第11話 「Re:弱者、再び配信中」
部屋の静けさが耳に重くのしかかる。
カーテンの隙間から差し込む朝の光も、どこか冷たく感じる。
――一人でいるのが怖い。
細い手が自然にマウスへ伸び、配信ボタンを押す。画面に自分の姿が映ると、コメント欄が昨日と同じように流れ始めた。人気配信者というのは伊達じゃない、配信をつけると一瞬でコメントが流れ出す。胸の奥で、わずかに安堵が芽生える。
【おはり〜!】
【昨日は大丈夫だった?】
【今日もたまらん】
でも次の瞬間、画面がひりつくように目に入った。
【なんか昨日から様子変じゃね?】
【声とか動き、ちょっとおかしいよね】
【もしかして、昨日酔ってた?w】
背筋がぞわりと冷える。
……やっぱり気づかれてるのか。
昨日の変なポーズや動きが、アバター越しなのに視聴者に読まれている。仮に俺が視聴者の立場でも似たような疑問を持つはずだ。推されている立場になって初めてわかる、決して推している立場では気付けない景色だった。
俺はぎこちなく手を振り、声を絞り出す。
「え、えっと……きょ、今日は……元気……だよ……!」
【wwww】
【元気そうで安心したw】
【でもやっぱ昨日より面白いw】
【莉ちゃん、なんか昨日からキャラ変わった?】
……いや、俺が変わったんだってば!
それでも視聴者たちは、違和感を楽しむようにコメントを流してくれる。
怖さと笑いが交錯する、不思議な安堵感。
「……大丈夫、今日も、なんとかなる……!」
ぎこちなく宣言すると、コメント欄が一斉に反応。
【がんばれ莉ちゃん!】
【面白いwww毎日が神回になるなw】
【かわいすぎて死ぬ】
画面の向こうに、誰かが確かにいる。
――怖さも、可笑しさも、これで少しだけ和らぐ。
雨宮莉の体で過ごす朝、視聴者たちのコメントが、今の俺を支えているのを感じた。




