責務
渾身の一撃のその瞬間、
怪物の肉壁が腕にまとわりつく。
すぐに振り払うが、
半歩遅れた。
案の定、斬撃が飛来する。
耳元で風が切り裂かれる音が重たく響く。
流石に部が悪い。
無数の斬撃と大きな化け物に対抗する術はない。
だから、
……だから今は生き残ることだけ考えろ。
飛来する斬撃を無我夢中で避ける。
腕を掠める風が血を流す。
血に飢えた化け物の大群がこちらに反応する。
一瞬でも長く生き残れ。
心臓さえ破壊すれば逆転できる。
怪物はより一層大きくなり、辺りの斬撃も勢いを増す。
チームBのリーダーとして、
組織の一員として、
俺として、
誰一人死なせない。
より一層数を増した斬撃が、化け物諸共こちらを殺しにかかる。
全ての斬撃が俺に向かう。
…やっぱり、俺は1人じゃ勝ちきれない、か。
再び能力者の方に目を向ける。
だが、それでもいい。
瞬間、能力者の後ろから1人の少年の影が現れた。
「ハルト、好きなように暴れな。」
刹那、能力者が振り向くよりも、そして斬撃よりも速い連撃が能力者を襲う。
「……予想より早かったな。」
頬を流れる血を拭い、能力者の間合いまで距離を詰めた。
***
もし、リーダーがいてくれたら、
この戦場で私は何度そう願っただろう。
リーダー、ナイが居てくれたらもうとっくにこの戦いは幕を閉じていた。
あの人は異次元だ。
一方、私はあろうことか能力者を取り逃した。
チームメイトは全員ボロボロだ。
身体中の痛みが胸を刺す。
私にはセツのような力も、アリスのような立ち回りも、アルタのようなスピードも無い。
この身体で立ち上がっても、
いや、立てるなら立つしかない。
まだ身体は動く。
「みんな、安全な所に避難してくれ。」
遠くから斬撃の音が響く。
「俺も行きますよ。リーダー。」
隣からセツの声が聞こえる。
ボロボロな身体でもまだ立ち上がる。
「私、まだ戦える。」
アリスも立ち上がる。
「リーダーのことは信じてます。だから、」
アルタが一歩前に出る。
全員の目の色が変わる。
「…分かった。全員、勝ち残るぞ。」
真っ直ぐ能力者の方へ向かう。
「アルタ。アリス。相手は今、他の人と交戦中だ。その隙を2人で突いてくれ。」
「分かった。」
「任せてください。」
「セツ。トドメは任せた。だが、あのデカい能力者の上で待機していると見つかるリスクがある。だから、下で待機していてくれ。それと、」
「分かってますよ。絶対に死にませんから。」
「頼んだぞ。みんな、幸運を祈る。」
各自、指定位置に向かう。
アルタが能力者に一撃目を与えた今。
作戦開始だ。




