第294話 「動作もありませんわ」
──ラミス姫は、気が付いていた。
「これ、何度もやるパターンではございせんこと?」
……ラミス姫は気が付いてしまった。
これはラミス達がヘルニア帝国を打ち倒すまで、何度も繰り返されるのだと───。
そしてラミスが牛鬼王に敗れれば、すぐにでも母と再会出来るのだと。
……そう気が付いてしまったラミス姫は、感動して涙を流す事など出来なかった。
──否!!
だが、それは常人の場合の話である。……それは少し、ラミス姫を舐め過ぎなのである。
数々の賞を総なめにした、ラミス姫の女優魂を侮ってはいけない。
プリンセス神拳伝承者、ツインデール公国第三公女ラミス姫にとって───。
涙を流す事など、何ら動作もない事なのである。
そして何より、去り行く母を哀しませる事などあってはならないのだ。
──ザシュ!
ラミスは持っていた短剣で、自らの足を突き刺した。……そして激痛により、ラミス姫の美しい瞳から大量の涙が溢れ出す。
「いやぁー!行かないで、お母様ー!!>▽<」っ
「ああっ……、ラミス!>□<」っ
──ひしっ!
……夕陽を背に。美しい母娘愛に胸を打たれ、感動で頬を濡らす兵士達。
ヘルニア帝国を打倒し喜びを覚えつつも去り行く母クレアに感謝をし、皆涙を流していた。
「ひ……、姫様!?」
しかし唯一人、その一部始終を目撃してしまった"剣王"バラン。
……そのラミス姫の尋常ならざる女優魂に驚愕し、ぷるぷると体を震わせていた。
こうして無事?母との感動の別れを終える、ラミス姫だが───。
「キャッ!?お姉様、脚にナイフが……。」
やはりと言うべきか、当然と言うべきか……。案の定、脚に刺さっている短剣を発見されてしまうラミス姫様。
……しかしラミス姫は、これをどう乗り切るのだろうか?
「あらー?全く気が付きませんでしたわ。気が付いたら脚に短剣が刺さっているなんて、よくある事ですわー!おほほほほほほほほほほ……。」
……いや流石に、それは少し無理があるのでは無いでしょうか?姫様。
そしてやってくる、ヘルニア帝国第七王子フォーゲル。
……大事なのは、ここからである。ラミスは今日までに考えてきた、念密かつ完璧なまでの作戦を遂行する。
──名付けて"牛さんを呼び出される前にゴンしてポイ作戦"!
神算鬼謀を操るラミス姫が考案した、最高かつ至高で完璧極まりない作戦である。
「フフフ……。見てなさいですわ、アベル王子。すぐに終わらせて、差し上げますわ!!」
ニヤリと、お目々が光るラミス姫であった。




