【6話目】珠里とつきあえるかと思ったのに海斗が間に入って大騒ぎ
「やだ、わたしの部屋がないじゃん!」
珠里が海斗がいる部屋を見て、立ち尽くしてる。
「だって珠里、もう帰ってこね―と思ったんだってば」
珠里は、くるっと振り向いて俺のとこに来ると
「弘人とは別れた! だから帰って来た。ほかの男住ませるなんて聞いてない!」
わたし、どうすればいいのよって、なんか泣きそうだぞ?
「ここいていーよ?」
「でも、部屋が……」
チラリと海斗を見ると、絶対動かないぞ、みたいな顔でこっち見てる。
「じゃあ、わたし、陸と一緒の部屋でいい?」
「ええー!」
「はあ?」
俺と海斗、同時に叫んだ。
「いや、それなら俺が陸の部屋に……」
海斗が言うけど、それを珠里がさえぎる
「うるさい、あんたはそこにいれば? わたしが陸といるって決めたんだから」
邪魔しないでよって、海斗にいうと、俺の狭い四畳半の部屋に無理やり荷物突っ込んできた。
えー、そんなあ、俺はいいけど?
弘人なんかと別れたっていうし、それならいいじゃん?
同じ間違いが起きるなら、女の子とのほうが、全然いいよな?
いまの海斗だと、俺もしかして縛られて変なことされちゃうかも。
こわいこわい。
海斗がなんか言ってるけど、珠里が無視して、部屋のドアを閉めた。
「ちょっと陸、なんであの人ここに住んでんのよ」
色っぽいムードになることもなく、珠里はプンプン怒ってる。
そしてコンビニの袋? なのか、中からケーキ取り出して、目の前に置いた。
「食べようっと」
ひとつしかない、それは珠里の分。
「うまそうだな」
って言ったら、珠里が
「食べる? いいよ、はい、あーんして」
珠里が食べてたフォークで、食べかけのケーキを口に突っ込まれた。
「きゃ、間接キスだー」
珠里がそんなこというから、ケーキ吹き出しそうになった。
「あ、そういえばさ、陸、身長伸びた?」
「急になんだよ、知らねーよ」
部屋の壁に、珠里がつけた「線」があって、そこが俺の身長の目標なんだって言ってたっけ。
そこまで伸びたら、いいこと教えてあげるって、珠里が言ってた。
「ほら。はかってきなさいよ」
無理やりそこに立たされて、
「あー、惜しい、あと2センチくらいかな?」
「え、もうそんな? わー伸びてきた!」
「もうすぐだね」
その印の線、珠里の身長らしい。
「まだ、学校の誰ともつきあったりしてないでしょうね?」
「してねーよ、モテないもん、女子たち、話しかけてもこないし」
「そりゃそうよ、わたしが話しかけるなって言ってんだから」
「……は? なにそれ」
みんな、よそよそしくて、嫌われてるとばっかり思ってた。
女みたいで気持ち悪いのかなとか、だから誰も近づいてこないのかと思ったのに、なんだって?
「それだけかわいいのに、モテないわけないじゃん!」
初めて知った。
「この辺で健全な男の子になろう、陸」
珠里にぎゅっと両手を握りしめられる。
「健全?」
「そう、あの海斗って男に告白されたんでしょ、ありえないよ、ね、わたしと付き合おう」
夏には同じくらいの背の高さになりそうだし、いいじゃん! だって。
「背の高さ?」
座ってると、背の高さの違いはわからない。
目の高さも同じくらい。
え、立ったときの話?
同じになるの、待ってたんだ?
そうなのか?
もしかして珠里、あの線って、そういう意味?
「あのさ、珠里……」
俺が言いかけるより早く、部屋のドアがバーンって開いて海斗が入ってきた。
「黙って聞いてりゃおま、陸になに勝手なこと言ってんだよ!」
海斗が珠里に向かって怒ってる。
「あんた、盗み聞きしてたんだ? キモっ」
珠里、そんなこと言ったら、海斗がもっと怒るだろ?
「やめろよ、もういいって海斗も、珠里も」
ケンカされるのも、大騒ぎするのも苦手。
その原因が自分のことってなると、特に嫌だ。
「でも陸、嫌なら嫌だとちゃんと言えよ」
「嫌じゃないよね? ね、陸そうしよ、わたしせっかくフリーになったんだし」
「そんな軽くつきあえるわけないだろ? 陸だって嫌だよな?」
目の前で、俺のことで、2人が好き勝手言ってるのを、ただ無言で聞いてた。
海斗の言ってることに、賛成なんだけど、珠里が言うように、つきあってみるのもいいのかもって思ったのも本音としてあるかな?
だって、女の子だし、ちょっとは「いいな」って思ってたんだ。
珠里には、男感じないんだよね、って言われてスルーされ続けてきたけど、もしもそれが身長差のことだったらさ、もう認めてもらえた?
でも結局、海斗が
「好きかどうかもわからないのに、つきあうなんて良くない!」
とか、しつこくしつこく、何回も「だめだだめだ」って言うもんだから、珠里もめんどくさくなったのかな?
「もういい、別の友達のとこに泊めてもらうから、陸ともつきあわない、バイバイ」
出てっちゃった………。
「騒がしい女だったな」
海斗は、俺が何も言えなくて困ってるみたいに見えたのか、追い出してやったぞ!
と、いいことしたみたいに、ニコニコしてる。
なにが正解だった?
頭の中で、計算しちゃった。
どっちの言うことを聞いたら良かったのか。
みんなが平和になるほう、選ばなきゃと思ったんだ。
でも。
どっちの味方しても、どっちかが悲しむだろ?
すぐに答えなんか、わかんねーって。
俺のことだけ考えていいなら、そりゃ女の子がいいし、つきあえるなら珠里とつきあいたかった。
別に軽く付き合ったっていいじゃん?
「あの子なんもわかってない! 陸がそんなに簡単につきあえるわけないのに」
いや、海斗、それは俺のこと知らなさすぎ。
咲良さんのとき、知ってるだろ?
簡単に、とりあえずつきあおうよーとか、言ったんだよ?
それくらい軽いんだけどな。
海斗に対して、簡単にいかなかったから、そんなふうに思うの?
男と男ってさ、男と女より、かなりハードル高いよね?
それ、海斗わかってんのかな?




