第281話 「騙されましたわ」
「……は?」
ラミス姫が強い事を、全く知らなかったラミス姫専属メイドのロクサーヌさん。
恐ろしい怪物を一撃で粉砕する、ラミス姫の凄まじい蹴りを見てしまい……。ロクサーヌは、魚の様に口をパクパクさせながら驚いていた。
「ブモォ!!」
「ブモッ!ブモォー!!」
当然ながら、ツインデール城内に現れた怪物は一体だけではない。巨大な斧を手に、わらわらとラミス姫の前に群がる古の怪物牛鬼〈ミノタウルス〉。
──!?
「ひいぃぃ、姫様!?まっ、また怪物がー!!」
ロクサーヌは飛び上がる程驚き、足が震えて床に座り込んでしまった。
静かに息を吐き、呼吸を整えながら拳を構える"拳王"ラミス。そしてラミス姫の美しい瞳が光を放った、その瞬間───。
──ズガガガガガガガッ!!
ラミス姫の拳は凄まじい速さで、次々と古の怪物牛鬼達を打ち砕いていった。
「ローストビーフにして差し上げますわ。」
ラミス姫の放つ高速の拳"マグナム"は、何重もの壁ごと牛鬼を打ち砕き。
そしてラミス姫の放つ稲妻の如く蹴技は、激しい轟音を轟かせながら天井もろとも牛鬼を空の彼方へと吹き飛ばした。
最早"拳王"の称号を持つラミス姫にとって、王の名を持つ怪物以外は敵ですらないのだ。
……それよりも、ツインデール城が壊れないかが心配である。
「ひ、ひええぇぇぇぇ……。」
恐ろしい怪物達と無双する姫君に酷く頭を混乱させ、涙目で怯えるロクサーヌさん。
「ロクサーヌ、決して私の側から離れてはなりませんわよ。」
「は、はいぃぃ。姫様ー!」
涙を流しながらラミス姫の脚にすがり付く、メイドのロクサーヌさんだった。
──ドガッ!ドガガガガガガガガッ!!
雷鳴を轟かせ、恐ろしい速さで次々と牛鬼を沈めていくラミス姫様。
「…………。」
だがラミスは戦いながら、今自分達が置かれている状況が、どれ程不味い物であるかを理解していた。
不味い状況と思える、その理由は二つ。一つは、フォーゲル王子が裏切っていると言う事である。
……いや裏切ったと言うよりも、フォーゲル王子に罠に嵌められたと言った方が正しいのだろう。
フォーゲル王子が言っていた事……。またその情報は全てが嘘偽りであり、全くのデタラメだったのである。
そしてフォーゲル王子の持つクリスタルから呼び出される怪物も、人鳥ではなく牛鬼だったのだ。
……いや、そもそもクリスタルの話自体が嘘だったのかも知れない。
フォーゲル王子にまんまと騙されたラミス達は、敵国である筈の王子と古の怪物達をツインデール城内に招き入れてしまったのである。




