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タイの物語  作者: Shadow
第I部:第II部:過去の根源と真実
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第十四章 ― なぜ俺ばかりが

その時だった。


男の一人が少女を人質に取り、喉元にナイフを当てた。


俺の視線は、ゆっくりとその男に向く。


次の瞬間――


バシッ!!


頬に強烈な衝撃が走った。


振り向くと、サカが俺の胸ぐらを掴み、怒鳴っていた。


「このバカ!!

見えねぇのか!? ナイフを持ってるんだぞ!!」


その声で、俺は我に返った。


「……ありがとう。正気に戻った。」


俺はゆっくり前に出た。


そして言った。


「お前だ。人質を取ってる奴。」


男の手は震えている。


「よく聞け。

一度しか言わない。」


静かに言う。


「その子を離せ。

代わりに俺を取れ。」


男は叫んだ。


「ふざけるな!!

お前、仲間を二人も倒しただろ!!」


俺は他の連中を見た。


そしてもう一度、男を見る。


殺意を込めた視線で。


「その子を離せ。」


低い声で続ける。


「お前の仲間を盾にしてやる。

だが――」


一歩踏み出す。


「もし、その子を傷つけたら。」


「ほんの少しでもな。」


「その場で、お前を殺す。」


男の手は激しく震えていた。


ナイフが少女の首に触れる。


そして――


スッ


小さな傷ができた。


「っ……!」


少女が痛みに声を上げ、体をかがめる。


その瞬間。


俺の視界から、他のものが消えた。


残ったのは――


その男だけだった。


少女が首を押さえてしゃがみ込んだ瞬間、俺は踏み込んだ。


拳を振り抜く。


ドゴォッ!!


ただのパンチじゃない。


男の体が宙に浮いた。


そして――


ドサッ!!


地面に落ち、そのまま気絶した。


その隙に、サカが残りの連中を片付けた。


すべて終わったあと、サカが俺の前に来る。


怒りに満ちた顔だった。


「このクソ野郎……!」


そして――


ドンッ!!


強烈な拳が俺の顔に入った。


今でも忘れない一撃だった。


「もしあの子が死んでたらどうする!!」


サカは怒鳴る。


「お前の訓練はな――

ただの訓練じゃ済まねぇぞ。」


少女が近づいてきた。


「ありがとう、タイ。」


俺は驚いた。


(まだ覚えていたのか……?)


何も言えず、黙っていた。


すると、眼鏡の少女がニヤニヤしながら言う。


「ニノ、いい趣味してるじゃない。」


ニノは真っ赤になった。


「ち、違う!!

そんな意味じゃない!!」


慌てて意味不明なことを言い始める。


それを見て――


俺は笑った。


気づけば、声を出して笑っていた。


……いつぶりだ?


わからない。


ただ一つわかる。


本当に久しぶりに笑った。


ニノが近づいてきた。


「ちょっと待って!!

さっきのは違うから!!」


「彼女の言葉、気にしないで!」


俺は黙って彼女の首に手を伸ばした。


傷を確認するためだ。


その瞬間。


「っ……!」


妙な声を出した。


……その声。


母さん以外で聞いたことがない声だった。


次の瞬間。


パシン!!


頬を叩かれた。


ニノは顔を真っ赤にして走り去った。


さっきの眼鏡の少女が近づく。


「運が悪かったわね。」


肩をすくめる。


「もう二度とやらないことね。」


俺は本気でわからなかった。


「俺、何か悪いことしたか?」


サカは腹を抱えて笑っている。


周りの連中も、俺を「何も知らない奴」みたいな目で見ていた。


俺は苛立って叫んだ。


「だから何が悪かったんだよ!!」


誰も答えなかった。


少女たちは礼を言い、去っていった。


最後に眼鏡の少女が言った。


「大丈夫よ。

またチャンスはあるわ。」


その意味は――


大人になるまで理解できなかった。



俺たちがその場を離れようとした時だった。


パトカーの音。


警察が現れ、辺りを包囲した。


俺とサカは連行されそうになる。


サカが怒鳴る。


「おい!!

何の権利があって俺たちを捕まえる!!」


警官が言う。


「通報があった。」


「武装した男たちが

少女たちを誘拐しようとしている、とな。」


サカは黙った。


だが、俺は違和感を覚えた。


(どうして“少女”ってわかった?)


俺たちは――


一人の声しか聞いていない。


警官が俺の腕を掴む。


その手を振り払った。


「……あんた、本当に警官か?」


男は睨む。


「もちろんだ。

これで満足か?」


「さあ、手を出せ。」


俺は拒んだ。


「どうして通報した奴は

“少女たち”って知ってる?」


「それに……」


「どうしてこんなに早く来られた?」


サカも気づいた。


次の瞬間。


サカが叫ぶ。


「タイ!!」


「狙いは女の子たちだ!!」


「お前は行け!!

ここは俺が何とかする!!」


俺は走った。


だが――


路地に入った瞬間。


五人の男が立っていた。


全員ナイフを持っている。


そして一人は――


拳銃。


太陽は真上。


灼熱の光が路地に降り注ぐ。


狭い通路。


壁が動きを反響させる。


俺の前には五人の殺し屋。


刃が太陽の光を反射する。


死が、静かに待っていた。


俺は武器を持っていない。


だが、目は拳銃の男を離さない。


次の瞬間。


俺は動いた。


地面を蹴る。


一瞬で距離を詰める。


膝蹴りを叩き込む。


ドン!!


拳銃が宙を舞った。


他の連中が一斉に襲いかかる。


俺は後退した。


体が光と砂埃の中で回る。


すべての動きが計算されている。


そして――


地面に鉄パイプを見つけた。


拾う。


振るう。


金属と刃がぶつかる。


キィン!!


火花が散る。


路地全体が震えるようだった。


戦いは狂気に変わった。


一人を蹴り飛ばす。


瓦礫の中へ倒れる。


もう一人のナイフを鉄パイプで砕く。


連中は包囲しようとする。


だが俺は止まらない。


壁。


鉄パイプ。


木材。


すべてが武器になる。


俺は笑った。


鉄パイプを構える。


「来いよ。」


静かに言う。


「お前らの力――

見せてみろ。」


そして俺は突っ込んだ。


誰にも止められない攻撃で。



気づけば、全員倒れていた。


俺は息を荒くして立っている。


体は限界。


太陽が頭上で燃える。


それでも――


戦いは終わった。


俺は学校へ向かった。


少女たちは無事だった。


胸を撫で下ろす。


だが――


その瞬間、思い出した。


サカ。


まだ戦っている。


俺は全力で戻った。


そして――


見てしまった。


見たくなかった光景を。


(第十四章・完)

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