第十五章 ― 新たな段階
俺は全速力でサカのもとへ駆けた。
そして――
その光景を見て、足が止まった。
サカが地面に倒れていた。
全身が血に染まっている。
理解できなかった。
だが近づいた瞬間、ようやく分かった。
……二十七人。
サカは、たった一人で二十七人を相手にしていた。
そのうち十七人を倒している。
残りの連中が、武器を持って彼を取り囲んでいた。
その光景を見た瞬間、俺の中で何かが変わった。
(なぜ俺は殺さなかった……)
(サカは女の子たちを守るべきだった)
(俺がやるべきだったのに)
視界がぼやける。
見えるのは――
サカだけだった。
外れた肩を、俺は自分の手で無理やり戻した。
ゴキッ――
骨が嫌な音を立てる。
痛みが全身を貫く。
それでも、俺は歩き続けた。
ゆっくりと。
ただ、サカのもとへ行くために。
背後から二人が襲ってきた。
だが、気にしなかった。
肩を殴られる。
頭を打たれる。
血が流れる。
それでも俺は――
サカを見ていた。
その時だった。
血を吐きながら、サカがこちらを見た。
「タイ……」
咳き込みながら、彼は言う。
「……生きろ……」
その言葉を聞いた瞬間――
俺は周囲を見た。
通りを二台の車が塞いでいる。
敵の数は――十人まで減っていた。
だが、俺の肩は痺れている。
腕が動かない。
その時、背後から一人が近づいてきた。
俺を殺すために。
俺は振り向いた。
そして――
思いきり蹴りを叩き込んだ。
足に。
バキッ!!
骨が砕ける音。
男は地面に崩れ落ちた。
「足が……!!」
叫び声。
俺は迷わず、顔面を蹴り抜いた。
その瞬間、残りの連中が一斉に襲いかかってきた。
だが――
もう音は聞こえない。
耳鳴りだけが響いている。
頭から血が流れ、視界が揺れる。
その時だった。
頭の奥から、声が聞こえた。
前よりも――はっきりと。
「タイ……」
「死にかけているのか?」
「いや……違う」
「お前はまだ――」
「復讐を終えていない」
その言葉を聞いた瞬間。
俺の感覚が変わった。
音ではない。
存在を感じる。
俺は血まみれだった。
両肩は外れている。
頭から血が滴り、顔の半分を覆っている。
だが――
何かが目覚めた。
敵の動きが、近づく前に分かる。
一人目が鉄パイプを振り上げてきた。
俺は瞬時にしゃがむ。
そして――
腹に蹴りを叩き込む。
男は吐きながら膝をついた。
その瞬間。
俺は足を振り上げた。
顔面へ――
ドゴッ!!
骨が砕ける音。
男は地面に倒れた。
俺はもう一度足を振り上げ――
首を蹴り抜いた。
二人目が錆びたナタを振り下ろす。
刃が俺の顔の前をかすめる。
俺は後ろへ体を反らした。
そして手首を掴む。
残った力で――
膝を叩き込む。
骨が鳴る。
男の手からナタが落ちる。
俺は肘を顔面に叩き込んだ。
男は地面に転がった。
残りは八人。
飢えた犬の群れのように囲んでくる。
そのうち二人が拳銃を向けた。
考える時間はない。
俺は横へ飛んだ。
銃声。
弾丸が肩をかすめる。
肉が焼ける感覚。
唇を噛む。
それでも前へ出る。
一人の足を掴む。
引き寄せる。
そして――
頭を地面に叩きつけた。
鈍い音。
だがもう一人が撃とうとしている。
俺は倒れた男の体を持ち上げた。
盾として。
銃声。
弾丸が体を貫く。
男の体が震え、力を失った。
俺は叫びながら、外れた肩をもう一度押し込んだ。
ゴキッ!!
骨が戻る音。
痛みが雷のように走る。
だが腕が動いた。
背後から鉄パイプが振り下ろされる。
避ける時間はない。
俺は素手で受けた。
金属が手に叩きつけられる。
指が裂ける感覚。
それでも――
俺は掴んだ。
そして引き寄せる。
怒りを込めて拳を叩き込む。
頭蓋が砕ける音。
そのまま鉄パイプを奪い取った。
振り下ろす。
一度。
二度。
三度。
男は動かなくなった。
残り三人。
心臓が戦鼓のように鳴る。
体は限界。
それでも俺は前へ出た。
鉄パイプを振るう。
一人の胸を打ち抜く。
男は地面に沈んだ。
次の男の腕を折る。
そして――
こめかみに一撃。
静かに倒れた。
最後の一人。
男は後ずさる。
だが、逃がさない。
俺は鉄パイプを捨てた。
首を掴む。
両手で。
目を見つめながら、力を込める。
男はもがく。
だが、やがて手が落ちた。
完全に動かなくなる。
静寂。
俺は立っていた。
体中が傷だらけ。
血が止まらない。
周囲には――
死体。
路地に散らばっている。
俺は一歩踏み出した。
もう一歩。
だが――
体が崩れた。
地面に倒れる。
呼吸が重い。
痛みが体を食い破る。
それでも――
俺は笑った。
生き残った。
その後。
誰かに担がれている感覚があった。
治療されている。
気がつくと、見知らぬ部屋だった。
まるで病院のようだ。
周囲を見回す。
外は暗い。
どうやら夜らしい。
だが俺は、体のことなど気にしなかった。
頭にあったのは一つだけ。
サカ。
体は悲鳴を上げている。
動くなと叫んでいる。
だが俺は立ち上がった。
痛みを無視して。
ただ、サカの状態を知るために。
部屋を出る。
廊下へ出た。
そこで――
看護師を見つけた。
俺は尋ねた。
……聞かなければよかった。
(第十五章・完)
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