターのように陥没し、凄まじい衝撃波と土煙が巻き起こる。

 もし下級神だった頃の僕なら、掠っただけで全身の骨が粉砕されていただろう。


(でも、今の僕なら……見えるし、躱せる!)

 中級神(Cランク)へと昇格し、存在値が五万を突破した僕の基礎ステータスは、かつてとは比べ物にならないほど向上している。


 ゴーレムの攻撃は圧倒的な破壊力を持っているが、その分、モーションが大きく単調だ。

「ハァッ!」


 僕は土煙を切り裂くように前傾姿勢で突進し、ゴーレムの懐へと潜り込んだ。

 狙うのは、分厚い鋼鉄の胴体。

 美と闘争の女神から授かった名剣『白銀の戦乙女』を横薙ぎに一閃する。

 ガギィィィィンッ!!


「くっ……!?」

 強烈な火花が散り、両腕にビリビリと痺れが走った。

 さすがはAランク魔物の装甲をも断ち切る名剣だ。

 ゴーレムの胴体に深い亀裂を刻み込むことには成功した。しかし、相手はただの鋼鉄ではなく、何層にも折り重なった『金属の塊』だ。


 刃が途中で止まってしまい、致命傷には程遠い。

「ギガァッ!!」

 ゴーレムが鬱陶しそうに左腕を振り払う。


 僕は剣を引き抜き、間一髪でバックステップを踏んで距離を取った。

【美と闘争の女神:ちょっとライト! なんで一番分厚い胴体を狙うのよ! いくら私の剣でも、鉄の塊を真っ二つにするにはアンタ自身の筋力がまだ足りないわ!】


【叡智と探求の女神:物理的な硬度と質量に頼った装甲ね。力任せに斬り合うのは愚策よ、ライト。相手は生物ではなく機械マキナ。全体の構造をよく観察しなさい】


 空中のウィンドウに、二柱の女神様から的確なコメントが流れる。

「構造、ですか……」


 僕はゴーレムの巨体を素早く観察した。

 胴体や腕は分厚い鉄板や鉱石で覆われている。

 だが、巨体を動かすための『関節部』――膝や肘、肩の付け根はどうだ?


 可動域を確保するため、そこには装甲がなく、錆びついた古い鉄骨や歯車が剥き出しになっていた。


【叡智と探求の女神:気づいたようね。それに金属は『熱』に弱いのよ。特に関節部の古い鉄骨は、急激な温度変化を与えれば強度が著しく低下するわ。貴方の魔法を使いなさい】


【美と闘争の女神:そういうこと! 関節に火を突っ込んで、内側から爆発パージさせちゃいなさい!】


 今回例外スキルは使わない。

 僕が持っている手札と、女神たちの知識を組み合わせるだけで、十分戦える。


「よし……行きます!」

 僕は剣を構え直し、再びゴーレムへと向かって突進した。

 ゴーレムが迎撃のために両腕を大きく広げ、僕を挟み潰そうと迫る。


「そこだッ!」

 僕は床を滑るようにスライディングし、迫り来る両腕の下を潜り抜けた。

 そして、そのままゴーレムの巨大な『右膝』の裏側へと回り込む。


「ギ……?」

 背後に回り込まれたことに気づき、ゴーレムが振り向こうと体重を移動させた瞬間。


 僕は白銀の剣を、右膝の関節――錆びた鉄骨と歯車が入り組む隙間へと、深く突き刺した。

「スキル発動! ――【火種】!!」


 ただの炎を出すのではない。

 オークの群れと戦った時のように、魔力を一点に圧縮し、剣の刀身を通じてゴーレムの関節の内部に直接、極大の熱エネルギーを流し込むのだ。


 ボォォォォォォッ!!

 関節の内部で、超高温の熱が爆発的に広がる。

 叡智の女神が言った通りだ。金属は熱によって急激に『膨張』する。


 ただでさえ錆びて劣化した関節のパーツが、不均等な熱膨張に耐えきれず、メキメキと悲鳴を上げ始めた。


「ハァァァァッ!!」

 僕は剣の柄にさらに体重をかけ、テコの原理で関節を押し広げながら、限界まで【火種】の魔力を送り込み続けた。


 バキンッ!! ゴキィィィンッ!!!

 けたたましい破壊音が坑道に響き渡る。

 熱膨張で歪み、限界を迎えた右膝の関節パーツが、ゴーレム自身の重さに耐えきれずに完全にへし折れたのだ。


「ギ、ガァァァァァッ!?」

 右足の支えを失った四メートルの巨体が、バランスを崩してドスーン! と地響きを立てて前のめりに倒れ込んだ。


【美と闘争の女神:ナイス! 体勢が崩れたわ! 今度は胸よ! さっきアンタがつけた亀裂の奥に、コアが光ってるわ!】


【叡智と探求の女神:急ぎなさい。相手が立ち上がる前に、胸部の装甲を熱で軟化させてから斬り裂くのよ】


「了解です!」

 僕は倒れ込んだゴーレムの背中を蹴り上がり、一気に胸の正面へと回り込んだ。


 そこには、先ほど僕の剣が刻んだ深い亀裂があり、その奥で赤黒く脈打つ巨大な『呪われた鉱石コア』が覗いている。


 ゴーレムが残った左腕で僕を払いのけようとするが、僕はそれを剣で受け流し、亀裂に左手を押し当てた。


「【火種】ッ!!」

 装甲の亀裂に直接、限界出力の熱を叩き込む。

 分厚い鋼鉄の装甲が、数千度の熱を浴びてみるみるうちに赤熱し、水飴のように柔らかく軟化していく。


「これで……最後だッ!」

 僕は白銀の剣を上段に振りかぶった。

 熱で強度が落ちた装甲なら、この名剣の切れ味を阻むものは何もない。


「シィィィィィッ!!」

 ズバァァァァァァァァンッ!!!

 眩い白銀の軌跡が、赤熱した鋼鉄の胸部をバターのように両断した。


 装甲が弾け飛び、その奥に隠されていた巨大な赤黒い鉱石――ゴーレムの心臓であるコアが、完全に空中に露出する。


 僕は剣を素早く鞘に戻し、空中に放り出されたコアを両手でガッチリと受け止めた。

「ギ、ゴ……ォォォ……」

 コアを失った巨兵の動きがピタリと止まる。


 単眼の赤い光がフッと消え、四メートルの鋼鉄の体が、ただのガラクタの山となってガラガラと崩れ落ちた。


【C+ランク変異魔物:瘴鋼の巨兵の討伐を確認】

【存在値+2000を獲得しました】


「……ふぅ。やりましたよ、お二人とも!」

 僕はドクン、ドクンと微かな魔力を放ち続けるスイカほどの大きさのコアを掲げ、カメラ(光球)に向かって笑いかけた。


 チートスキルがなくても、戦い方次第で格上のボスは倒せる。泥臭いけれど、確かな成長を感じる勝利だった。


【美と闘争の女神:ふふっ、お見事! 関節を壊して機動力を削ぎ、弱点をぶち抜く。私の好きな闘い方になってきたじゃない!】


【叡智と探求の女神:熱膨張による装甲の軟化と破壊……理にかなった素晴らしい戦術よ。これなら、例外スキルによるオーバーヒートのリスクを負わずに、安定して上位層を狩れてるわね】


 女神様たちも、僕の確実な成長を褒めてくれている。

 これもすべて、彼女たちの的確な指導のおかげだ。


「このコアがあれば、アデル村を囲う防衛結界の『動力源』になりますよね?」

【叡智と探求の女神:ええ、瘴気で汚染されているけれど、貴方の【火種】の神聖な熱で長時間炙り続ければ、純粋な魔力だけを抽出した『魔導核』に精製できるわ。それ一つで、下級魔物を寄せ付けない結界が数年は持つはずよ】


「数年! それは心強い」

 僕は重いコアを小脇に抱え、崩れたゴーレムの残骸を見た。


「この鉄屑も、あとで少し持って帰りましょう。溶かせば、農具や生活用品の材料になりそうですからね。

……さて、長居は無用です。暗くなる前に、アデル村に帰りましょう」


 ロードマップ【フェーズ2:防衛力の強化】の要となるアイテムを無事に手に入れた僕は、足取りも軽く、ゴードンとシエルが待つ拠点へと帰路についた。


 家を作り、水を確保し、敵を倒して素材を得る。

 自分の手で一つずつ生活を豊かにしていくこの感覚は、ノルマの数字しか見えなかった神界での日々とは比べ物にならないほど、充実感に満ちていた。


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