第289話 「共闘〈タッグマッチ〉と参りますわ」
二体の"王の名を持つ怪物"に、悠然と立ち向かうラミス姫ではあるが……。相手は怪物と化した、バラン将軍とクリストフ将軍なのである。
ツインデール公国が誇る二人の英雄に───。怪物と化し、更に強さを増した牛鬼王に勝てるのだろうか?
目の前の強敵が放つ闘気の恐ろしさに、ラミス姫の脳裏に一抹の不安が過る。
……いや、勝たねばならない。四神の力を得た"白虎の巫女"リンも居るのだ。
──必ず勝機は、ある筈なのである。
そしてラミスは、クリスタルの色の序列を思い出していた。
"黄色のクリスタル"から呼び出される牛鬼は、"青色のクリスタル"から呼び出される豚よりも一段階強く。
そして"赤色のクリスタル"から呼び出される人狼よりも、二段階弱い強さとなっている。
豚王よりも、多少強い程度なら問題無い。……勝機は、こちらにある。
四神の力を覚醒させ、真の力を解放した"白虎の巫女"リンは、豚王をも圧倒する強さを持っているのだから───。
──だが。
──ドゴォ!!
強烈な一撃を喰らい、軽々と吹き飛ばされる"剣神"リン。
二体の牛鬼王はラミスとリンが驚愕する程の、圧倒的強さを誇っていた。
残念ながら牛鬼の強さは、クリスタルの色など全く関係が無く、その強さは土台となる人間の強さに大きく依存していたのである。
そして赤牛鬼王の土台となった人物は、"剣王"の称号を持つバラン将軍なのだ。
怪物に姿を変えられたバラン将軍の強さは更に狂暴と化し、その強さは"剣神"の領域にまでに達していた。
「ブモオォォォォォォォ!!」
──ガキィン!!
「ぐっ……、不味いわね。」
またもや牛鬼王の強力な一撃を喰らい、地に伏せる剣神リン。
残念ながら同じ"剣神"の称号であっても、姉リンと赤牛鬼王との間には、かなりの実力差が見られる様である。
何とか懸命に立ち上がろうとするリンだが、その戦力差は歴然であった。
"白虎の巫女"であるリンをも圧倒する強さを誇る、二体の牛鬼王〈ミノタウルスキング〉。
「そんな……。」
圧倒的な強さを持つ、二体の牛鬼王……。そして城の中から湧き出てくる、大量の牛鬼達。
その光景に、ラミスは恐怖に震える事しか出来なかった。
「ラミスー!!」
その時、ラミス姫の名を呼びながらフォーゲル王子とメイドのロクサーヌが姫の元に駆け寄ってくる。
「二人共、ここは危険ですわよ!!」
そう二人に叫ぶラミスだが、城の中も外も大量の牛鬼達で溢れ返っている状態なのだ。……既にツインデール公国には、何処にも安全な場所など在りはしなかった。
「ラミスー!早く、クリスタルを!!」
──クリスタル!?
……ラミスは忘れていた。そして王子の言葉で漸く、その事を思い出すラミス姫様。
──そう今回のラミス達には、頼もしい味方が付いているのである。
確かに王子の持つクリスタルから呼び出される怪物は、少し弱いのかも知れない。
……しかしそれは仮にも"王の名を持つ怪物"なのである。
今までラミス姫達を苦戦させてきた、"王の名を持つ怪物"を味方に付ける事が出来るのだ。
……間違いなく、頼もしい戦力になる事に違いないだろう。
「フォーゲル王子!」
王子にクリスタルを渡す為、ラミスは急いでフォーゲル王子にクリスタルを投げつけた。
そして王子の手に渡ったクリスタルは強い輝きを放ち、古の怪物達がラミス姫の味方となって、今現世に黄泉返る。
「出でよ、人鳥女王〈ハーピークイーン〉!!」




