開戦
拘束された相手に駆け寄る。
周囲の糸が波を打つように踊る。
握っていた糸から手を離した。
これでいい
波打つ糸を蹴り飛ばしながら距離を詰める。
そして
攻撃一歩手前で
能力者の拘束が外れ、距離を取られる。
だが、能力者は気の悪そうな目つきでこちらを睨む。
「めんどくさいことしてくれるね。」
瞬間、不規則に暴れる糸に囲まれる。
足元の糸は晴れていた。
檻は地面を抉る勢いで暴れている。
「じゃあ、精々足掻いて死にな。」
そう吐き捨てて能力者はどこかへ行こうとする。
檻は激しく轟音を立てながら、徐々に狭まってゆく。
目を閉じて落ち着いて深呼吸をする。
……そこだ
その一瞬を見逃さず、糸の間を駆け抜ける。
「本当に厄介だね。まぁもう関係ないか。」
視界が揺らぐ。
身体が一気に熱を帯びる。
「いったい、何を、」
「攻撃に毒を混ぜた。苦しいでしょ?」
淡々と告げられる。
身体が重い。
それでも前に出て距離を詰める。
瞬間、身体が宙に浮いた。
「そこで大人しくしてて。」
能力者が奥へ歩みを進める。
その遠くの空には
大きな繭と空を覆う怪物がいた。
***
俺達チームBは今、『怪物』と対峙している。
倒壊したビルも森も人も、全て飲み込む勢いで広がる。
2人を庇うようにして能力者を切り落とす。
能力者の一部だった物が生々しい音を立てて落ちる。
能力者の猛攻に呼応してこちらもスピードを上げる。
「シオン、急所は分かりそうか?」
「うん、大まかな位置は分かった、けど、」
「大丈夫、私とガルドさんで戦力を削ぎ落とす。」
その言葉と共にノエルが前に出る。
「……護衛は俺に、いや、俺達に任せてくれ。」
「分かった。…じゃあ、行くよ。」
俺達は能力者の上に乗り、急所を目指した。
***
私は今、絶望の中に立っている。
命の縁に立っている。
空を覆う怪物
どこまでも大きな繭
足元には無数に散りばめられた糸
そして目の前からは、
斬撃が飛来する。
地面を刈り取り、建物までも切り落とす。
周囲に血の匂いが漂う。
リーダーがいれば、きっと、
「キョウさん、俺達、」
怯えた声でセツが話しかける。
「安心しろ、俺がいる。」
ない物ねだりしても意味がない。
能力者の方へ視線を戻す。
「みんな、行くぞ。」
セツが正面から堅実に距離を詰める。
アリスが裏から回り込む。
アルタはスピードを上げて正面から攻める。
「チームL、一斉攻撃だ。」




