表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイの物語  作者: Shadow
第I部:第II部:過去の根源と真実
31/33

第三十一話 ― 踏み越えた者たちへ

あなたに会いたかった。

あいつらの”提案”と、その汚い手口を見た。

「同じ一撃で、叩き返してやる」

白昼に攫われ、夜の底から這い出した。

港の倉庫だった。

満月。満潮。風だけが穏やかだった。

居場所も分からない。金もない。

俺には何もなかった。

どうやって出るか——考えていた、その時。

ニノのスマホが、鳴った。

——ぎくりとした。

持っていたのを、完全に忘れていた。

出た。

ニノだった。

泣いていた。叫んでいた。

何を言っているのか、全然分からなかった。

「落ち着け。一言だけでいい——なぜ泣いている」

しばらくして、息を詰まらせながら言った。

「タイが……無実で……釈放されたって聞いて……嬉しくて息ができなかった……でも……事故があって……警官が死んで……タイが……タイが攫われたって……怖くて……どうしたらいいか……家の周りに……人が……逃げようとしたら捕まって……何か言われて……分からない……何が何だか……」

……死にたいらしい。

あいつらは、取り返しのつかないことをした。

「無事なら——それだけでいい。あいつらのことは気にするな」

「縛られた……危うく……“0”って人が止めに入ってくれなかったら……始めた奴は殺された」

「じゃあ——お前を殺すつもりか」

ニノが吐き捨てた。

「夢でも見てろ」

落ち着かせた。安心させた。

位置情報を送って、電話を切った。

——こめかみに血管が浮いた。

スマホを叩き割りそうになった。

こらえた。

見知らぬ番号が鳴った。

「提案はどうだ。俺たちは本気だ。女はただの脅しだ」

「つまり——道具として使ったわけだ」

俺は静かに言った。静かすぎるくらいに。

「一度だけ言う。繰り返さない。ニノが危険に晒されたら——お前は自分の手で墓穴を掘ったと思え。一線を越えるな。どこが一線か分からないなら——お前の体に、直接刻んでやる」

「おい、それは——」

切った。

ポケットに手を突っ込んだ。

煙草の箱があった。

一本抜いて、火をつけた。

煙が夜に溶けていった。

考えた。

15分後、ニノが来た。

車に乗りながら——さっきの電話を反芻した。

“0”はあの時、俺の目の前にいた。

動かなかった。

……試されていたのか。俺が。

あの白い研究施設め。

根こそぎ消してやる。

一人残らず。

息をしている人間を、一人も残さない。

眠気が来た。抗った。

11時だった。

ニノが何か聞いていた。

ほとんど聞こえなかった。

気づいたら——

ニノの膝の上で、眠っていた。

―――

目が覚めた。

ニノの家の前だった。

「……聞いてくれ。金もない、家もない。今日一日だけ——寝かせてくれ」

ニノの顔が、また赤くなった。

……なぜだ。

首を掴んだ時も。

眼鏡の子が”デート”と言った時も。

なぜいつも赤くなる。

知りたい。本気で。

沈黙が続いた。

運転手が口を挟んだ。

「彼氏じゃないのか。なぜ断る」

ニノが気を失った。

頭から湯気が出るかと思った。

揺すった。叩いた。

反応がない。

鞄からカギを抜いた。

降りようとしたら運転手に腕を掴まれた。

料金を払った。振り払って降りた。

ドアを蹴り開けた。

ソファに寝かせた。

台所を探した。水を汲んだ。

——かけた。

ニノが、死者のように目を開けた。

涙が、出そうになった。

額に手を当てた。

「大丈夫か。車の中で気を失った——許可なく入って悪かった」

顔がまだ赤かった。

「だ……大丈夫、です」

「驚かせてくれた。もういい加減にしてくれ——なぜ俺といると毎回顔が赤くなる」

「……関係ない。部屋に戻る」

消えた。

一人になった。

部屋を見た。

ゴミだらけだった。

……気にしなかった。

温かければ、それで十分だった。

しばらくして、ニノが降りてきた。

手袋とエプロンをつけていた。

「散らかっていて……ごめん」

「俺も手伝う。どうせここで寝る」

一時間かかった。

終わった。

もう立てなかった。

床に倒れるように横になった。

枕も何もなかった。

ニノが起こしにきた。枕と毛布を持っていた。

「いらない」

「受け取れ。お前の意見はどうでもいい」

無理やり押しつけてきた。

ここはニノの家だ。

黙って受け取った。

台所へ向かうニノの背中に、聞いた。

「両親は?」

「……亡くなった」

「……悪かった」

「いい。友達にも聞かれた。慣れてる」

少し、黙った。

——ニノは知らない。

俺が殺したことを。

聞くべきじゃなかった。

悲しそうだ。

一人で眠らせたくない。

「一緒に寝てもいいか」

ニノが水を噴いた。

今まで見た中で、一番赤い顔だった。

何を言おうとしているのか、全く分からなかった。

近寄った。

手を取った。

「悲しいまま眠らせたくない。それだけだ」

ニノは黙った。

ゆっくりと手を引いた。

コップを置いて、小さく言った。

「……いい。もう日が経ってる。眠れてる」

何度か試みた。

そのたびに断られた。

ニノは部屋に戻り、電気を消した。

ソファに横になった。

——ニノの両親を殺したのは、本当に正しかったのか。

それとも俺は——ただの人殺しか。

答えが出ないまま、組織のことを考えた。

考えながら、目を閉じた。

——ガラスが、割れた。

ニノの部屋だった。

走った。ドアが閉まっていた。

蹴り破った。

ニノは——いなかった。

窓が、砕けていた。

こめかみの血管が、浮いた。

拳を握った。

皮膚が裂けた。

血が、滲んだ。

お前たちに——誓う。

根こそぎ消す。

一人残らず。

ニノに触れたことを——後悔させてやる。

(章の終わり)

言い忘れていました。


Pixivのアカウントを持っています。


でも、どうすれば私のページにアクセスしてもらえるのか分かりません。

あともう一つ忘れていました。


読者1000人達成を記念して、小説に関する質問を5つ募集します。


最もよく寄せられる質問の中から5つを選んでお答えします。


今度こそぜひご回答ください。一人で待たせるのはやめてくださいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ