【16話目】夜になって花火をした、非日常の夜がヤバかった
みんながいるせいもあるのかな。
いつもみたいに、部屋に海斗とふたりの時間があれば、ちょっとくらいわだかまるようなことがあっても、何となく元通りになるんだ。
ちょっとだけ、心の距離を感じたまま、夜はみんなで花火をして遊んだんだけど、やっぱり海斗はどこかさみしそう。
「ね、陸くん、線香花火しよう」
美海ちゃんが線香花火を手渡してきた。
「あ、うん、いいよ」
あれ、さっきはそんなにすぐ懐かないって言ったけど、案外、距離近くね?
線香花火に火をつけて、目の前でぱちぱちと火花が飛び散るのを眺める。
「線香花火って、最後の一瞬、ぽとって落ちるでしょ? これ、人間の一生を表してるんだって、本に書いてあった」
だからなんか、切なくて寂しいのね、だって。
「そんなこと知ってるの、すごいね」
「うん、最後ギリギリまで、耐えるんだよ、丸い赤いの」
そんな風に語ってる美海の横顔は、しっかり女の子だなって感じた。
こんなこと、俺だったら気づきもしない。
線香花火なんてさ、地味でつまんねーってくらいしか、思ったことない。
手も、線香の匂いになるしな。
こういうとこ、海斗が見たらまたなんか言うのかも。
って思って海斗のほうを見た。
あれ、さっきまでそこにいたのに、どこ行った?
花火やってんの、俺と美海と美海の両親だけだった。
海斗も珠里も翠もいなーい。
なんだよみんな、自由行動?
花火が終わってログハウスに戻った。
海斗は、寝てた。
なんだ、疲れちゃったのかな、それとも俺が遊んでやれなくて、つまんなかったのかもって思って、ごめん。
珠里も翠も、いつもみたいにイヤホンで音楽、たぶん音楽だよな、聴いてる。
そんなんばっかり、ここに来てまで、いつもと変わんないことやって、楽しいのかなって思っちゃう。
キャンプに来てる意味ねーって思った。
もっとみんな楽しんでわいわいやるのかって思ってたから、なんとなく期待外れ。
そんなふうだから、必然的に美海としゃべってしまうじゃん。
「陸くんと話すの、楽しいよ」
ほら、だんだん本気で懐いてきたぞ?
寝てていいのか、海斗。
「トランプ持ってきたから、やろ」
ババ抜き、二人でやっても面白くないね。
それが終わったら、スマホゲームさせられた。
「ね、陸くんもこれインストールしてよ」
「恋庭」ってやつ、させられた。
これね、ゲームでつきあうやつなんだよ。
「え、そんなゲーム?」
「ちゃんと毎日ログインしてね」
強力して庭造りするらしいけど、えっとなんかめんどくさそう。
無理に連れてこられたって言ってた美海が、もしかして一番楽しんでるんじゃないかって思った。
俺が優しくしてやってるからだろ、良かったな。
美海の両親を見ると、そこもふたりでお酒なんかのんびり飲んでて、美海のこと全然かまってねーんだよな。
非日常を大人の楽しみで満喫してるんだな。
お酒っておいしい?
ログハウスにはシャワーブースがついてて、シャワーもできる。
その後、交代でみんなシャワーして、俺は美海がシャワーで離れたすきに、海斗のところに行ってみた。
「海斗、大丈夫なのか」
まだ寝てる海斗をつんつんしてみる。
「大丈夫って、なんだよ、別にただ眠いだけだし」
相手してくんねー、つまんねー。
ってか、本当に眠いの?
ふてくされてるだけじゃね?
意味わかんね。
だからもう、ロフトの上にあがって、寝転がってスマホゲームしてた。
もう夜も遅いし、寝たっていい時間。
うとうとしてたら、隣にもぞもぞ、気配を感じて薄目を開けた。
「え、だれ?」
「や、見つかっちゃうから静かにして」
なんで! 美海が!
「なにしてんの、ここ俺の寝るとこ、ここで寝たいの?」
「違うの、まだ一緒にいたいの」
最近の中学生は、積極的だな、びっくり。
海斗いいのか、これ完全に懐かれたぞ。
親はなにしてんだ。
これ、監督不行き届き? だっけ、それじゃん。
一緒に来てる意味なくね?
「ちょっ…そんなとこ触ったら、わ、ダメだってば」
「わたしのも触っていいよ」
「いや、そういうことじゃなくて」
思ってたより、声が出てて、こっそりなんてできるわけなかった。
「おい、なにしてる?」
海斗のお父さんに、見つかってしまった。
こういう場合ってさ、美海から来たんだけど、やっぱり怒られるのって俺のほうだよな。
こんなときばっか、男って言われるのって、まじで腑に落ちない。




