第304話 「拳が、うずうずしてしまいますわ」
「フォーゲル王子が持っている、クリスタルの数は三つ……。それで間違いないかしら?」
「間違い無い。僕が所持しているクリスタルは、この三つだけだ。僕は、黄色のクリスタルなんて持っていない。」
ナコッタ姫の問いに答え、フォーゲル王子は所持していた三つのクリスタルを差し出した。
古の怪物人鳥〈ハーピー〉を召喚する"透明"のクリスタル。
古の怪物蛇〈バジリスク〉を召喚する"白色"のクリスタル。
古の怪物人狼〈ウェアウルフ〉を召喚する"赤色"のクリスタル。
姉ナコッタは三つのクリスタルをじっと見つめ、そしてフォーゲル王子に詰め寄った。
「ではフォーゲル王子。貴方の胸ポケットに入っている、もう一つのクリスタルは一体何なのかしら?」
──!?
「胸ポケットだって!?そんな所にクリスタルなんて、ある筈が──────────。」
──!?
「ああ……。そんな筈が……。」
フォーゲル王子は顔色を真っ青に変え、胸ポケットから一つのクリスタルを取り出した。
フォーゲル王子が取り出したクリスタルの色は"黄色"のクリスタルでは無く、禍々しい輝きを放つ"黒色"のクリスタルだった。
「……何で、こんな物が僕のポケットの中に入っているんだ!?」
顔色を変え、ガクガクと震えるフォーゲル王子。……どうやらフォーゲル王子も知らなかった様である。
「"黒色"のクリスタル!?確かフォーゲル王子の話では、"黒色"のクリスタルなんてありませんでしたわ!」
新たな色のクリスタルの登場に、驚くラミス姫達。……フォーゲル王子が嘘を言っていたのだろうか?
確かにフォーゲル王子の話を聞く限り、"黒色"のクリスタルは登場しなかった筈である。
嘘が明るみになり、全員の視線がフォーゲル王子に集まっていた。疑惑の目を向けられ、絶望に震える第七王子フォーゲル。
「信じてくれ……。僕は本当に、こんなクリスタルなんて知らないんだ。きっと、誰かが僕を罠に嵌めたんだ。……頼む、信じてくれ。」
フォーゲル王子は涙を流しながら、切実に無実を訴えていた。
「はわ、はわわわわわわわ……。・△・」っ
……ぷるぷるぷる。
「どうしたの?ラミス。」
ぷるぷると小刻みに震える妹の姿に気が付き、何事かと話し掛ける姉ナコッタ。
「ここはやはり、ばちこーんするべき所なのかしら?」
……ぷるぷるぷる。
「ラミスちゃーん。もうちょっと、我慢出来るかなー?」
……にこにこ。
ばちこーんして犯人を、とっちめてやりたい所ではあるものの……。過去に二度もプリンセス式土下座で謝った記憶が甦り、ぷるぷると小刻み震えるラミで姫様であった。




