四十四.怪しい時は動かない
作戦は霧深い夜に決行されたそうだ。そりゃ結構。(激うまギャグ)
関羽と張飛を大将とした兵馬の軍が、徐州の濠ぎわまで進んでいる。
「皆、抜かるでないぞ。」
深々とした静かなる闇にて、関羽は兵たちにキツく念を押した。
今回、関羽が立てた策はこうである。
1.曹操より五万の兵を借りた際に一緒に借りた『曹操軍の旗』を軍の陣頭に並び立てる。
2.関羽、徐州城の濠ぎわに立ち、門を開けるように喚き散らす。
3.車冑、陣頭に並び立てられた『曹』の旗を見てびっくら仰天、門を開ける。
4.開いた門より関羽軍突撃。徐州城内を暴れ回る。
5.占拠完了。
6.fin
と、まぁ長々と書いたわけだが、要約すると、
『曹操の旗を使って、徐州城内の兵を騙す。』
これが今回、関羽が立てた策の全貌である。
で、
1の手順は徐州城に来るまでに完了させてあるので、次は2の手順である。
「開門せよ!開門せよ!繰り返す!開門せよ!開門せよ!開門せよ!!」
関羽は濠ぎわで、大音声を上げた。
「何事ォ!!」
時ならぬ軍馬に、門内の武将はすくなからず緊張して、容易に門を開けなかった。
これは想定内である。
むしろ直ぐに門を開けたら罠だと思うべきだ。
次いで関羽は声を作って、
「我、張遼という者なり!曹丞相の使いとして、火急の件があって、許都より急ぎ下って来た!門を開けてたも~れ!!」
と、偽名を使ってそれらしい理由を述べた。
しかし、車冑含む徐州兵は油断なく、彼らは頑として門を開けなかった。しかも、それどころか、
「むむむ!いささか怪しいぞ!貴公が張遼殿であるという証拠を見せい!!」←車冑、疑う(当然)
「旗を見よ!!」←関羽、軍の陣頭を指さす(ドヤ顔)
「夜!しかも霧がかかっちょる!旗の文字が見えん!!」←人間、昼行性(大半)
「見えろ!!」←関羽、イラつく(呆れ)
「見えん!!」←車冑、イラつく(呆れ)
「見えろよぉぉぉぉぉ!!」←関羽、激高(アホ)
「見えねえよぉぉぉぉぉ!!」←車冑、激怒(有能)
関羽の立てた策は手順3の段階で崩れかけた。
旗に書かれた『曹』の文字。
これが徐州兵に見えなければ、彼らを信頼させる(騙す)ことが出来ない。
すなわち、次の手順へと進めることが出来ないのである。
(しからば私が!!)
ここで、一人の男が機転を利かせた。
「車冑殿、あれは間違いなく『曹』の旗です。視力2.0の私が言うのです。間違いありませぬ。」
機転を利かせたのは陳登であった。
彼は関羽たちが徐州に近づくそれより前に、城内へと帰って来ていたのである。
「う~む・・・。確かに君の言う様に、あれは『曹』の旗には違いないようだが・・・何か嫌な予感がする。夜が明け、軍の全貌がはっきりと見えるまで門を開けるべきではなかろう。」
「何を言っているのです。早く城門を開けるべきです。もし張遼殿の心証を害してしまい、後に何かあったとしても、私は責任を取りませんぞ。」
「・・・いや、張遼殿は名将とのもっぱらの噂。この程度で心証を害するはずがなかろうて。」
車冑も大層な頑固者である。
陳登に急かされたり、脅されたりしても、なおも頑として門を開けなかったのであった。




