微熱
あの事件から兄さんは戦えなくなった。
現場に戻れない兄さんに変わって僕が研究の為に現場に戻ることにした。
車椅子に座りながらいつも通り見送る兄さんの顔が頭から離れない。
ポケットから鍵を取り出し、寮の扉を開ける。
「ただいま。」
「あっ!おかえりアーク。」
扉を開けると既にミラさんが玄関で待っていた。
「アークさん⁈おかえりなさい。向こうは一段落ついたのですか?」
リビングの方からノエルさんが顔を覗かせる。
「はい。色々とありまして、」
「そうでしたか、本部付近で能力者が続々と発生していると聞いていたので心配でしたがご無事で何よりです。」
能力者に付けられた傷は数日前に塞がっていた。
「こっちの様子は最近どうでしたか?」
「私たちの方はいつも通りだったよ。能力者とも稀に危険度0や1の処理をするくらいしか関わらなかったからね。」
「そうですか。みなさんも元気そうでよかったです。」
他愛のない雑談をする。
「ねぇ!研究ってどんなことを研究していたの?」
先ほどからウズウズしていたミラさんがそう聞いてきた。
ノエルさんも興味深々な様子でこちらを見てくる。
「能力者の細胞や遺伝子とかを調べたりとか、ですかね。」
2人がより一層目を輝かせる。
「あの!能力者にしか見られない特徴とかあるんですか?」
「ありますよ。例えば運動神経に少し不自然な痕が見えたり、身体中の組織が少し他の人より柔軟になっていたり、とかの特徴がありましたね。」
2人はその話を聞いてより一層興味が湧いたみたいで、ミラさんに至ってはメモ帳を取り出した。
その後も2人は興味深く僕の話を聞いてくれた。
なんとなくそれが嬉しかった。
それと、どことなく懐かしくも感じた。
「凄い、研究部隊ってそんなことまで研究するんですね。」
「そうなんです。なので何か気になることがあったら研究部隊の人に聞いてみると面白い発見があるかもしれません。」
雑にまとめてしまった最後の言葉から兄さんの声が聞こえた気がした。
「ありがとう。色んなことが知れて楽しかった。」
「こちらこそ、色んな考え方が見られて楽しかったです。」
その言葉を最後に僕の研究発表は終わった。
それとほぼ同時に玄関の扉が開く音がした。
「帰ってきたぞ。」
「ガルドさん!研究部隊がどんなことを研究しているか知っていますか?」
だけど、まだ研究発表会は続くようだった。
***
「ナイ、入ってもいいか?」
研究室の外からゼノンの声が聞こえる。
「どうぞ、好きに入ってくれ。」
そういうと、ゼノンは研究室に入ってきた。
「さて、何の用でここに来たんだい?」
「現場部隊のリーダー会で出てきた内容を共有しに来た。」
ゼノンのその言葉に少し驚いた。
「現場部隊以外の人が聞いても問題はないのかい?」
「どちらにせよ情報部隊から情報は受け取れるだろ。」
「強引だね。まぁいいさ、こちらとしても情報はいくらあっても困らないからね。」
ソファに腰を掛けたゼノンに身体を向けて早速本題に移ってもらう。
「どこから話せばいい?」
「私が知らないであろう情報ならなんでもいいさ。」
「そうか、なら1つだけ、」
そう言うとゼノンは私にその言葉を告げる。
「危険度4が予言された。」
灰の残り香が鼻の奥を突いた。




