【17話目】夏休み、海斗と離れ離れになっちゃった
キャンプが終わってから、美海とはもちろん引き離されたし、お盆に帰るって言ってたはずの海斗まで、一緒に連れて帰られちゃったんだ。
やっぱさ、あんな場面見られたら、そういうやつだって思われてしまうんだろうなって思った。
そんなんじゃないのに、違うっていうほど、まわりの目が引いてくっていうか、冷たい感じになってくんだ。
だからもういいやって思って、謝っておいた。
海斗も疑ってんのかな?
俺の妹に手を出すなんて! って。
そう思ってたけど、親がいる前でいろいろ話せなかったし、そのままバイバイってなっちゃったけど、あとから海斗からLINEがきたんだ。
「美海から全部聞いたから、ごめんな」
ってさ、まあそれだけでもよかったなって思った。
夏休みあえなくなったのはさみしいけど、誤解されてなくてよかった。
美海もちゃんと話してくれて、よかった。
で、美海からインストールさせられたゲームなんだけど、チャットができる仕組みになってて、そこで美海から「ごめんなさい」と謝ってきたんだ。
毎日ログインしてって言われてたけど、やる気なし。
それに愛菜が泊まりにくるって言ってたけど、それも断ろうかなって気持ちが大きくなってる。
本当に好きなら、めいっぱい自由だしやりたい放題な毎日だぜ、みたいになるんじゃないの?
めんどくさいんだよ~。
「陸、ちょっといいかな」
翠がドアノックして顔を出した。
「翠、単体なのが珍しいな」
珠里はくっついてないのか。
「珠里ね、実家に帰った。成績が悪すぎて親に連絡が行ったみたい」
「うえ、そこも親が出てきてんだ、そんなときだけ親面してんの」
ってことは、しばらく翠と二人暮らし?
まさか翠まで帰らないよね?
「親なんてそんなもんだろ」
翠の親も、翠のことはかなり無関心なんだってさ。
「そっか、で、なんか用事あったんだろ?」
「ああそう、あの、美海のことなんだけどね、あの子、俺にも同じようなことしてきたことあるんだ」
「同じようなことって、触ってきたり?」
「うん、何とか唇は死守したけどね」
思い出したのか、翠は嫌そうな顔してる。
「本当に女の子がダメなのか、試さないとわからないでしょって言われて、無理やり迫られてしまったんだ」
「そういう子、なんだ?」
知らなくて、びっくりしたけど、知ってたら警戒したかな?
「海斗に言えば良かったんだけど、言ってないんだ、そのこと」
そしたら海斗も、あんなふうに寝たふり? してなかったかもねって翠が言うんだ。
そしたら今回の事態も回避できたかも? って。
そういってしまうと、海斗のせいみたいになっちゃうじゃんか。
そうじゃないよな?
「海斗、なんで寝たふりしてたんだろ? いつも陸のそばにいるのに」
翠も気にしてるよね?
「愛菜、うちに呼んだときあったじゃん? そのときから、気まずくなってる」
「それ、もうずいぶん前だよね」
え、何日前かなって翠が日にち数えてる。
「決定的な何か、てのがあったんじゃなくってさ、何となく変だなって思うことがちょこちょこあった感じ」
「海斗の嫉妬か……こじらせすぎ」
嫉妬をこじらせるって、どういうこと?
翠のいうこと、わかるようなわからないような、いつも少し理解すんの難しくて。
「ごめん翠、もう少しわかりやすく教えて」
「ああ、えっとね、まあ海斗のことはいまはいい」
「え、どういうこと? さらにわかんないんだけど」
翠はなぜか急に立ち上がって部屋を出てった。
「え、あれ? 翠…」
あまりに理解力がなさすぎて、呆れられたのか?
って思ってたら、俺のジャスミンティともう一つは……
「それ! ハイボールって酒じゃん!!」
翠はそんなものを飲むのっていうか、良く買えたな。
「いや、これノンアルだから」
ほら、良くみて、ノンアルって書いてあるよね?
って見せてくれるんだけど、どこに?
「ここ、ほら、書いてある、だろ? こ、こ、に」
「え、えと、ごめん、見えない」
「そういうとこだよね、陸って」
「えーどういうとこ?」
もう、翠めんどくさいな。
回りくどいっていうか、ストレートに言ってくれないかな。
「陸はなんでいつも、ジャスミンティなの?」
話変えやがったな。
「俺のは、これは、姉ちゃんが好きだったやつ、っていうか、姉ちゃんから聞いた話で……」
長々と説明するハメになった。
何でと聞かれて、これでって答えられるほど、簡単な理由じゃねーんだって。
「まあいいや、で、陸はどうしたいの? 海斗とこれから」
まあいいやって…興味ないなら、聞かないで欲しい。
「あー海斗と? そりゃ仲良くしていたい」
「だったらやることは簡単だね、仲直りすればいい」
いともあっさり、すればいいっていうけどな、それができなくてこうなってんじゃねって思うんだけどな。
「どうやって、この状況なのに?」
聞いたら翠が、飲んでた『ノンアル』のハイボールを、俺に差し出してきて
「これ、飲んで」
「え、え、いや俺はアルコールはちょっと…」
「ノンアルだって言ったよね?」
「いや、だって、そこに」
これはお酒ですって書いてある。
「飲むのも飲まないのも、陸の自由なんだよ」
「うん、だから飲まない」
「そういうことだって」
「えええ、なおさらわけわかんねーよ!」
「仲直りしたければすればいいし、したくなければ、しなきゃいい」
陸はちゃんと自分で選べる力持ってるからって言われて、翠は部屋を出てったんだけど、本当にわかりにくい。
しばらくひとりになって、考えてた。
選べる力?
翠の頭の中ってどうなってんだろ?
迷路みたい。




