【18話目】海斗がいないときに拓がきた! そして愛菜との関係
翠が実家から持ってきたっていう、かき氷つくるやつ。
それで昼に、ふたりでがりがりやってかき氷を作ってたんだ。
「翠、俺いちごがいい! 練乳ぶっかけて」
「自分でかけて、ひとに頼る癖、やめて」
はい、と練乳を手渡される。
「海斗なら、任せとけって言ってかけてくれるのにな」
翠、冷たいんだよなー。
「海斗はひとをダメにするよね、きっと」
言いながら翠がかき氷にかけてるのって、なにそれ。
「これ、信じられないくらい贅沢で美味しくなるんだ」
その上から練乳かけてる。
その瓶を見てみたら、バラの絵が描いてある、ば、ばーぼん??
「翠、またそんなの飲んで!」
「え、飲んでないよ、かき氷にかけただけ」
実家にあったものを持ってきたっていうけど、そんなんばっかり。
全然悪いと思ってなさそーだし、別に酔っぱらったとかないし、大丈夫なのかなってちょっと興味津々。
「あ、陸はやめておいたほうがいい」
じっと見てたから、飲みたいと思われたかも。
「別に、そんなの大人になってから飲むし」
「そうだよね、それが正解。だけど正解だけで生きてて楽しいのかな」
世の中の正解がすべて自分の正解とは限らないって、翠が言ってるけど、それって自分に都合のいい言い訳じゃね?
でも、かき氷で体は冷えたし、美味しかったし、めんどくさい翠の思考回路なんか理解できなくてもいいかって思ってた。
それからふたりでだらだらテレビ見たり、寝転がったり、暇つぶししてたんだけど、急に拓が来たんだ。
「なんだおまえ、良くそんな平気で顔出せたな」
ちょっときつめに、文句言ってやったつもりだけど、きっと迫力ゼロ。
「さっき、珠里ちゃんの実家行って、この前のこと謝ってきた」
わりと低姿勢な拓。
本気で謝ったのかな。
玄関先でごちゃごちゃしてたら、翠も出てきた。
拓のことがきっかけで、珠里と付き合ったんだし、無関係じゃないよね。
「あ、翠……、海斗は」
拓が翠に聞いてるけど、翠は答えない。
ただ、じっと上から拓を見るような威圧的な感じで、なんか怖い。
見た目は拓のほうが強そうで強面だけど、雰囲気は翠の方が怖い?
「あ、あ、海斗はいま…」
俺が代わりに答えようとしたんだけど
「陸、だまれ」
わわ、翠に止められた。
「ご、ごめん翠、俺…」
拓が口を開く。
「ごめんで許されると思ってんの?」
そうだよ、翠の言う通りだ。口だけならなんとでも言える。
「反省文、謝罪文、5000文字書いて来い、もちろん手書きでな」
「え、5000文字? っていったいどれくらい?」
「甘えるな、自分で考えろ」
そういうと翠は拓を玄関の外に押し出し、ドアを閉めた。
「さっき計算したら、12枚分くらいだったな、めちゃつらそう」
俺が言ったら
「楽だったら反省にならないだろ」
「読むのも大変そうだな」
俺だったら読みたくないなーと言ったら
「俺だって読みたくない、海斗に読ませよう」
だって、拓と仲いいのって海斗だし、って翠が言った。
そうだよな、俺なんか別に拓がいなくなっても困らない。
翠もそれくらいの関係?
「本当に書いてくるかな?」
「さあ、本気で許して欲しかったら、書くんじゃない?」
それよりさ、陸。
と翠がスマホの画面を見せながら言った。
「夏祭りがあるみたいだけど、行ってみようか?」
見ると、歩いて行ける公園で今夜夏祭りがあるって書いてある。
男同士で夏祭りかぁ……。
楽しいのかなって思ってたけど、夏祭りの屋台やたくさんの人が見えてくると、だんだんわくわくしてきた。
夏祭りなんて、いつ行ったきり?
「腹減ったー、なんか買おうよ」
屋台から漂ってくる、食べ物のにおいに、お腹がぐー。
「ほんと陸って食べるの好きだよね」
翠から笑われたけど、好きなものは好きだ。
「アメリカンドック、たこ焼きもいいよなぁ、迷うな」
「陸には、綿菓子が似合いそうだけど」
「翠まで俺のこと女扱いすんのかよ」
そんなの、いらない。
射的とかして遊ぶし、女が好きそうなやつなんか、避けてやる。
そう思って、アメリカンドックとか食べ歩きしてたんだけど
「アクセサリー、彼女にどうだい?」
って、屋台のおじさんが客引きしてんのかな、翠に言ってる。
「あ? 彼女って誰のこと?」
「あれ、まだお友達だったかな、ごめんごめん」
おじさんが激しい勘違いしてるんだ。
まだそうゆうふうに、見えちゃうんだな。
翠は背が高いから?
やっぱりちゃんと男に見えるってこと。
これでも、夏休みにはいってからまた身長は伸びて、珠里がつけてた「線」は超えたんだ。
「珠里って身長何センチだっけ」
翠に聞いたら、さあ、わからないなって言ってた。
えーそういうもの?
彼女の身長って把握しないもの?
まあたぶん、夏休み明けに健康診断みたいなやつがある。
そこではっきりわかる。
人混みから少し離れて、空いてる場所に座って、翠と一緒にたこ焼き食ってたんだけど、そのとき
「あ、陸先輩?」
声をかけられ、見ると愛菜、そして友達かな、女の子とふたり、こっち見てた。
「あ、愛菜も来てたんだ」
愛菜とつきあったわけじゃなかったからな、誘おうかなってちょっと思ったけどやめておいた。
なんだ、来るなら誘っても良かったかな、なんて思ってた。
珠里、そして海斗と愛菜が気まずい感じになってたわけだから、今日のこの翠と俺のふたりだからか、愛菜も違和感なく笑ってる。
愛菜と一緒にいる、友達もかわいいな。
「あ、陸先輩。そして彼女が梨々ちゃん、学校の友達」
「梨々です、どうも」
ちょこっと頭を下げる感じ、緊張してそう。
ふたりとも、浴衣を着ててかわいかったな。
そうだよ、女の子なら夏祭りに浴衣。
俺なんかTシャツにジーンズ。
良く見ると、愛菜と梨々って手をつないでる。
女の子同士って、そういうもん?
せっかく会ったし、みんなで回ろっかって俺、言ったんだけど断られた。
「いえ、ふたりで来たんだし、ふたりで」
梨々から言われて
「あ、そうだよね、梨々ちゃんごめん」
じゃあ陸先輩、またね~って言って愛菜たちが行ってしまった。
「愛菜にふられた気分だな」
明るく翠に言ったつもりだったんだけど
「そうだね、ふられてる、かも」
そのとき、まだ翠の言った言葉の意味が、良く理解できてなかったんだな、俺って。




