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身代わり女装がバレたのに「男同士でもいい」と言われました〜絶対無理なので全力拒絶中  作者: 水波瀬 凪


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【2話目】海斗と遊ぶのはめちゃ楽しくてさ!

夜遅く珠里は、弘人を連れて帰ってきた。


「今日どうだった?」


俺の部屋にひとりで来た珠里に、ありのままを話した。


「そっかぁ、海斗くんに気にいられたならしょうがないね」


面白がってるだろ? 絶対。


「俺のこと、女って思ってるからだろ? 男ってばれたらどうすんだよ、いいのかよばれても」


「ちょ、ちょっと声大きいよ。弘人にもあんた女ってことにしてるんだからね」


「知らねーよ、勝手により戻しやがって。で、どーすんの? ここ出て弘人んとこ戻るの?」


「うーん、また浮気されて追い出されても嫌だし、ここにいようかな」


まだしばらくいさせてねって珠里は悪びれもせずに笑ってる。


「珠里ー」


こんこんと部屋のドアを弘人がノックする。


「あ、今行く」


ドアに向かって珠里は言うと、俺に再び向き直り


「いい? 陸は女よ、さくらちゃんなのよ」


ってことでこれからもよろしく~と勝手に決めて出てった。



女じゃねーよ。


はあ…と大きなため息をつき、布団に倒れこむ。


万年床の四畳半。


こんな散らかりまくりの部屋にいる女なんていたら嫌だろ。


海斗はいいやつだから、女としてじゃなく、男同士としてなら仲良くなってもいいなって思ってた。


海斗にLINE聞かれたんで、一応教えた。


それから3日くらい、海斗と当たり障りのないLINEのやりとりはした。


マメなやつで、おはようとか、おやすみとか、送ってくるんだぜ。


俺なら無理、LINEめんどくさいよ。



弘人が珠里の部屋に入り浸りだったり、珠里が弘人のとこに行ったりで、珠里とはちっとも話せない。


そしてついに珠里が


「弘人の家に戻ろうと思ってるんだ」


と言い出した。


「そか、出てくのか」


「やっぱりわたし、弘人が好きなのよね、それに弘人があんたのこと、変な目で見るの気づいてる?」


「変な目って?」


「あんたのこと、かわいいって、そういう目だよ」


「おえ、なんだそれ、きも」


「だからもう、弘人と会わないようにして欲しいの、ここ出てけば会わないだろうし」


あんなに弘人の浮気にムカついてたくせに、なんだよ。


振り回すだけ振り回して。


それに珠里なんか、家事いっさいやんねーで、ほんといなくなって清々する。


引越しは簡単、もともと珠里の荷物なんて少ないんだ。


「バイバイ、また学校で会おうね」


「ばいばーい」


あっさり、さよなら。


で、約束だったしって思って、海斗と先週の待ち合わせ場所に出かけた。


今日は普通にパーカーにジーンズっていう、男でも女でもどっちでもいいような服装にした。


「さくらちゃん!」


俺に気づくと海斗は満面の笑みでかけよってきた。


その笑顔を消しちゃうのかって思うと心苦しいけど、言わなきゃな。


珠里も、弘人に、バレなければ、男だって言っていいよって言うし。


ほんといまさら勝手だな。


「今日の服装もいいね、似合ってる」


「ありがと」


いつ、言おう。


いきなりは、まずいかな。


「あの、今日来てくれたってことは、その、友達としてOKしてくれたってことでいいのかな」


思い切り照れ臭そうに、海斗が言う。


友達だよ、そんな照れるとこ?


って思ったけど、まあそんなもんだよな、男って。


そんな喜んでるとこ悪いんだけど、と口を開きかけたが


「あのさ、今日はテニスの打ちっぱなしとかどう?」


さくらちゃんテニス好き? なんて聞かれたもんだから、


「あ、うん好き」


言っちゃったじゃんかよ。



そして、打ち明けられないまま、思い切りテニスを楽しんでしまった。


たくさん汗もかいたし、その後はラーメン屋に入って、餃子大盛り食ってしまったし。


こんな「女」なのに、海斗は楽しそうにしてた。


結局、男だって告げることができないまま、なんとそれから1ケ月も海斗とそんな風に遊んでしまってたんだ。


そして海斗がある日ぽつりと言った。


「俺といて、さくらちゃんは楽しい?」


「楽しいよ」


サラリと言えた。


低めの声がコンプレックスってことになってるんだけど、海斗は別に気にしなくていいじゃん、ハスキーボイスもかわいいなんて言ってんだぜ。


それでも一応、ふだんよりは高めの声を意識して話してたんだけど、それも身についてきたんじゃね? って思ってた。


「そか、無理して俺に合わせてくれてるんじゃないかって気になってた」


「無理じゃないよ、なんで?」


「だって、これまでつきあってきた女、俺といてもつまんねーって言ってた。女の子の好きそうな場所とか、あんま詳しくないし、ほんと打ちっぱなしとかバッティングセンターとか、こんなんでいいのかなって」


いいよ、ってゆーか。俺だって楽しんだけど?


マジでラーメン屋とか古本屋で立ち読みとか、この前行った釣りとかさ、面白かった。


女の子は喜ぶか微妙なデートコース? なんだろうけど、俺は男だからな。


「海斗の連れてってくれるとこ、どこも楽しいよ」


そろそろ隠してるのも限界なのかもしれない。


俺は女じゃねーって、言わなきゃ、まずいかもしれない。


けど、いまさらだよな。


言ったらやっぱり、だましてたってことだし、最悪バカにすんなって殴られるかもしれない。


海斗と会えなくなるのも、なんとなくさみしい。


学校の友達はいるけど、こんなふうに校外で遊べるほど親しいやつはいない。


初めて海斗とこんなふうに遊べてて、楽しいんだ。


「本気でさくらちゃんが、楽しいって思ってくれてるんなら、俺たちノリが同じで気が合ってるってことだよな?」


「うん、そうかも」


「さくらちゃんといると、楽なんだよな。素の俺でいられる」


素の俺って言葉にズキンとくる。


俺は素じゃない。


嘘ばっかりだ。


ほんとの自分を隠してる。


やっぱり、正直に言わなきゃ。



海斗と目があった。


そしたら、気合がしゅるしゅるとしぼんだ。


目をそらし、うつむいたまま歩く。


海斗も何も言わない。


ふたりで無言のまま歩いて、俺の家の前までついた。


何回もこうして送ってきてもらってんのに、海斗は一度も寄っていきたいとは言わない。


男なら下心とかあって、そうゆうチャンスをいつでも狙ってるもんじゃねーの?


俺たちはまだ手もつないでなかった。


それはやっぱり、友達だから?


友達の距離感を守ってくれてるだけ?


海斗って奥手なのか、紳士的なのか?


なんてぐだぐだ考えていたそのとき


「俺たちもう1ヶ月だよね」


「あ、うん」


「あのさ、俺、さくらちゃんと…つ、つきあいたい」


来るべきときが、来てしまったのか。


海斗は、女らしい女は好きじゃねーのか?


俺みたいな、女だったら絶対がさつな、女らしさとは程遠いようなのがいいのか?


「好きなんだ」


「…あの」


「さくらちゃんは、俺が嫌い?」


嫌いじゃないけど、つきあうわけにはいかない。


「やっぱ、俺みたいな男はヤダ? 正直言っていいよ」


海斗のまっすぐな目に、心が揺れた。


「友達じゃ、だめかな」


「……それが、答え?」


「だって、無理だ。海斗のことは好きだけど、つきあうなんて無理だと思う。だってさ…」


言わなきゃ。


「無理無理って、やっぱいままでも無理してたんだろ」


「そうじゃないっ」


「じゃあ、なんなんだよ!」


ぐいって体を引き寄せられ、海斗の胸に倒れこんだ。


ぎゅーっと抱きしめられる。


海斗の心臓の音がめちゃくちゃ早く鳴ってた。


「好きなんだ、友達じゃ足りない、俺、こんなこと言ったら引かれるかもしれないけど、もっと触れ合ったりしたいんだ。だから友達じゃいやだ」


俺を女だと思ってるから、そういうことしたいって思われることは、同じ男としてじゅうぶんわかるから、引かない。


けどさ。


「海斗に、秘密にしてたこと、ある」



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