九十四.責任から逃げない
文醜 (センテンススプリング)討たれるの報は河北軍に衝撃を与えた。
そしてさらに衝撃であったのが、彼を討ったのが関羽を名乗る男だったという話である。
「文醜を討ったのは、赤面顔に立派な髭でモリモリ筋肉スターダムな大男でした」
敗残兵たちからの報を聞いて劉備は狼狽えた。
(ノ∀`)アチャー
前回の顔良の時の話といい今回の話といい、どうやら十中八九、関羽で間違いないようであった。
「・・・ともかく早速その男を見に行こう」
とはいえ、兵たちからの報告だけではその男を関羽だとは『確定』できない。
劉備は直接現場へと出向き、男の正体を見極めることにした。
で、
その結果。
(ノ∀`)アチャー
黄河の支流。
広い野に小さな湖が無数にある地で、劉備は噂の男を対岸越しより見た。
見える見える、その男の正体がはっきりと見えた。
(・・・あれは間違いなく関羽だ)
黄巾の乱より苦楽を共にしてきた義兄弟の一人、『関羽雲長』の姿が戦場に映っている。
「スゥーーーー・・・ハァーーー・・・(くそデカため息)」
思わず瞑目する劉備。
ごまかしにごまかしてきた否定が肯定へと変わってしまった。
(あーあ、また袁紹殿からのパワハラ質疑が来てしまうな・・・どうすっぺかな~~~?)
思わず頭を抱えてしまう。
すると、悩める彼に戦場より「曹操軍が退路を断つ」との報が入ったので、彼は一先ず陣へと戻り、十里ほど自軍を下がらせた。
そして明くる日。
「劉備殿、袁紹様がお呼びです」
(ノ∀`)アチャー
来た来た来た来た来た来た来た来た!
袁紹からの呼び出しが来た!!
劉備はササッと服を着替え、パパパッと移動すると、ドジャーンと袁紹の面前へと現れた。
「ほわっつはぷん?(=どうかしましたか?)」
すっとぼけた表情で素知らぬふりをする彼の態度に対し、袁紹は嫌味たっぷり詰問した。
「―――文醜が討たれた」
「らしいですね。お悔やみ申し上げます。南~無~~( -人-)」
「貴様!この大耳野郎!この期に及んでまだすっとぼける気か!!」
斬れ!
袁紹が左右の将にそう命じたので、さすがの劉備も慌てて叫んだ。
「異議あり!!」
「認める!!」
「謝謝!―――袁紹様、曹操の策略に乗ってはいけません。これは曹操の罠です」
「罠だと!? 汝の首を斬ることが罠だと申すか!!」
「YES YES YES・・・この劉備の首を斬り、軍内を乱れさせて一番喜ぶのは誰でしょうか?」
「うっ!?」
「そう、お察しの通り、曹操です。曹操が関羽を用いてナイスフェイスとセンテンススプリングを討たせたのは、ひとえにこの玄徳と袁紹様との仲を裂くためです。」
劉備は真面目である。
平凡なる言動で駆け引きがなく、答弁もしない。
しかし、それがかえって駆け引きとなっている。
劉備の作り出す独特の雰囲気に、袁紹もすっかり飲み込まれてしまったようである。
「―――早計であった。一時の怒りにより貴公を殺めたとあれば、私は世の嘲笑を受けただろう。・・・しかし、しかしだ。貴公の義弟が両将を討ったのは事実。これはどう思われるか?」
雰囲気で気色をなおせるが、根本はなおせない。
袁紹の詰問に劉備は頭を垂れて、
「その件につきましては自分も責任を感じずにはいられません」
「ではどう責任を取るのか?」
「関羽をこちら側に付かせるということでどうでしょうか?」
「そんなことが出来るのか?」
「関羽とは先の敗戦により互いに行方知らずの間柄となってしまいました。そして、行き場を失った彼は、やむを得ず曹操の下に付いているのでしょう。そこで私がここにいることを彼に知らせることが出来れば、彼は夜を日についでもここに馳せ参じるでしょう」
劉備の話を聞き、袁紹は「う~む」と一言呟くと、軽く頷いて彼に命令を下した。
「あいわかった。君のことをもう一度だけ信じてみるとしよう。何としても関羽をこちら側に付けるのだぞ」
「御意!」
その夜、劉備は筆をしたため、一通の書を作成した。
書を密偵に持たせて曹操軍に向かわせると、彼の胸に感慨が宿った。
「・・・再開の日は近い」
青い夜空が輝いている。




