第283話 「それが一番よろしいですわ」
牛鬼が現れたのではないのなら……。メイドのロクサーヌは、一体何に驚いたのか?
それは今まで無かった筈の、多数の兵士達の死体が突如として現れたからである。
「これは、ツインデール公国の兵士の鎧ですわね。……残念ですが、既に亡くなられてらっしゃいますわ。」
数え切れない程の疑問と、拭いきれない不安がラミス姫の頭を過る。
……何故、いきなりツインデール兵が現れたのだろうか?それも何故か、亡くなっている兵士がである。
それにラミス姫には、もう一つ気になっている事があった。……それはツインデール兵が現れた場所が、牛鬼が倒れていた筈の場所だった事である。
「ま、まさか───!?」
その事に漸く気が付く、ラミスとロクサーヌ。
このツインデール城の、不気味とも言える静けさの理由。そして、古の怪物〈ミノタウルス〉の正体に───。
「そ、そんな……。ツインデール公国の人達が、恐ろしい怪物に姿を変えられてしまったと言うの!?」
……しかし何故ラミスとロクサーヌの二人は、恐ろしい怪物の姿になっていないのだろう。
それに他にも、まだ無事な人達が居るのだろうか?
そう考えを巡らせるラミス姫だが……。フォーゲル王子はラミス姫の美しさに一目惚れし、結婚を申し込んでいたのである。
……もしかするとフォーゲル王子は、最初からラミス姫だけは助けるつもりだったのかも知れない。
とりあえず、目の前で倒れている兵士達を生き返らせようとするラミス姫だが……。一般の兵士達が、あの狂暴な怪物牛鬼に敵う筈も無い。
……兵士達を生き返らせるのは、もう少し落ち着いてからにしようとラミスは考えを改める事にした。
そして、このヘルニア帝国の罠に嵌められた絶望的な状況───。事態は一刻を争う程の、非常に不味い状態である。
この困難状況を、一体どの様にして打ち破るのか?ラミス姫の判断に、ツインデール公国の未来が委ねられていた。
そして、どう行動すれば良いのか?……今、自分が取るべき最善の選択を導き出す為、ラミス姫は急いで考えを巡らせる。
先ずは頼れるバラン将軍と、合流すべきなのだろうか?……勿論、バラン将軍が恐ろしい怪物に姿を変えられている可能性もある。
やはりツインデール公国最強の強さを誇る、姉リンとの合流を優先させるのが一番合理的ではないだろうか?
もしくはツインデール公国の叡知と謳われる、姉ナコッタに指示を仰ぐのも良い判断なのかも知れない。
……いや、それは次回に回す方が賢明だろう。ラミスは神々の力で、何度でもやり直せる事が出来るのだから───。
ここは一先ず四姉妹の中で一番か弱い、妹のミルフィーを守りに行く事が先決である。
と色々悩むラミス姫だが……。悩んだ挙げ句、ラミス姫の出した結論。それは───。
「とりあえず、フォーゲル王子を殴ってから考えますわー!!」
これ最強。……これに決定。
とりあえず後の事は、フォーゲル王子をぶちのめしてから考える。頭より先に体が動いてしまう、ラミス姫様であった。
「さあ、行きますわよロクサーヌ!首を洗って待ってなさい、フォーゲル王子!私が、ぶちのめして差し上げますわー!!おほほほほほほほ……。」
ラミス姫は楽しそうに、笑いながら全力で走り出して行った。
「まっ、待って下さい姫様ー!?」




