隠蔽
僕が研究部隊に派遣されてから2週間ほどが経過した。
まだ新しい情報は手に入らない。
横目で兄さんを見る。
兄さんはこちらには目もくれず研究に没頭している。
兄さんには聞きたいことが色々とある。
だが、私用の質問をできる空気でもない。
また黙々と研究を続ける。
なんだかこう言ったことも久しく感じられる。
兄さんと研究する時はずっと隣同士だった。
あの頃も兄さんとは殆ど研究関係の話しかしていなかった。
実験結果の何万にも及ぶデータをまとめる。
面白いことに身元不明な能力者も今までの能力者も違いが全くと言っていいほどわからない。
ただ、能力者と普通の人間には少しだけ細胞に変化が見られている。
その違いが何を意味するのか、考えれば考えるほど頭が痛くなる。
「アーク、聞きたいことがあるのだが問題ないか?」
いきなり兄さんが僕に質問をしてくる。
雰囲気的に研究関係の話題では無さそうだが、
「いいよ。なんでも聞いて。」
久々に会ったのだから少しそんな話題をしてもいいだろう。
「君は現場部隊でどれほど戦ってきた?」
「何を調べたいのかわからないけど、まだ1体の試験用ロボと2人の能力者としか戦ってないよ。」
兄さんの聞き方はとても分かりやすい。
これは雑談ではなく研究の一環の質問なのだろう。
「僕も兄さんに色々聞いていい?」
「答えられる範囲ならね。」
「兄さんって今はチームリーダーをしているんだよね?」
「そうだね。」
「最近この辺に戻ってきたってことは兄さんはチームEかLかSのリーダーってことだよね?」
淡々と言葉を続ける。
「試験の合格発表直後に別室に7人のチームリーダーと7人の合格者が集められた。」
「私がどこにいたのかって質問かい?」
「答えてくれる?」
兄さんは僕に色々と隠し事をする癖がある。
それ故か兄さんのことは色々と気になって仕方がない。
「ノヴァの研究所に行っていた。遺品と遺言を調べるためにね。そこには彼の研究の成果が書かれていたさ。全部私の部屋に保管してあるから気になったなら後で見にくるかい?」
「……何を隠しているの?」
「心外だね。私は特に何も隠してはいないよ。ただ聞かれなければ答えないだけさ。」
「じゃあもう一つ聞いてもいい?」
こんなに詳細に答える時は大概何か別の何かを隠している時だ。
「仕方ないな。だが、その前に私からも一ついいか?」
兄さんはいつもと声を変えず、淡々と話し続ける。
「現場部隊から抜けてくれ。」
一瞬何を言っているのか理解できなかった。
「現場部隊に何かあるの?」
このタイミングで告げるということはそうだとしか思えない。
「いや、違うね。ただ君には研究者として生きて欲しいんだ。君にはそれほど研究者として価値がある。」
兄さんは隠し事はしても嘘は吐かない。本当にズルい人だ。
「悪いけど、その理由じゃ現場部隊を降りることはできない。それに、兄さんはまだ何か隠しているよね?」
「どうだろうね。」
「降りると言わないとそれ以上は言わないつもり?」
「そんなズルい取引は持ちかけないさ。君にも君なりの考え方があるだろうからね。」
「じゃあ教えてよ。何を隠しているのか。」
「悪いがそれはできないな。」
「それなら僕だって現場部隊を抜けることはできない。」
いくら兄さんの頼みといえどそこだけは譲れない。
「まあ分かってたさ。だが、これだけ言わせてくれ。」
兄さんの声色が変わった。
「その力をあまり使いすぎるなよ」




