人格
「着いたよ。ここが新しい私たちの寮だ。」
私はそう言って施設内の一室を指差した。
「ナイさん、ここって使っていい所なんですか?」
「あぁ、実はここはチームLの別の拠点として用意されている部屋なんだ。他のチームにもそれぞれ割り当てられている。試験の時に一度似たような部屋で仮チームメイトと合流しただろ?」
アルタは納得した表情を浮かべる。
「さて、入るぞ。」
「試験の時とはかなり違いますね。」
「そりゃあ試験で使っているのは旧チーム室だからね。ここの施設はあそこよりも新しいよ。」
一室とは言ったものの実際には寮と同じくらい広い。
「ナイさん、僕荷物持ってきてないですよ。」
「キョウが既にこっちに荷物を移してくれているとのことだ。私の荷物は研究部隊の方に預けてあるから君はここで荷解きしておいてくれ。間取りは変わらない筈だから安心してくれ。」
そう言って私はその部屋を離れ、研究室へ向かった。
***
ナイさんが行ってしまい1人になった。
部屋は無音だった。
『なぁ、あのナイって奴何を企んでるんだ?』
頭の中から声が聞こえる。
「僕に聞かないで。」
今度は僕の口から声を発する。
『アイツのことはあまり信用するなよ。』
「無茶言うな。あの人はチームリーダーなんだから。」
頭の中の声と会話をする。
「それより自分の部屋に行って荷物広げるよ?」
『じゃあ俺の希望通りに置いてくれよ?』
「はいはい。その代わり大人しくしててよ。」
『割に合わねぇだろそれ。』
「試験の時は焦ったんだから。」
『でもあのお陰で受かったんだから寧ろ感謝しろよ』
「真偽は不明でしょ?」
頭の中の声と雑談をしながら荷物を広げる。
「……危険度4がくるって言ってたよね。」
『だからアイツのことはあまり信用するな』
「警戒はしておくに越したことはないでしょ?それに君も最近動けてなくて鈍っているだろうからね。」
『誰の所為だと思ってんだ。』
「ねぇハルト。アークについてどう思う?」
『あ?アーク?あーあのガキな。』
「君って相変わらず口が悪いよね。」
『アイツはよく分からん。だけど、あのナイってヤツに関わってるんだろ?警戒しとけ。もしかしたら次はこの身体が研究に使われるかもしれないだろ?』
「今どき多重人格者を態々研究する人はいないでしょ。しかも能力者とは全くの無縁だからね。」
適当に相槌を打ちながらベッドを動かす。
『バカ!ベッドはそっちだって言っただろ!』
「そんなに言うなら君がやる?今は人がいないから入れ替わってもいいよ?」
『てめぇはてめぇで何を企んでる?』
「楽をしたいだけだよ。」
『……悪いが遠慮する。配置に文句は言わねぇからやってくれ。』
「分かってくれたならいいんだよ。ハルトは対人関係苦手だからね。」
『うるせぇよ!』
そんなこんなで部屋は前の寮より住みやすい間取りになってくれた。
「ねぇハルト。」
『なんだ?』
「明日、アークさんに会ってみない?一応名目としては研究部隊の護衛だから行けないことはないよ?」
『……好きにしろ。俺は引っ込んでる。』
「分かった。」




