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第7話 「痕跡」

震える指先で、本棚の奥に乱雑に突っ込まれていた一冊のノートを引き抜く。

無地のノートを開くとすぐ目に飛び込んできたのは黒インクで走り書きであった。


最初の数ページは平凡だった。


『テスト勉強しなきゃ』

『歌の録音、上手くいかない』

『バイト代、来月も少ない』


まるで普通の女子大生の生活。

だけどページをめくるごとに、文字のトーンが変貌する。


『配信ボタンを押すと、耳鳴りがする』

『配信中突然意識が沈む』

『昨日の配信アーカイブ見返したけど私の笑い方じゃない』


筆圧が強くなり、文字がじわりと滲んでいる。

さらに先をめくると、書き殴るようにこう記されていた。


『知らない誰かが、私の体を使って話してる』

『寝ていたはずなのに、机の前に座っていた』

『気づいたらみんなの前で喋っていた』


最後の方は、文字が震えて判別しづらい。

それでも、決定的な一文だけははっきり読めた。


『――お前は誰だ』

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