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この異世界でかりそめの君と〜最悪の悪魔になった幼馴染を元に戻すため、僕は彼女と世界を壊す旅に出る〜  作者: 鳴尾リョウ


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第4話 そして号砲が鳴る

 家から図書館までは歩いて三十分以上かかる。図書館は国の中で最も大きい街「シュタム」の中にある。木の国は他の国に比べて、人口が少なく、民家も点在しており、街と言えるほどの場所はここしかない。僕の家もお隣さんまで数百メートルはある。その代わりに、自然が豊かなこの国は、同じく自然界のものである精霊との結びつきが強く、多くの精霊使いを輩出することとなった。


 シュタムは街道も整備されている。僕の家の前の道は、ぼこぼこと石が埋まっていたり、草が生えっぱなしで、歩きにくいことこの上ない。しかし、ここの道は、普段から荷車や馬車が行き交っているのだろう。土は踏み固められ、きれいにならされている。実際、何台か荷物を積んだ大きな馬車とすれ違った。他の国との交易はこの街メインで行われている。


 町民たちが住んでいる家も、他の国の文化を取り入れた石造りのものが多く見られ、商店では見たこともないような食材が並んでいる。


「これが街。これがシュタム」


 僕はここに来るといつも心が躍る。自分達が生活しているのんびりした村も好きだが、人の活気がある街というのは、わくわくするものだ。自分が知らないものを見つけたりすると、ついつい見入ってしまう。


 初めて見た果物を買い食いして、子供たちが遊んでいるおもちゃを興味深く観察したところで、本来の目的を思い出した。そうだ、図書館だった。


 大通りをまっすぐ行った突き当たりには、国王がいる城がある。城と言うと強固な警備がされているイメージだが、この城はそうではなかった。もちろん、城壁や門番などの最低限の警備はされているが、長らく戦争とは無縁のこの国では、簡単な審査があるだけで国民なら誰でも入ることが出来る。目的の図書館は城壁の内側にあるので僕は門番に声をかけた。


「すみません、図書館に入りたいんですが」


 門の手前の椅子に座っている老人は、目をつむっている。寝てるのか。「すみません」ともう一度声をかけたところで、


「起きてるよ」


 と食い気味に返事をした。絶対寝てたけど。


「ラックか。図書館に行くのか」


「はい。調べ物があって」


「ふうん。今日はシズクはどうした?」老人はからかうように言う。


「……いつも一緒にいるわけじゃありませんよ」


 どうもみんな勘違いをしている。どこに行っても、僕とシズクがワンセットであるかのように言われてしまう。確かに昔から、二人で出かけることは多かったけれども。もう僕らも十六歳だ。自分の時間を持ちたい時もある。


「わかったわかった。入っていいぞ」そう言うと老人は門を開けてくれた。


「ありがとうございます」と礼を言い、僕は図書館の方に向かった。


 館内に入り、受付で歴史管理官についての本はあるかと尋ねると、年配の司書が本の在りかを教えてくれた。左右に規則正しく並ぶ本棚の間を抜けて奥に進み、行き止まり付近にある、歴史書が収められている本棚に着く。


 棚には隙間なく書物が収められていた。『木の国建国記』『精霊戦争』『悪魔封印』と書かれている比較的古いものや、『初歩から学ぶ歴史管理官』という題名の最近刷られたであろう、歴史に関連するものも一緒に置かれている。僕は興味を引かれた数冊を持って、閲覧場所で読むことにした。


 始めに歴史管理官について書かれた本を読んでみた。


『歴史管理官とは、私たちが暮らしている国の歴史を記述した書物を管理する仕事です。貴重な歴史書の原本は劣化や破損を防ぐ目的で、厳重に管理されています。それらについての研究や解読などを行うのも歴史管理官の仕事です。』


 と書いてある。なるほど、僕らが読める歴史書は原本のコピーということか。考えてみたら、貴重な歴史書が誰でも手に取れる棚にあるはずない。歴史書の解読というのも面白そうだ。何か未発見の事実が明らかになると思うとわくわくする。


 先を読み進めると、歴史管理官になる方法が書いてあった。


『歴史管理官になるには筆記試験と論文の提出が必要となります。筆記試験では歴史についての理解力が問われます。また論文では、現在明らかになっている歴史から一歩踏み込んだ、新たな考察などが必要となります』


 思わず、ううんと声が出た。てっきり試験に合格すればなれるのだと考えていたけど、論文も必要なのか。文章を書くのって苦手なんだよなあ。


 ある程度調べたかったことがわかったので、他の本も読んでみることにした。『悪魔封印』と書かれた本を開いてみる。パラパラとめくっていくと、最後のページにはこう書かれていた。


『五つの国の精霊使いが悪魔を打ち倒す。しかし、彼らは悪魔を完全に消滅させることは出来なかった。悪魔は命乞いをしたが、五人は最後の力を振り絞り、悪魔を結晶の姿に変えたのだ。そして、その結晶を大樹の中に封印し結界を張り、何人も立ち入れないようにした。今でも五人は悪魔を見張っている。宝玉の姿となり、今この時も』


 宝玉に姿を変えたっていうのは創作だろうけど、それ以外はおおむね聞いたことがある内容だった。それにしても、五人の精霊使いが束になっても完全に倒せないって、どんな怪物だよ。確か悪魔は不思議な力を使うとか聞いたことがあるような。なんにせよ、大昔の英雄たちには感謝しきれない。ありがとう。


 そろそろ集中力が切れてきたことだし、家に帰るとしよう。読み終わった本を元の棚に戻し、図書館を出る。もう昼食の時間は過ぎた頃だ。さっき果物を食べたのに、本に集中したせいかおなかはぺこぺこだった。家まで歩いて帰ったら、おなかが悲鳴を上げそうだったので、店でハムが入ったサンドイッチを買い、広場のベンチで食べることにした。


 広場はたくさんの屋台があり、様々な食べ物が売っている。広場中央には噴水があり、その周りの数脚のベンチには、家族連れや仲睦まじい男女が座って、食事をとったりおしゃべりをしたりしている。そんな様子を見て、シズクも誘ったら良かったかなと少し思った。


 サンドイッチを食べながら、僕はさっき本に出てきた大樹について考えていた。


 大樹。木の国の象徴であり、悪魔から国を守っているご神木でもある。この国が出来る以前から存在すると言われており、樹齢は数千から数万年だとか。城の奥にある森を抜け、しばらく歩くと、まるで巨人が鎮座するようにそこに存在しているのだ。この国に住む者であったら誰もが一度は見たことがあり、その姿に畏敬の念を抱く。僕は何か心惹かれるものがあり、しばしば訪れているのだが、毎度違った雰囲気を感じるから不思議だ。まるで息をしているような。


 とはいえ、本に書かれているように封印が施されているので、近くに立ち入ることは禁じられている。僕もいつも遠くから眺めているだけだ。こっそり調べてみようかな、なんて。


 さて、軽く小腹も満たしたことだし、家に帰りますか。


 その時、城の方から爆発が聞こえた。


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