第298話 「聞くも涙、語るも涙ですわ」
「僕には双子の弟が居るんだ……。名前はカイン。僕達二人は産まれてすぐに、引き裂かれる事になった。僕は父に引き取られヘルニア帝国の第八王子になったけど、母とカインの二人は王宮で暮らす事も許しては貰えなかったんだ。だから王子とは関係無いし、この件とは全く無関係なんだ!」
アベル王子の双子の弟である、カイン王子。……いやカインは王族とは無関係な為、王子と呼ぶのは間違っているのだろう。
しかし、クリスタルから古の怪物を呼び出す力は持っているのだ。……念の為、一応確認はしておくべきなのだろう。
「フォーゲル王子。兵士達全員に集まるように、お伝え下さいますか?」
「……分かった。」
フォーゲル王子の側近は全て顔を出している為、もしカインが隠れているなら、それは兜で顔を隠された兵士の中に居るとナコッタは考えた。
「居る筈が無いんだ。アイツは、カインはヘルニア帝国に居る筈なんだ……。」
やはり血の繋がった兄弟であるカインを、犯人だとは思いたく無いのだろう。
ラミス姫達が一人一人兵士達の顔を確認している間も、アベル王子は下を向き俯いたままであった。
カインは犯人では無い、そして兵士達の中にも居る筈が無い。……そう心の中で祈りながら、アベル王子は一人の兵士の顔を横目で確認した。
──しかし、彼はそこに居た。
「そ、そんなバカな……。何故お前が、ここに居るんだよ!?カイン!!」
アベル王子の前に現れたのは、アベル王子と全く同じ顔を持つ双子の弟カインの姿だった。
「そんな……。お前はヘルニア帝国に居る筈なんじゃ……。何故フォーゲル王子の兵士の中にカイン、お前が居るんだ?」
信じたくなかった現実を突き付けられ、足がガクガクと震えるアベル王子。
「ごめんよ、兄さん……。兄さんがフォーゲル王子と共に国を出ると聞いて、僕は思わず追いかけてしまったんだ。幸い、すぐにフォーゲル王子の兵士として働ける事になったよ。でも、そういう大事な話は出来れば僕にも相談してほしかった。」
アベル王子の双子の弟、カインは涙ながらに胸の内を語った。
「カイン、この戦いは危険な物になるんだ。だから僕は、弟のお前を巻き込みたくなかったんだ……。」
同様に、目に涙を浮かべながら胸の内を語るアベル王子。
美しい兄弟愛に穏やかな雰囲気が包み込み、その場に居る全員の胸が熱くなっていた。
特にラミス姫達は、仲の良い姉妹である。アベル王子とカインの二人の絆に共感し、誰よりも胸が熱くなったのは言うまでもないだろう。
その場に居た全員が、二人の兄弟を暖かく見守っていた。
──しかし、それとこれとは話が別である。
「貴方が犯人なのですわねー!!」
──ばちこーん!!
一切空気を読む事無く全力でカインをばちこーんなさる、豪快極まりないツインデール公国第三公女ラミス姫様。
「げっはぁ!?」
プリンセスアッパーを喰らい、派手に大空へと舞い上がる双子の弟カイン。
「ちょっ、えっ!?ラミス!?」
流石に動揺し、取り乱してしまうナコッタ姫様でした。




