【最終話】なんだかんだでルームシェアしてて良かったな
「海斗は?」
寝てたら翠が上から覗き込んできた。
「あー、なんか家族がいなくて、帰れねーって言って、俺帰って来ちゃった」
「家族と話に行ったんじゃなかったの?」
帰って来るまで、待ってなきゃダメじゃんって翠から言われてしまった。
「それとも海斗から、帰れって言われた?」
「いや、違う、俺が暑くてイライラして、逃げた」
そっか、そうだよな。
海斗の家庭の事情あるのに、俺の思い通りにならなくて暑くて我慢できなくなった。
冷静になればわかるのに、あのときイライラした、ほんと何やってんだろ?
寝てる俺の横に翠が座って、頭なでなでしてきた。
海斗にされると、女の子扱いすんなよって怒るけど、翠にされてもなんとも思わない。
なんで?
「陸の髪の毛サラサラしてるね」
「うーん、そうなの?」
「髪の毛は、まっすぐで素直なのにな」
「……それ、どーゆーこと?」
「さあね」
こういうとき、やっぱり翠って答えくれないんだよな、自分で考えろってことだろ?
ま、いいか。
「それより珠里は?」
「んー、疲れたのかな、寝てる」
「疲れるようなこと、やった?」
久しぶりだしなって言ってやったんだけど、それはなんか無視された。
だから話題を戻した。
「さっき海斗のとこ行ってさ…」
海斗に伝えた言葉とか、どんなことを海斗が言ってたのか、一通り翠に話してみたんだ。
「また、海斗のとこに出直したほうがいいかな?」
「問題は、美海だって海斗が言ったなら、簡単に行かないなって思う」
残念だけど、時間必要かも、だって。
「そっか、残念なほうになりそうかな」
翠はなにか考えてんのかな?
黙ってて、なにも言ってくれなくなった。
だけど、そばを離れることはなくって、そこにずっと座ってるんだ。
「結局さ、海斗はルームシェアするのが無理ってだけで、俺たちと会わなくなるってことじゃねーんだよな?」
俺は勝手に結論づけた。
「まあ、そうかもな」
あ、翠が答えてくれた。
「そしたら、ここに住む前みたいに、週末とか遊べばいいだけか」
元に戻っただけだね。
一緒に暮らしたから、それができなくなって、もうまるで永遠の別れみたいな気分になってたけどさ、そうじゃない、たぶん。
行けば普通にしゃべれたし、怒ってるとかケンカしたとかじゃねーんだし。
「翠は、ここに、ずっといる? 珠里はどうかな?」
いなくなったら、さみしい。
「何となく住んでたから、何となく住み続けるんじゃないかな、珠里のことは、珠里に聞かないとわかんないな」
珠里は実家が嫌いだし、ここにいる気がする。
もともと2人で住んでたんだ。
夜ご飯だって、お互い好きなもの勝手に食ってた。
自炊とか、やらなかったけど、まあ生きてたんだ。
そうだよ、元に戻っただけ。
「違う、戻れない」
背も伸びたし、少しだけど、料理も覚えた。
それに勉強も、これも少しだけど、わかるところが増えてきた。
珠里には翠がいて、それから……
「あれ、愛菜ってどうなったんだっけ? それに美海に言われてたゲームもほったらかしてたな」
「陸って、女の子の扱い適当だな、めちゃくちゃ」
翠に笑われた。
海斗がいたとき、翠とはほとんど話さなかったけど、いろいろ話せるようになった。
「あれ、そういや拓は? 反省文どーなった?」
「忘れてたな、あいつここにもう来ないかもな、海斗いないし」
「まだ、書けてないだけだったりして」
「どうかな、もう夏休みも終わる」
そっか、夏休み終わったら海斗と拓は学校で会える?
「あれ、海斗と拓って同じ学校だっけ?」
「同じ、俺たち3人一緒」
「そか、いいな同じ学校」
「陸だって、珠里と一緒じゃん、いいな」
「あー、そうだった」
また、珠里とランチ一緒にするか。
相変わらず、ほかの女子からは遠目で見られてるんだよな。
「あー良く寝たーー」
珠里が起きてきた。
寝起きの髪の毛ボサボサなのに、気にしてなさそうだな。
冷蔵庫の中から、飲み物取り出して飲んてるけど、えと、珠里それは……
「珠里それ、お酒!」
翠がまた持ち込んだやつ。
「知ってるよ、スミノフアイス、これサイダーみたいな味で美味しいよ」
「ノンアルだよね」
また翠が嘘ついてる。
「なんかね、大学生とかなったら、合コンとかでお酒飲まされるんだって! そのときのための訓練だよ、酔わされてヤバいことに巻き込まれないように!」
珠里がもっともらしいこと言ってる。
「適量知ってたら、断れるだろ?」
翠まで、もっともらしいこと言ってる。
そう言われたら、そんな気がするけど、そもそもここに大人がいねーってのが問題かもな。
そんな危ういような3人だけど、案外そうでもないのかもしれなかった。
大人にほっとかれた俺、なんだかんだで仲間ができて、それなりに生きてる。
3人暮らしのルームシェア。
しばらく、どれくらい続くのかわからないけど、こんなのも悪くない。
それどころか、きっと楽しいんじゃないかな?
世間からは危なっかしく見えるかもしれないけれど、誰にも邪魔されないこの場所で、俺たちは確かに自分たちのペースで歩んでいるんだ。
さて、明日はどんなことが待ってるかな?
そんなことを思いながら、俺は腕をあげて大きく背伸びをした。
本編完結、ありがとうございました。
続編もあります。【~5年後、恋の答え合わせ~好きになる人を間違えてますか?【完結編】
その前にこちら先に公開します。
【僕らが見つけた普通の幸せ~不完全な僕たちの未来】
夜の22時に公開予定。
あとは気まぐれに何かアップするかも。
よろしくお願いします。




