悪夢
妙な夢を見た気がする。
1人ベッドの上で目を覚ます。
まだ寝てから1時間ほどしか経っていない。
にしても昼なのに随分と静かだな。
チームメイトが全員寝ているからだろうか。
……いや、全く気配を感じない。
街の音すら聞こえてこない。
飛び出すように外に出る。
その瞬間、辺りを夜の闇が包んだ。
遠くの大きな嵐が暴れている。
『危険度3、エリア内に能力者が出現しました。ARCの指示に従い、直ちに避難して下さい』
よく聞けば警報音が鳴り続いている。
考えるよりも先に足が嵐の方へ向かっていた。
近づくほど空気は重たく熱くなる。
「久しぶりだね、お兄ちゃん。」
風の音の中で、耳元でぼやけることもなくそんな声が聞こえた。
その言葉に気づき、振り向いた瞬間、後ろにはボロボロになった研究所とおぼつかない足取りの人間がいた。
刹那、左肩に激痛が走る。
足元を見ると胸元を貫かれた少女の死体があった。
呼吸が苦しくなる。
ここにあった命は全部、
僕が救えなかった命だ。
研究仲間だった彼が、おぼつかない足取りで、虚な目で、こちらに歩いてくる。
その指先が左肩に刺さった棘を抜くように伸びる。
その表情の奥にあの日の優しさが見えてしまった。
指先が槍に触れた瞬間、僕の身体の中で破片が暴れた。
ぽとり、という音と共に左腕の指先の感覚が消えた。
思わず地面に膝を付く。
少女の死体が目に入り、顔を上げてしまった。
「…ぇ、?」
複雑に絡まった糸が、人のような物を吊っていた。
無数の遺体の中心に大きな繭が鎮座する。
右手の上に糸が落ちる。
これは、夢だ、
悪い夢だ、
そう心の中で唱えても糸くず一つ動かすことはできない。
ぼんやりとし始めた視界で遠くの繭を見つめる。
繭はゆっくりと動き、羽化するその時を待っている。
ダメだ。
その瞬間、身体を縛っていた糸が解けたように感じた。
膝を立てる。
足元に絡まった糸を退けて走る。
指先に幻影の感触が蘇る。
遠くからも足音が響く。
その足音と閃光が繭に突き刺さる。
手が繭に触れようとする。
その瞬間大きな音と共に世界は崩れた。
目が覚めるとそこはベッドの上だった。
あの夢を鮮明に覚えている。
時計を見るともうすぐ夕飯の時間という所だった。
「アーク。起きてる?」
部屋の外からミラさんの声が聞こえる。
「今起きました。すぐ行きます。」
返事をして軽く布団と髪を整えてから部屋を出た。




