四十一.避けられないこともある
袁術亡き後、『袁胤』は独り、北へと落ちて行った。
ところが、途中、広陵の地まで来ると、曹操配下の『徐璆』という者に捕らえられた。
「オーイエス!」と徐璆が袁胤の体をまさぐってみると、彼が意外なモノを持っているのを発見した
「こ、これは玉璽だ!!」
彼が所持していたのは伝国の玉璽である。
「どうしてこのようなモノを持っておるのだ!!」
袁胤は拷問にかけられ、問いただされると、袁術の最期を語り始めた。
で、
語り終わると、徐璆は直ぐに報告書を認め、玉璽を添えて主君の曹操へと馬を走らせた。
「でかした!」
と、曹操は徐璆を大いに褒め称え、その功として彼を広陵の太守に封じた。
時を同じくして、一方より、曹操の元へ『朱霊』、『露昭』の二将が戻って来ていた。
二人は曹操が劉備に五万の兵を課した際に同行させていた二将であったのだが、
「・・・私の五万の兵はどうしたのだ?」
戻って来たのは二人だけであり、残りの兵は徐州に残ったままであった。
「五万の兵は国境の警備に必要との劉備殿のお言葉で、兵は徐州に残し、我々だけで引き返して参りました。」
「なにっ!? 何故そのような勝手な真似をした!私の兵を私の許可なく残すとは何事か!!」
事を聞いて曹操は烈火の如く怒った。
まるで即座に二人の首を刎ねんとする剣幕だ。
震え上がる二将が怯えていると、彼らの横から曹操の参謀が口添えをした。
「曹操様、彼らを責めるのは筋違いでございます。」
「なにっ!? 荀彧よ、私が間違っていると申すか!!」
「はい。殿は二人を劉備に預ける際、二人にこう命じなさいました。『劉備を総大将にする故、彼の命に従うように。』と。」
「!? そ、そうであったな・・・。私ともあろう者が激情に駆られてしまっていた。朱霊に露昭よ・・・すまぬ。」
荀彧に諭され、二人に詫びを入れると、曹操は二人を下がらせ、荀彧と今後について話を始めた。
「これからどうすべきか?」
「謀略を計り、劉備を討つことが最善でしょう。」
「・・・それは避けたい。」
「殿!!」
「わかっておる。お前の言っていることは正しい。しかし、私は彼を高く評価している。彼はまさしく稀代の英雄だ。失うのは惜しい。」
「では彼に滅ぼされますか?」
「私が劉備に負けると申すか?」
「今のは所謂ことばの綾です。―――お言葉ですが、彼を高く評価しているのが殿だけだとお思いですか? 私も殿と同じく、彼を稀代の英雄と見ております。殿に並び立つ前に彼を討つことこそが最善なのです。ご決断を。」
荀彧は折れなかった。
彼を含め、郭嘉、程昱などの重臣たちも、皆、劉備を討つことに賛同しており、機会があれば代表して自分が曹操を説得すると決めていたからである。
並々ならぬ参謀の提案に、ついに曹操も、
「・・・わかった。硯を用意せい。」
彼は劉備を排除すべく、書を徐州にいる車冑に送ったのであった。




