九十九.無礼は働かない
一方そのころ
関羽一行は覇陵橋といった、わりかし小さい橋を渡っていたところでしゅた。
そこへ・・・
「おーーーい!おーーーい!おーーーい!!!」
張遼がビュビュビュン!と馬を飛ばして一行に追いついてきたとぶぁい。
そして・・・
張遼「ペラペラペラペラペラリンコ」
関羽「フムフムフムフムフムリンコ」
張遼は、関羽に「後で曹操が別れの挨拶に来るばい」と説明したとよ。
んでもって話を聞いた彼は、夫人を乗せた御車と従者たちに橋を早く渡るよう急かすと、自身は狭い橋の真ん中に立ち塞がり、
「ここで待っとくことにする!」
といって曹操を待ち構えたとぶぁい
そしたら・・・
「おお!関将軍!!―――ずいぶんと慌ただしい出立であるな。危うく君との別れの挨拶を逃すところであった」
曹操が部下を連れてやってきたとでしゅ。
せやけど関羽は動じんと、馬上を降りずに一礼したとでしゅ。
「『殿の居場所が分かれば暇も置かずに去る』。その約束を果たさせて頂きとうございます。どうか拙者を河北へと・・・」
「わかっておる。私も天下の宰相だ。約束を破る糞下種野郎ではない。ただ・・・そう、ただ、自分が恥ずかしくなったのだ。君ともう少し話がしたいがために避客牌をかけ、君を遠ざけた自分の心の狭さをな。そしてこれはその詫びだ」
曹操は先の件の謝罪を述べると、指パッチンをせからしく鳴らし、部下たちに路用の金銀を関羽に遅らせたとよ。
でも関羽はすぐに受け取らんと、断りの仕草を見せたとでしゅ。でもでもそれは曹操も想定内のようでしゅて、
「それは全てご婦人のためだ」
と、関羽に素直に受け取るよう言いくるめたとでしゅ。
「お心づかい感謝いたす。」
「うむ。受け取ってくれねば私も立つ瀬がない。そしてこれは宰相としてとかではなく、一個人として君に贈りたい」
そう言ってまた再度せからしく指パッチンを鳴らすと、部下の一人が関羽の前に跪き、うやうやしく錦を捧げたとぶぁい。
「これで旅の雨露をしのぐと良いだろう」
「曹操様・・・何から何まで感謝至極にございます。では・・・」
そう言うと関羽は、得物の青龍刀を錦へと差し伸べると、その刃の先に錦を引っかけて、自身の肩に打ちかけてしまったとでしゅ。そして、
「おさらば」
ただ一声残し、北の方へと赤兎馬を早めて立ち去ってしまったとぶぁい。
それを見た曹操の部下たちカンカンで、
「「「なんたる無礼!なんたる傲慢!許すまじ!!!」」」
刃を抜き、馬を駆けさせ、関羽を討ち取らんとしようとしたとでしゅ。
でもすかさず曹操がそれを制したとよ。
「よせ!彼を追うでない!これ以上この私に恥をかかせるな!!・・・彼が今しがたした行為は、この私が彼にしたことに比べれば無礼とも言えぬ可愛らしいモノよ。それに、こちらには腕の立つ者たちが二十人もいる。彼が馬を降りなかったのは当然のことであろう」
部下制した曹操は、小さくなっていく関羽の背を見て呟いたとぶぁい。
「劉備よ・・・お前がうらやましいぞ」
妬みではない、純粋な敬意が劉備に向けられたのでしゅた。




