第309話 「普通に闘っていては勝てませんわ」
──だっ!
勝利を胸に秘め、青牛鬼王を倒すべく全力で走り出すラミス姫。
ラミス姫達が"王の名を持つ獣"二体の牛鬼王に勝利するには、二つの条件を満たさねばならない。
──その、一つ目とは。
リンとミルフィーが時間を稼いでいる間に、ラミス姫が弱い方である青牛鬼王を倒す事である。
二体の牛鬼王の力には、かなりの差があった。
青牛鬼王は、"白虎の巫女"である姉リンに匹敵する程の力を持ち。
赤牛鬼王は、人狼王〈第三形態〉と母クレア以上の強さを持っていた。
まず弱い方の青牛鬼王を倒さない限り、ラミス達が赤牛鬼王を倒し勝利を得る事など、決して敵わない事だろう。
──ズガガガガガガガガガガッ!!
ラミス姫の拳が光り、流星となって牛鬼王に降り注ぐ。
全力で無数の攻撃を叩き込むラミス姫だが……。その牛鬼王の強靭な装甲と再生力の前に、ラミス姫の攻撃は全くと言っていい程通じてはいなかった。
青牛鬼王の装甲は、豚王程の硬さは無い。……しかし、その再生力が尋常では無かった。
凄まじい速さで再生し、与えた攻撃を一瞬にして回復する古の怪物青牛鬼王〈ブルーミノタウルスキング〉。
──ドゴォ!!
「ぐうっ!?」
牛鬼王の一撃を受け、激しく吹き飛ばされるラミス。
……その一方で牛鬼王の手痛い一撃を受けたラミス姫は、たった一回の攻撃だけで立ち上がる事さえ困難な状況へと追い込まれていた。
「くっ、流石ですわね……。」
当然ではあるが青牛鬼王の強さは───。
力、速さ、装甲、再生力───。その全てが、ラミス姫の実力を遥かに上回っていた。
とてもではないが今のラミス姫が、まともに闘って勝てる相手では無い。
普通に闘っていては───。
……ラミス姫は瞳を閉じ、ゆっくりと呼吸を整える。
「仕方ありませんわね。この技は出来れば狼さんの第四形態用に、最後まで取って置きたかったのですが……。そうも、言ってられませんわね。」
「ブモッ、ブモォオッ!?」
突然震えだし、怯え始める青牛鬼王〈ブルーミノタウルスキング〉。これからラミス姫が放つ技に何かを感じ、恐怖に怯えているのだろう。
豚王程装甲が硬くなければ、何一つ問題無い。後は青牛鬼王の速さを、ラミス姫が一瞬だけ上回れば良いだけの話である。
「ふふっ……。"とっておき"を見せて差し上げますわ。」
美しい髪を風で靡かせながら、不敵に笑うラミス。
「ブモッ、ブモォォオオオー!!」
ラミス姫の圧倒する闘気の前に、死の恐怖を感じ取り悲鳴を上げる古の怪物青牛鬼王〈ブルーミノタウルスキング〉。
そしてラミス姫が、その目を見開いた瞬間───。
"王の名を持つ獣"青牛鬼王は、その場にドサリと崩れ落ちていった。
「プリンセス"暴風"!!」




