掌握
兄さんの声に反応してお互いに手を止める。
「頼んでいた研究はどうしたの?」
「これもその一環さ。どうだい?いい情報は手に入ったか?」
兄さんはアルタさんの方に目を向ける。
その視線の先のアルタさんの目には既に獣はいなかった。
「はい。ありがとうございます。」
「感謝される筋合いはない。ただの利害の一致だ。」
2人だけで会話が続く。
「兄さんはどんな目的でここにきたの?」
「君の力の制御の為だ。使わないでも戦えるようにしておきたいからね。」
「兄さんは言われたくないよ。」
「私には使わないといけない理由があるからね。」
「兄さんはもうただの被験体じゃないんだよ。」
兄さんをまっすぐ見つめる。
「ちゃんと大切にしているさ。」
よく見ると兄さんの足は少し震えている。
『危険度2、エリア内に能力者が出現しました。ARCの指示に従い、直ちに避難して下さい』
「悪いが仕事が入った。先に戻って研究しててくれ。アルタ君は私と一緒にきてくれるか?」
アルタさんの目が変わる。
「僕も行くよ。」
「君はここの管轄じゃないだろ?」
「力の制御の検証に丁度いいと思っただけ。おしゃべりは後にして行くよ。」
半ば無理矢理能力者の所に行く口実を作れた。
発生地点は建物のすぐ外だった。
「今回の能力は"磁力"とやらだったかな?」
能力者を見つけたが、既にガルドさんとゼノンさんが応戦していた。
「2人ともお疲れ様。避難誘導の方はどうなっている?」
「既にチームAの者に任せている。」
「ここは俺たちに任せてくれ。」
周囲に強い風が吹く。
全ての物が能力者に吸い寄せられていく。
僕らはその流れに沿って能力者と距離を詰める。
強風が止まると同時に能力者に集まった物体の塊がガルドさんの方に飛来する。
『________ドオオォォォオオオオン!」
刹那、物体は轟音を立てて崩れる。
「君たちだけに任せはしないさ。」
気づけば兄さんはガルドさんの前にいた。
「やるな…」
スピードを上げて2人は能力者に正面から突っ込む。
虚な目をした能力者はすかさず周囲の物体で防壁を作る。
僕とアルタさんもそれに続くように前に出る。
身体に力を入れすぎ無いように丁寧に進む。
2人の攻撃が壁に触れようとした瞬間、大きな力が身体を下に引っ張った。
思わず膝を付く。
その隙を突くように壁の役割をしていた物体は細かく分かれてこちらに飛来してきた。
なんとか力を入れて避ける。
体勢は崩されたがまだ戦える。
僕が能力者の方をみると既に能力者はゼノンさんに狩られていた。




