【15話目】夏休み前半はキャンプ、釣りとかバーベキューとか
海斗の両親が、ログハウスみたいなのを借りてくれて、車も出してくれて、みんなでキャンプ場に行くことになった。
山なんだけど、近くにめちゃくちゃきれいな川があって、釣りもできるんだって。
テント張るやつより、楽だって海斗のお母さんの希望みたい。
木でできた小屋?
ロフトベッドみたいになってて、
「俺、絶対上がいい!」
と、わがままを言った。
愛菜は、このメンバーに混ざりたくないみたいで来なかったから、まあ、いつもの4人と海斗の両親、そして妹が来てた。
海斗の妹って、中2なんだってさ。
愛菜も小さいけど、海斗の妹、美海も小さかった。
海斗にいうと怒られそうだから、こっそり翠に言ってみた。
「海斗の妹、かわいいな、美海ちゃん」
翠は、チラリと美海を見ると
「ああ、見た目だけはね」
「翠は知ってた? 会ったことあんの?」
「あるよ、あの子はちょっと苦手」
人見知りしてんのかな?
って思ってたんだ。
ずっと母親のそばを離れないから。
男ばっかの中に連れてこられたら、それはやっぱり警戒するよね?
珠里は女の子だけど、あんまり面倒見良さげじゃねーし、なんなら愛菜に敵意向けてたみたいにマウント取りそう。
でもな、バーベキューするっていうとき、美海はなぜか俺の隣にずっとくっついてたんだ。
あ、もしか男と思われてない?
や、ちゃんと自己紹介したもんな、陸って名前の女の子は、いる?
あんま聞いたことない。
海斗の妹だし、もちろん変なことはするつもりない、予定もないから、安心してていいけどな。
ここ、至れり尽くせりのキャンプ場で、なんでもレンタルできて手ぶらで来られるってところらしく、キャンプ初心者でも困らないんだよって、海斗のお父さんが教えてくれた。
海斗のお父さんも、海斗に似ててカッコいいな。
大人の男。
うるさくなさそう、物分かり良さそう。
だってそうだろ?
息子があんな、ルームシェアするみたいなところに、行かせてくれるんだ。
普通の親だと、そんなとこダメって言いそうじゃん?
そしたら翠の親もそんな感じなのかな?
翠のことは、まだあんまり知らない。
自分のことも語らないけど、あんまり人のことも興味なさそうで聞いてこない。
黒セカオワと珠里だけ、興味あんのかな?
「あの……」
ふいに美海が、俺の服の裾、小さく引っ張って、なんかいいたそうにこっち見てた。
「え、どしたの?」
どうやら翠のことみたいだ。
「あのひと、お兄ちゃんのこと、好きとか言ってたのに、女の子といるのって、ヤバくない?」
「ああ、そのこと」
美海も知ってる話なんだな。
「女の子嫌いなんだよねって、海斗がいいって言ってたくせにひどい!」
「あ、そういうこと?」
なんとなくわかった。
「わたしが嫌いなら嫌いって言われたほうが、良かったな。ずるいよね、やりかた。男が好きなんて言われたら、一生無理じゃん」
こんなとき、なんて言ってあげたらいいかわからなくて、つい、美海の頭をポンポンしてしまった。
「え」
美海、びっくりしたのか、少し後ろに身を引いた。
「あ、ごめん、つい」
これって、手を出したことになる?
「おい、なにしてる?」
後ろからポンっと肩をたたかれ、振り向くと海斗。
「あわ、海斗、いや別になにも」
「お兄ちゃん違う、陸くんは優しくしてくれただけだよ」
美海ちゃんがフォローしてくれた。
「気をつけないと美海、男はな、優しくするくらい簡単にできるんだよ」
は? こんなときだけ、俺のこと男扱いすんのかよ、海斗は。
「はいはい、すみませんでした!」
なんかムカつく、なんか気に食わない!
背を向けて、2人から離れた。
やっぱり、美海は海斗にとって妹なんだし、小さくて女の子でかわいい。
並んだらやっぱり、俺なんか男で、守ってやらなきゃなのは美海。
川のところで、石を投げて遊んでた。
というか、石に八つ当たり。
「陸」
海斗の声。
振り向かず、またひとつ石を拾って投げた。
「ごめんなさっき、美海まで陸になつくのかって思ったら、つい」
「は? 別にいいじゃん」
くるりと振り向いたら、海斗がなんか泣きそうな顔してたから戸惑った。
「なんでそんな悲しそうなんだよ」
「いや、陸にきついこと言っちゃったかなって思って」
「ってかさ、海斗って疑いすぎ! まだなんもなってないのに、美海と会ったばっかでそんなすぐ懐くとか、あるわけねーじゃん」
「だって陸、こないだから中学生女子に、人気あって」
「それも、女子みんながそうってわけでもない、愛菜だけだろ」
こんなところで、ふたりでケンカしてたら、みんなから変な風に誤解されそうで、そっちのほうがヤバいかなって思った。
「戻ろ、あっち」
海斗の横を抜けて、先に立って歩いた。
後ろから海斗がついてくる気配感じる。
海斗って俺のことになると、まえから変だけど、この暑さでさらに脳天イカれちゃったんじゃね?
「俺さ、海斗」
歩きながら後ろにいる海斗に聞こえてるか謎だけど、話してみた。
「彼女できたからって、海斗のこと粗末にするわけじゃねーし、ずっと友達だし、料理だって作ってもらわないとダメだからな」
だからそんなに、干渉したり、嫉妬したり、うるさくするなって言いたかった。
前から言ってるように、つきあうのは難しいけど、近くにいることならできるって思ってる。
むしろ、いてくれないとさみしいじゃん。
そういう、心配より信頼があればいいのに。
女の子とつきあうことは、海斗への裏切りとかそんなんじゃないのに。
わかってくれないのかな。




