四十五.押してダメなら引いてみよ
「開けろ!」
「開けない!」
頑固者二人が言い張っている。
いくら時間が経とうが、二人の言い合いは平行線をたどっていた。
(ぬぬぬ!このままではマズイ!)
今、関羽軍が敵軍だとばれていないのは、全て『夜中』という時間のおかげである。
しかし、このまま無駄な言い合いを続けていれば、時は流れ『朝』となってしまう。
そうなっては万事休すである。
日光を浴びた関羽軍は、ドラキュラの如く、この地上から姿を消してしまうであろう。
(しからば、この一手だ!)
このまま押し言葉を続けても埒が明かないと判断した関羽は、
「わかった!よ~~くわかった!貴公は曹丞相より差し向けられたこの張遼の入城を拒むというのだな!」
「よろしい!実によろしい!」
「拙者は、貴公に異心ありとみた!この旨をありのまま曹丞相へお伝え申す!覚悟なされい!!」
言い放つと彼は、後に控える隊の者へ、「全軍!引返せ!!」と大声で号令を発した。
『押してダメなら引いてみろ』とは良く言ったモノだ。
心証を害しないだろうと高を括っていた車冑は、関羽の引き言葉に酷く狼狽して、
「あいや待たれよ!それ待たれよ!!」
「見えた!見えました!『曹』の旗が見えました!白眼が開眼しました!『曹』の旗が透けて見える程にハッキリと見えまぁす!!」
「直ぐに門を開けますので、待って、止まって、ストーーーップ!!」
と、直ちに城門をサッと開かせた。
はい終わり!はい終了~~!!関羽軍勝利確定!!
手順3が終わり、手順4へ移行。
開いた城門より、関羽軍はのっそのっそと馬蹄の音を響かせて入って行った。
この日はよっぽど霧が深かったのか、顔と顔をぶつけ合わせなければ、誰が誰だか分からかった。
そのため、車冑は関羽と面合わせするまで、彼は入城して来たのが関羽だということが分からなかったのである。
「車冑とは君か?」
「ええ、そうですが・・・あっ!?」
車冑が驚いた瞬間、彼の首は宙を舞った。
車冑死亡。
次いで各地で絶叫が起こり、沛然と血の豪雨が城内に降り注いだ。
兵の大半は寝ていた。そこへ関羽、張飛が一軍を率いて暴れ回ったので、大量虐殺も思いのままに行われてしまった。
手順5.占拠完了。
徐州城を制圧した関羽と張飛は意気揚々であった。
誇らしさと自信を漲らせ、全てを成した漢の顔をしていた。
しかし、二人はこの後の始末の仕方を考えていたのであろうか?
『殺して終わりでは済まされない。』
これが後に起こる大戦のきっかけであると、二人は知る由もないのであった。
手順6.fin




