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タイの物語  作者: Shadow
第I部:第II部:過去の根源と真実
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第十八章 ― 何が起きている

雪が降り続く中、俺はようやく気づいた。

――俺には、帰る場所がない。


その瞬間、サカのことを思い出した。

迷わず、俺は彼の元へ向かった。


道中、ずっと考えていた。


(俺の人生は、これから良くなる)


そう信じながら。


病院に到着すると、面会時間外で入れないと言われた。


「俺は付き添いだ。見舞いじゃない」


そう言ったが、受付の女は首を振る。

すぐに警備員を呼ばれ、強引に外へ追い出された。


雪の中に放り出される。


寒さは感じる。だが――慣れている。


路地裏での生活も、ゴミの中で過ごした日々も。

全部、もう体に染みついている。


その時、ふと考えた。


(……忍び込めばいい)


訓練の成果を試す時だ。


病院の裏へ回ると、清掃員用の扉を見つけた。

開けた瞬間――目が合う。


清掃員と。


(最悪だ……一発目からかよ)


逃げなかった。


一気に距離を詰め、首元に一撃を叩き込む。

男は気絶した。


すぐに備品庫へ押し込み、扉を閉める。


俺はそのまま、203号室へ向かった。


足音を殺し、影のように進む。


だが――


微かな物音。

何かを引きずるような音。


嫌な予感がした。


ドアをゆっくり開ける。


中には――眠るサカ。

そして、その隣に一人の男。


右手にナイフ、左手にサプレッサー付きの銃。


考えるより先に体が動いた。


銃を持つ腕に飛びつき、力任せに捻る。

骨が砕ける音。


男がよろめく。


その瞬間、銃を奪い――


引き金を引いた。


弾丸は頭を貫き、男は窓の外へ吹き飛ぶ。

三階から落下し、頭から地面に叩きつけられた。


鈍い音。

すぐに雪がそれを覆い隠す。


まるで――何もなかったかのように。


その音で、サカが目を覚ました。


月明かりに照らされた俺を見て、言う。


「……タイ?

なんでここにいる?」


「お前を殺そうとする奴がいた。

……ギリギリだった」


サカは何も言わない。


ただ、静かに尋ねた。


「……あと何日、ここにいると思う?」


妙だった。


まるで、こうなることを知っていたみたいに。


「一週間。

その後の一週間は休養だ」


そう答えると、サカは小さく頷いた。


「……タイ。

一つ、頼みがある」


「いいぜ」


サカが俺を見て言う。


「二週間、俺を護れ」


心臓が少しだけ高鳴る。


「一週間目が終われば報酬。

二週間目が終われば……本当の報酬だ」


迷わなかった。


「やる」


「護衛は――俺が眠る時間だけでいい」


「了解だ」



(一日目)


朝。

雪は溶けかけていたが、空は再び曇り始めていた。


サカが言う。


「……どうやって入った?」


「忍び込んだ」


そう答えると、彼は笑った。


「訓練の成果だな」


俺は立ち上がる。


「じゃあ、行く」


「待て。

タバコを買ってきてくれ」


俺は周囲を見渡し、彼の服を漁る。


「おい、何してる」


「今すぐ必要なんだろ」


金を受け取り、ポケットからタバコを見つけて投げる。


「貸しだな」


サカは笑った。


「行ってこい。彼女と」


「彼女?」


「ニノだろ、バカ」


俺は少し笑った。


「どうだろうな。

あいつが俺を好きとは限らない」


サカはため息をつき、微笑む。


「本当にバカだな、お前は」


そして小さく呟いた。


「……お前に会えてよかった」


「何か言ったか?」


「さっさと行け」



二歩、外に出た瞬間――


ガラスが割れる音。


嫌な予感が、全身を貫いた。


全力で戻る。


傷が開き、筋肉が悲鳴を上げる。


それでも止まらない。


部屋に飛び込むと――


サカはいなかった。


時間が止まる。


鼓動が狂う。

呼吸が苦しい。


窓へ駆け寄る。


バスに乗り込む影。


逃げていく。


飛び降りようとした瞬間――


視界が歪む。


地面が近づき――


意識が途切れた。



目を覚ますと、夕暮れだった。


医者と看護師に囲まれている。


体には無数の管。


引き抜こうとするが、止められる。


抵抗する。


だが――薬を打たれ、再び眠りに落ちる。


夢の中で、サカの声がした。


「……タイ。俺は大丈夫だ。今は――」


そこで途切れる。



朝。


知らない部屋。


頭が痛い。

吐き気と眩暈。


体を見る。


縫われた腹。

包帯だらけの頭。

震える手足。


だが――


立ち上がる。


体は拒絶する。


それでも、押し切る。


(俺は……もう俺じゃない)


感情は消えた。


残っているのは、ただ一つ。


――サカを見つける。



地下へ向かう。


着替えと準備のために。


扉を開けると、看護師がいた。


叫ぶ前に、動く。


首へ一撃。


意識を奪う。


隠れ家へ向かう途中、倒れる。


痛みが走る。


だが止まれない。


床に頭を打ちつける。


血が流れる。


アドレナリンが上がる。


立ち上がる。


ようやく辿り着き、装備を整える。


拳銃。軽機関銃。手榴弾四つ。ナイフ。


準備完了。



病院を出る。


門の前で――ニノとすれ違う。


顔を隠し、そのまま通り過ぎる。


彼女が肩を掴む。


「すみません、タイの部屋を知りませんか?」


「……知らない」


「ごめんなさい」


彼女は去る。


俺の中に残るのは――怒りだけ。



雪の中、歩く。


その時、気づいた。


(……どこにいるか分からない)


遅すぎる。


思考が沈む。


その時――


内なる声。


「最初に戦った場所へ戻れ」


俺は従った。



近くの店でタバコを買う。


「何歳だ?」


「もうすぐ十九だ」


「証明は?」


「……必要か?」


冗談半分で言う。


「見せればいいか?」


店主は笑った。


結局、タダでくれた。



初めての煙。


むせる。


苦しい。


だが、吸い続ける。



やがて、あの場所に辿り着く。


少し変わっていた。


そして――


何かがあった。


まだ、理解できない何かが。



(第十八章・完)

第17章で起きたことについて、誠に申し訳ございません。章は毎日公開されますが、章数が26に達した場合、授業の日付は変更され、降下日は毎週土曜日に設定されます(特定の日を選択しない場合は)。読書をお楽しみください(:

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