最強
兄さんと話していて色々と分かったことがある。
あの人はいつもそうだ。
1人で全てを背負おうとして僕らには何も委ねてくれやしない。
心の中で愚痴を溢しながらも研究を続ける。
『危険度2、エリア内に能力者が出現しました。ARCの指示に従い、直ちに避難して下さい』
その音を聞き、研究を直ちに止め、出動の準備をした。
「アーク、君はここの管轄ではないだろ?大人しく避難だけしていてくれ。」
「……兄さんだけで戦えるの?」
「安心しろ」
それだけ言った兄さんは白衣を脱いで現場に向かった。
「兄さんのバカ…」
小さく呟き、研究所の人達と安全な場所まで避難する。
***
「よかった。まだ被害は出てないようだね。」
アーク達を置いて現場に直行した甲斐があった。
足の筋肉が震える。
情報によると能力は"魚群"とやらだったかな。
目を凝らして辺りを見渡す。
私とあの能力者以外には誰もいない。
水溜りから水飛沫がでる。
「おかしいな、今日は雲一つない晴れのはずなんだが、」
瞬間、その水溜りから魚群のような物が迫ってくる。
そのまま突っ込むか。
震える足をいじめるように最高速度で魚群に向かって走る。
刹那、魚のような物体は一つ残らず地に落ちてチリのように消えていった。
私の手は能力者の首元の寸での所で止まった。
「能力について知っていることを教えろ」
虚な目をした能力者に問いかけた。
低い唸り声と水飛沫の音がする。
先程の比ではない量の魚群が来たのだろう。
あの子にああは言った物の、私はこれに慣れてしまっていた。
全ての音が止まり、能力者の首が地面に落ちる。
服に返り血が思いっきりかかってしまった。
「ナイさん!大丈夫ですか⁈」
「その声はアルタ君だね。随分早く来たね。見ての通りさ。君には見せたく無かったがね。」
新人の彼にこんな残酷な物は見せたくなかった。
今、新人はどんな顔をしているのだろうか。
上手く焦点を合わせられない。
「片付け。手伝ってくれるかい?」
視力が少し戻ってきて初めて分かった。
新人の顔は恐怖で染まっていた。
「酷な願いだと思うなら君は寮に帰ってもいい。寧ろ、君にはやらせたくない。」
「いや、やらせていただきます。」
「…そうか。頼もしい新人だ。くれぐれも無理はするなよ。」
仕事は死体処理だけだから本当にすぐ終わる。
「リーダー!アルタ!無事だったか⁈」
また人が来た。
多分キョウだろう。
「この通り傷一つないよ。済まないねキョウくん。君にはいっぱい苦労かけさせているだろう?」
「いえ、皆さんが無事なら何よりです。」
「少し頼み事をしてもいいかい?この死体の処理をお願いしたい。新人にやらせるのは気が引ける。」
「分かりました。」
「それと、そろそろリーダーと呼ぶのも控えてくれ。君の方がリーダーらしいじゃないか。」
「そう言われると光栄です。しかし、私のリーダーはあなたしかいません。」
「…そう、じゃあまたな。研究に使えそうな部分は既に抜いておいたからそのままいつもの所に持って行ってくれ。それじゃあセツとアリスにもよろしく伝えておいてくれ。」
「えぇ、また会いましょう。リーダー、」
そう言ってキョウとお別れをした。
「アルタ君は少し残ってくれないか?君に頼みたいことがあるんだ。」
「…分かりました。」
そうして私たちは研究所に向けて歩を進めた。




