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身代わり女装がバレたのに「男同士でもいい」と言われました〜絶対無理なので全力拒絶中  作者: 水波瀬 凪


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20/21

【20話目】海斗を迎えに行ったのに、逃げた~好きと大切ってどう違う?

お盆の時期が終わってから、翠が


「珠里のこと迎え行ってくる」


って出かけてった。


珠里は親から無理やり、夏期講習の合宿ってやつに参加させられてたらしい。


それがそろそろ終わった頃だって言ってた。


翠が今後は珠里の勉強を見るって言ってて、それを珠里の親に伝えるんだってさ。


「もしダメって言われたらどーすんの?」


翠に聞いたら


「ダメって言わせないように説得するんだよ」


って言ってた。


なんかかっこいいな。



翠だったら、難しい理屈とか並べて、相手に有無を言わさないってイメージあるもんな。


俺は海斗の親から、逆に怒られたし言い訳もまともにさせてもらえなかった。



そして宣言してた通り、翠は珠里と一緒に帰ってきたんだ。


「陸、久しぶり~さみしかった?」


珠里が駆け寄ってきて、俺にぎゅーって抱きついてきた。


「わわ、珠里、ちょっと…」


翠が見てるのに!


「あれ、陸、背が伸びた?」


ちょっと離れて珠里がまじまじと見てくる。


「珠里、小さくなった!!」


目線が違う、確かに変わった。


「やったじゃん陸、きっと160センチ以上になってるよ」


「あーやっとか」


でもまだ、男にしては小さいけどな。


珠里は自分の荷物を部屋に片付けてから、またリビングに出てきた。


「あれ、海斗は?」


リビングに敷いてるラグをぺらっとめくって、探すふりしてる。


そんなとこにいるか!


ってつっこみ待ちかなって思ったけど、そんな気分じゃない。


「まだ実家に行ったきりなんだ」


「そうなんだ、実家ってうざいよね、わたしもめっちゃ迷惑した、大変だったんだからー」


でも翠のおかげで脱出できた、って言いながら翠に抱きついてる。


珠里って人との距離感近いよな。


珠里みたいに、もっと体中で好きを表現できたらいいのに。


「ん? 好き?」


いま、海斗の顔が浮かんでしまった。


あれ、なんで?


海斗に会えなくってさみしい。


海斗のご飯が食べられなくなって、悲しい。


海斗は、大切な人って思う。


大切と好きは、違うよな??


いや、好きは好きなんだよ、いいやつだし友達だし、俺のことも大事にしてくれるし、話を聞いてくれて勉強も教えてくれるだろ、それから……。



「俺も海斗のこと、迎え行ってみよっかな」


翠も珠里も部屋に引きこもったんで、ここには誰もいないんだけど、ひとりごとつぶやいた。


「でもさ、珠里の親と違って、海斗の親に俺って嫌われてしまったよな?」


少なくとも好印象じゃなくなってる気がする。


そんなやつが、いきなり行ってもな。


説得なんかも、良くわかんないしな。



翠だったらなんていうか、考えてみた。


「自分で考えろ、そして、行きたいなら行けよ」


まあこんなとこかな。


いっか、当たって砕けろだ。



「翠、珠里、ちょっと海斗んち行ってくる」


ドア越しに声をかけてから、返事待たずに出てきちゃった。





海斗の家の玄関で、ピンポン鳴らした。


親が出てくるって覚悟してたら、海斗が出てきた。


「あ、久しぶり海斗」


嬉しかったのになんか照れくさくて、そっけない感じで言っちゃった。


「陸、おまえ…」


海斗びっくりしてる。


「ご飯作る権、海斗ちゃんと守らなきゃダメじゃん」


海斗がいないと不便なんだよって言ってやった。


「そうだったな、ちゃんと作るよ」


海斗はふっと笑ってからそういった。



なんていうか、こう劇的な再会を想像してたんだけど、わりと普通だ。


遊ぼうって家にきて、ああいいよって答えてるみたいな?


「いまさ、親も美海も出かけてていないんだ」


「あーそっか、だから海斗が出てきたんだ」


ナイスタイミングだったな。


ん? ナイスなのか?


「一緒に帰ろ、海斗。俺さ、迎えきたんだ」


待ってたらいつになるかわからなかったしって伝えた。


「宿題めちゃ残してるから、手伝ってくれ」


うちの高校、宿題提出しなくても、そんなに怒られることはない。


だって、ほぼみんな提出しない。


でも、それを理由にしたっていいじゃん、このさい。


荷物だって、置きっぱなし。


特に持っていくものもないし、そのままでいいじゃん。


「ねえ、帰ろうよ海斗」


「あ、でもいま親いなくて」


「……うん、じゃあどうすればいい?」


帰ってくるまで、動けねーってこと?


「えっとさ、親父には昨日話したんだ。で、キャンプのときのことはもう、誤解は解けてるし、問題はそこじゃなくて」


「別の問題があるってこと? それって俺のこと?」


「実は美海が、美海も陸のとこに行きたがっててさ、俺だけ行くのはずるいっていうんだ、親も美海が行くのは反対してて…それで…」


海斗自身はいますぐでも戻れるけどって言ってる。


でも美海のこと考えたらちょっと気持ちが踏みとどまるって。


外暑くてさ、歩いてきたから、汗かいてて。


玄関先で、部屋の中からは涼しい風こそ、少し吹いてくるって言うか流れてくるんだけど、やっぱり暑くてぼーっとしてきた。


なんかさ、考えるのめんどくさくなってきた。


もっと喜んでくれるかって思ってたのに、海斗は親のほうが大事で、美海のほうが大事で、俺なんかその次。


「もういいや、海斗。俺帰る、バイバイ」


「え、陸? ちょっと」


海斗がなんか言ってるけどもう知らねーって思って、振り返らずそのまま走って、逃げたみたいになっちゃった。


少し走ってから振り返ったけど、追いかけてきてくれて…ないか。



暑いから途中にあったコンビニに入って、アイス買った。


炎天下だし「ICEBOX」なら溶けても飲めるなって思って。


食べながら歩いて帰った。



玄関開けたら、誰もいないけどエアコンはついてた。


翠も珠里もまだ部屋にいるのかな?


ドア開けたら怒られるかな?


取り込み中だったらヤバいし。



自分の部屋は暑いしって思って、そのままリビングの床に寝転んだ。


「あー涼しい、快適快適」


眠くもなかったけど、そのままぎゅっと目をつぶって無理やり寝た。

















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